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【弁護士監修】可愛い孫へ1,500万円を無税で贈与できる!「教育資金贈与制度」のメリット・デメリットを解説

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年04月12日
可愛い孫へ1,500万円を無税で贈与できる!「教育資金贈与制度」のメリット・デメリットを解説のアイキャッチ

孫が高校や大学に通うなどの目的のために「教育資金贈与制度」が2013年4月から開設されました。孫1人につき最大1,500万円まで贈与税が非課税になるという制度です。可愛い孫や子のために教育資金を援助したいと願う親御様、祖父母様、今回は「教育資金贈与制度」を利用する場合のメリットとデメリットを混じえながら紹介させていただきます。

教育資金贈与制度って?

文部科学省の「学生納付調査」(平成25年から26年度)によると、大学1年生の入学金と1年分の授業料の合計額は、国公立大学の平均の年間の学費は約80万から90万ほど、私立大学では110万から140万、私立大学の医歯学部では460万となっています。4年間通い続けるということになると教育費が膨大になります。

例えば、おじいちゃんが資産家だったとします。おじいちゃんは孫の学費を補助してあげようとした場合を考えてみます。贈与税は2タイプあり、通常の贈与税の場合は110万を超えると贈与税が課税されることになります。可愛い孫の学費が4年間で500万近くかかるとするとします。この金額を一括で贈与してしまうと110万を超える部分の額には、贈与税が課税されてしまいます。

そこで教育資金贈与制度を活用すれば、1500万円まで贈与しても非課税になります。三菱UFJ銀行の場合でみていきましょう。

東京三菱UFJ銀行 教育資金贈与信託「まごよろこぶ」

出典:http://www.tr.mufg.jp/mago/mago.html#mechanism

教育資金贈与制度の条件・必要なもの

教育資金贈与制度の条件

 

  • 祖父母または親(直系尊属)からのものであること
  • 期間は平成31年(2019年)3月31日までと期限があること
  • 銀行などを通じた信託会社との教育資金管理契約という信託を祖父母などが銀行と結び、孫などを受益者とすること。

→おじいちゃんおばあちゃん、孫などはそれぞれ普通預金口座を作る必要があります。おじいちゃんおばあちゃんは銀行へお金を預けます。銀行が信託会社にそのお金を運用してもらい、得た利益は祖父母や孫などにわたります。孫などは教育資金として必要な額を銀行口座から引き出せます。

・銀行口座開設時に必要なもの

祖父母などの必要書類

資金、通帳、印鑑、本人確認書類(個人番号カード、運転免許証、健康保険証など)

孫などの必要書類

印鑑、通帳、戸籍謄本、本人確認書類、個人番号確認書類

・孫などの年齢は30歳未満であること。

・例えば、祖父母が直接銀行へ行けない場合などは、祖父母から書面での贈与を金銭で受けます。その金銭を親が、孫などのために銀行へ預金し、銀行経由で信託会社との教育資金管理契約結ぶということもできます。

孫などが30歳になったら残高は贈与税が課税?

祖父母などから教育資金贈与制度を利用したとします。

A.孫が30歳になったとき

B.教育資金管理契約を結び信託した資金、つまり孫などの口座にはいっている預金が0円となったとき

これらのA・Bの場合をみてみましょう。孫などは、もしかしたら教育費以外の名目で口座から引き落としをすることもあるでしょう。そのうち残高が0になったとします。契約金額(預金した額)のうち、引き落としをした額から実際に教育資金として使われたもの(領収証で判断)を控除した残額があったとします。この残額とは、まさに孫などが旅行や遊びなどで教育費用だと認められること以外で使ってしまった金額だと考えます。残額については、単なる祖父母からの贈与金額として、贈与税が課税されることになります。

おじいちゃんおばあちゃんが銀行との信託契約で孫などのために預金をしてくれていたとしても、実際に教育資金として領収証で確認ができない部分で引き落として使った分について(使わなかった残高も)A・Bの場合は贈与税が課税されるということです。贈与税は110万以上が課税なので110万までなら税金はかからないことになります。

※後精算のみの金融機関もございます。その場合、いったん自己資金で教育資金を払い、後からその領収証を送付し払い出しを受けることになります。来店が必要な金融機関もございます。どの金融機関を使うのか選択は重要です。

領収証にも注意が必要

パターン1:先に銀行口座から教育資金を引き落とし、その後、その額を授業料などに充てる場合

銀行による教育資金の支払い(孫などの口座から引き落とし)→学校などへ授業料などの支払い→学校などからの領収証の受取り→銀行へ領収証を提出

パターン2:自己資金で授業料などを先に支払ってから、後で、銀行口座から立て替えた教育費を引き落とす場合

先に授業料などの教育資金を孫などが自己資金(教育資金贈与制度の口座から引き落とす以外の資金)で建て替えて支払い→領収証の受取り→領収証の提出→銀行による教育資金の支払い(孫などの口座から引き落とし)

パターン1も2もどちらの場合も下のようなの処理をするという点では同じです。

  • 教育資金の支払い(教育機関にて)
  • 領収証の受取(教育機関にて)
  • 教育資金の口座引き落とし(銀行などの金融機関にて)
  • 領収証の提出(銀行などの金融機関にて)

このとき、領収証に記載されている日付が教育資金の支払日が同じ場合も、違う場合も、領収証の日付および教育機関などへの支払日は、銀行の口座引き落とし日と同じ年度であることが必要です。そうでない場合は、教育資金として支出した金額であっても贈与税が課税されてしまいます。領収書は内容だけでなく、使った日にちと銀行へ提出した日にちという期間という規定もあるので要注意です。

 特に、授業料などの教育資金を先に支払ってから、銀行口座の引き落としをする場合(ポケットマネーから教育資金を支払っておき、後で口座引き落としによって受け取る場合)は、領収証の銀行への提出は、領収証の日付が書いてある年度の翌年の3月15日までに、銀行へ領収証を提出しないといけません。

例えば、授業料の支払を立て替え(この地点では口座引き落としはしていない)28年4月にしており、領収証の日付が平成28年4月2日だったとします。提出をし忘れて、平成29年の3月15日よりも後の、翌年平成29年5月20日に銀行へ行って、領収証を提示し(後払いの場合は、立て替えた教育資金の領収証を提示してからでないと口座から支払がなされません。)口座から引き落としをしたとすると、この地点で3月15日が過ぎているので、引き落とした金額には贈与税が課税されてしまうことになるので要注意です。

いつのまにか贈与税が課税されていたということがないようにするためには、教育費用を支払ったあとすぐに領収証を受け取るようにし、早めに銀行へ提出することを心がけていくことがポイントです。

教育資金贈与制度のメリット

最大で孫の人数×1500万円が非課税になる

資産家の祖父母がいたとします。孫が合計で10人いたとします。一人当たり1500万円の資金を提供する場合、1億5千万円となります。

孫が30歳までに祖父母などが預け入れてくれた口座内の資金を使い切れば、使った金額については贈与税が非課税になります。ただ単に、お金を贈与してしまうと贈与税が課税されてしまいます。そこから教育資金として使っても、税金が支出された後、教育資金として使っていることになります。どうせなら、贈与税を支払わずに教育資金として使いたいところですね。

相続財産が減らせる

相続財産を減らすことで、相続税の節税ができることもメリットではないでしょうか?

上記のような孫が10人いた場合に、仮にこの制度を使わずに、特例贈与財産(祖父母から子や孫への贈与)として贈与した場合の贈与税が40%かかりますので、約6000万円分の節税になります。また、祖父母が亡くなってから相続した場合は、相続財産2億円以下で相続税40%が課税され、こちらも約6000万円分の節税されます。

教育資金贈与制度を利用すれば将来的な相続税の節税効果も見込めます。

暦年(毎年の)贈与に比べ一回の贈与による節税効果は高い

贈与税は1年あたり110万までは非課税です。例えば、おじいちゃんが可愛い孫に1500万円という額を毎年贈与して、贈与税を0円にしようと思えば、14回ほど、つまり14年かけて贈与をし続ける必要があります。教育資金贈与制度を利用すれば一括で手続きがすんでしまうので、煩わしさもありません。※ただし、受遺者側は領収書などの提出が必要になります。

教育資金贈与制度のデメリット

取消ができない

資産家の場合は、メリットが多いでしょう。ですが、1500万円というのは贈与税が非課税となる最大の額です。1500万円贈与した場合取消が出来ず、使いきらなかった分は贈与税が発生します。例えば、トータルで300万円で考えられている場合は、毎年贈与をしたとしても3年間はかかるものの、非課税という点では同じです。領収証の受取や提出の煩雑さを思えば、通常の贈与のほうが楽にできてしまうことがあります。

領収書など手続きが面倒

領収証は教育機関の名前が入っていることが条件にあります。ですが平成28年1月1日からは額が1万円以下のものなら、最大24万円までは教育機関の名前が入っていない教育費用も、教育費として使った領収証として提出できることになりました。そうは言っても、領収証の管理は大変です。下宿代や海外留学は領収証として提出できなかったりします。このようなことから通常の贈与で数年かけてでもコツコツと贈与し、毎年の贈与金額を110万以下におさえて贈与をするほうが得策だと言える場合もあります。

期限や年齢に制限があり、残高が残りやすい

30歳になった時点で残高があった場合は、贈与税が発生します。使い途が限定されている分、使いきらない可能性が高いのではないでしょうか?予め大学などの学費がしっかり定まっている方などはあまり気にする必要はありませんが、そうでない方には難しいかもしれませんね。

まとめ

教育資金贈与制度については、賛否両論ございます。期間限定である点、30歳までに使いきらないと贈与税が掛かる点などを含めて総合的にご判断頂きたいと思います。

財産を贈与する場合、相続する場合で、できるだけ節税をしたい場合、財産の状況、贈与したい額や内容などで迷われた場合はぜひとも税理士にご相談ください。

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