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【弁護士監修】贈与税に時効がある?知らないと損をする贈与税

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年03月11日
贈与税に時効がある?知らないと損をする贈与税のアイキャッチ

1. 贈与税とはどんな税なのか

1.-1 贈与税とは
贈与税、と聞いても、あまりよくわからない、という方も多いと思います。そもそも、贈与税とは、どのような税でしょうか。
贈与税とは、名前からもある程度想像の付く通り、贈られた金銭的授受に対して掛かる税金です。贈与税は、例えばAさんがBさんから財産を贈与された場合に、Aさんが受け取った財産に応じて、Aさんに課税される税金です。
似た様なシステムとして相続税があります。世間では混同されがちな両者ですが、贈与税は主に生前、相続税は死後に関係する税法です。
そして贈与とは、無償で相手に財産を贈ることです。法的には贈与とは、贈与する側の贈る意思表示と、それを受諾する受取側の契約、ということになります。「あげます」「もらいます」という意思の合意が必要になります。

1.-2 贈与税は110万を超えると発生する
私達の日常生活でも起こりえる贈与、といえるものは、子供への仕送りや、友人の結婚式のお祝いなどがあります。直接お金をもらっているから、やっぱり贈与税の対象なのかな、と思われるかもしれません。でも大丈夫です。贈与税には基礎控除額というものが設定されています。1年間に110万円以内の贈与であれば、税金はかかりません。
子供への仕送りも、友人の結婚式で包むお祝いも、滅多なことでは110万円を超える事はありませんね。それに加え、社会的に一般的なお祝いである場合は、贈与税の対象にはなりません。仕送りに関しても、教育費や生活費という内容、範囲であれば、そもそも贈与税の対象にはなりませんので、ご安心ください。
ただし、先ほど年間110万円以内の贈与であれば税金がかからない、と述べましたが、これは一人が受け取る贈与額の合計、という意味です。
例えば、あなたがAさんから100万円、Bさんから50万円を受け取った場合は、計150万円の贈与を受けたことになるので、贈与税が発生します。
誰にいくらもらったか、という点ではなく、自分が一年間に、合計いくらの贈与を受けたか、が焦点となるのです。
正しい贈与と、贈与税を把握するためにも、贈与を検討する際は、前もって弁護士や税務署などに相談をしましょう。

1.-3 贈与税の税率は?
贈与税は、平成27年に改正しており、贈与された金額から基礎控除額(110万円)を引いた課税価格と、もらった相手によって変動します。
贈与税の速算表

基礎控除後の課税価格 20歳以上の者が

直系尊属から贈与を受けた場合

左記以外の場合
税率 控除額 税率 控除額
200万円以下 10% 10%
300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 20% 30万円 30% 65万円
1,000万円以下 30% 90万円 40% 125万円
1,500万円以下 40% 190万円 45% 175万円
3,000万円以下 45% 265万円 50% 250万円
4,500万円以下 50% 415万円 55% 400万円
4,500万円超 55% 640万円

2. 贈与税には時効がある?

税金と時効、という組み合わせは、あまり聞かないと思いますが、贈与税には時効があります。贈与税の時効とは、贈与税が発生するような贈与が行われたにもかかわらず、無作為、或いは故意にその事実を申告しなかった場合に、一定期間経過後に、贈与税を支払う義務が無効化されることを指します。犯罪における時効と、本質的には何ら変わり有りません。
ただし、無作為による申告漏れは、申告期限から6年経過、故意による悪質な申告漏れは、申告期限から6年経過+1年=7年間経たなければ時効にはなりません。
どの様に一定期間経てばいいのかと言うと、税務署に捜査、指摘されず、さらに未申告の贈与税を請求されずに、上記の期間が過ぎれば良いのです。
つまり、贈与税が発生したからと言って、すぐに払うのではなく、時効を待つという選択肢も、実は存在しています。
ある事情で1年間に1,000万円を贈与された場合を考えてみます。支払う贈与税は、1,000万円-110万円(基礎控除)=890万円に対して掛かります。仮に890万円×20%=178万円が贈与税だと仮定した場合、贈与を受けた日から、6~7年間税務署から指摘がなければ、1,000万円が、まるまる手元に使えるお金として入ったことになります。逆に、正しく申告してしまえば、1,0000万円から贈与税178万円を支払った、残り822万円が手元に残ります。
国民には納税の義務があるので、申告した方が良いのか・悪いのか、で言えば、明らかに前者でしょう。故意に、というのは問題外ですが、贈与税が発生すること自体を知らない、忘れてしまっているケースもあり得ます。ただし、贈与の事実が発覚した場合に、それが無作為であれ、作為的であれ、どちらの場合も、本来の税金だけでなく、さらに追加の税金を納めることになります。特に悪質と判断されると、その税率が高くなりますのでその危険を冒す必要があるかを、もう一度考えなければいけないでしょう。

3. 贈与税の時効は遺産相続でバレる

贈与税は、時効を迎えれば支払わなくても良くなるとお伝えしました。
贈与という名目は、大変把握しづらいものです。特に贈与の内容や流れは把握しづらいため、贈与税の申告漏れは発生件数が大変多いと言われています。
そのため、よほどの大金、目に付くような贈与でなければ、ほぼ税務署から指摘されることはないようです。
しかし、中には一発で贈与税の申告漏れが、ばれてしまうケースもあります。それは相続時です。なぜなら相続時は、あらゆることを税務署が検査、調査しますので、申告漏れで、なおかつ、時効を迎えていない贈与税を請求される確率は非常に高くなります。
相続対策としても、そうならないために、計画的な贈与、財産の委譲を行うことをおすすめします。短絡的に1,000万円を贈与し、税金を逃れたいがために時効を狙うのではなく、計画的に、毎年100万円ずつ贈与をすれば何の問題もありません。
あまりに基礎控除額ぎりぎりで定期的に行うと、税逃れを指摘される場合もあります。その場合は、毎年金額をばらつきさせて、ある年は多少基礎控除を超えて贈与税を納めたりすると、滞りなく贈与できる傾向があります。

4.時効を過ぎていても税金が取られてしまう場合もある

なぜ?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、贈与税の時効を過ぎていても、そもそも「贈与」と認められない場合があります。
贈与とは、本来贈与する側の贈る意思表示と、それを受諾する受取側の契約です。「あげます」「もらいます」という意思の合意が必要なのです。
そのため、孫のために孫の口座名義で預金している(名義預金)場合や、父の退職金を母の口座で貯金しているケースなど、夫婦間の贈与などは、贈与として認められないケースもあります。
贈与として認められないケースは大きく以下の3つに分類されます。

両者に意思の合意が無い場合

前に挙げた「孫のための名義預金」など、もらっているという認識がない場合、贈与として認められず、ただ預けているだけになります。
贈与として確実に認められるには、贈与契約書などを用意していくと良いでしょう。

管理・支配が移転していない場合

両者が合意していたとしても、孫の通帳を祖父母が保管・管理している場合などは、その財産が受け取った人に移っていない、と判断され贈与して認められません。

夫婦間での贈与の場合

夫婦での資金移動については、贈与として認められないことが多くあります。
例えば、妻が生活費などを夫から受け取り、やり繰りして余ったお金を妻の口座に貯金しているというケースは、ごく一般的なことだと思います。
このお金は、妻の管理している口座での預金であり、両者の合意を満たしています。しかし、その原資は夫であるため、夫が亡くなった際には、妻の口座のお金も、夫の相続財産になってしまう可能性が高いのです。

5.贈与税を正しく抑えて贈与する方法

時効を待つ、という危険を冒さず、また贈与ではない、と後から指摘されないように、贈与税を正しく抑えて贈与する方法を活用しましょう。

非課税になるような控除を使う

贈与には、いくつかの控除や非課税となる特例があります。それをうまく活用することが、節税で最も重要です。

◎基礎控除
暦年贈与における110万円の控除のことです。
110万円を超えた部分のみが課税金額として計算されます。

◎配偶者控除
配偶者控除は2000万円までが非課税となります。贈与するものは不動産に限られます。、その家や土地に住み続けることや、婚姻期間20年を越えていることなど、いくつかの条件があります。一生に一度のみ使えます。

◎教育資金にかかわる特例
30歳未満の子や孫に、教育資金として贈与する場合は、1500万円までが非課税となります。教育資金は学校に支払うべきお金のことで、塾や習い事は対象外となります。

◎結婚や子育て資金の贈与にかかわる特例
20歳から49歳までの子や孫に、結婚や子育ての資金として贈与した場合、結婚のみなら300万円、結婚及び子育て資金なら1000万円まで非課税となります。(平成31年3月31日まで)

◎住宅取得資金贈与の特例
住宅資金を子や孫に贈与する場合は、最大3000万円までの贈与が非課税となります。こちらもいくつかの条件があります。

税金の種類を使い分ける

贈与税の非課税分を使ったうえで、それぞれの税金の控除や、税率を有効活用すれば。更なる節税効果が期待できます。
◎贈与と相続の使い分け
まず、考えられるのが贈与と相続の使い分けです。贈与税においては一人に対し毎年110万円、あるいは贈与者が死亡するまでに2500万円が、相続税においては、遺産全体に対し3000万円+法定相続人の数×600万円が基礎控除となります。
それぞれの税額表を見て、いくらの財産を、どの税金の対象とするのか考えましょう。言うまでもなく贈与は毎年少しずつ行った方が節税になります。

◎相続時精算課税のタイミング
相続時精算課税にできるタイミングは、1回だけです。しかも2500万円までの控除がありますから、その控除額までは相続時精算課税での贈与が良いでしょう。

6. 必ず期限内に申告・納税しましょう。わからない時は弁護士に相談を

贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までにしなければなりません。この期限までに申告と納税をしなければ、ペナルティが課されます。
申告期限を過ぎて贈与税の申告を無作為、または故意にしなかった場合には、加算税が課されます。

申告自体を忘れていた場合(無申告課税)

申告期限後に自主的に、または税務調査の通知を受け取った後、さらに税務調査によって贈与税の申告をした場合は、「無申告加算税」が課されます。
無申告加算税の額=本来納めるべき贈与税の金額×無申告加算税の税率
この税率は、贈与額や、その申告のタイミングによりますが、5%~20%が課されます。

申告はしていたが申告額が過少だった場合(過少申告加算税)

期限までに贈与税の申告をしたけれども、申告額が少なかった場合には「過少申告加算税」が課されます。
過少申告加算税の税率も、金額や税務調査通知書を受け取った後、または税務調査後などのタイミングによりますが、0~15%が課されます。
0%とは、税務調査または税務調査の事前通知を受けるまでに、自主的に申告した場合です。そのため、贈与税の申告の誤りに気づいたときは、速やかに修正申告をしましょう。

意図的に申告しなかった場合(重加算税)

課税を免れようとして意図的に申告しなかった場合は、最も重いペナルティとして重加算税が課されます。
重加算税は、無申告の場合と過少申告の場合では税率が異なり、それぞれ無申告加算税は40%、過少申告加算税は35%が課されるという極めて重いものです。また、申告期限が平成29年以降で、過去5年の間に無申告加算税または重加算税を課された場合は、さらにそれぞれの税率が10%加算されます。

このように、贈与税も申告期限内に申告・納税をしないと、後々に大きなしっぺ返しが来る可能性があります。贈与と相続は密接に関わってくる可能性が高いので、計画的に行う必要があります。また相続税や贈与税では、思いもかけず多額な請求が来ることもあります。困ったな、どうしたらいいのかな、と思った時にはまず弁護士に相談してください。あなたにとって最適の相続税対策を一緒に考えてくれるでしょう。

7.相続に関する困りごとは弁護士に相談を

相続がいつ発生するかは、誰にもわかりません。贈与を意図的に申告しなかったことがバレた場合には、ペナルティが大きくなることを考えてみましょう。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、相続で起こりやすいトラブルを未然に防いでくれます。

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相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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