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【弁護士監修】【法的に有効な遺言書の書き方】パソコンで書かれている遺言書は無効になる?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年03月11日
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 遺言書を遺すことで、生きている内に、死後に財産を「誰に渡すか」「どんな風に分けるか」などを自由に決めておくことが出来ます。
 ですが、遺言書には非常に強い効力があるため、法的に様々なルールが定められています。いざという時のため、出来ること、出来ないこと、効力のある遺言書にする方法などをキチンと確認しておきましょう。

遺言書の種類

 遺言書には大きく分けると2種類あります。「普通方式」と「特別方式」です。

 「特別方式」というのは文字通り特別な場合にのみ作成されるもので、あまり一般的ではありません。事故や病気などで外界から隔離されていたり、死が目前に迫っておりいくらも時間が残されていない、といった状況で作成する場合がこれにあたります。

 それ以外は「普通方式」になります。一般的に遺言書を書く、といった場合はこちらの普通方式で作成する、という意味になります。

 普通方式はさらに自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つに分かれています。

 自筆証書遺言というのは直筆で書面に書く遺言書です。必要な内容さえ書かれていれば特別な手続きを必要とせず、いつでも自由に作成できるので最も手軽と言えるでしょう。また、自力で作成するため秘匿性は抜群です。
 公正証書遺言は、公証役場で公証人と一緒に作成する遺言書です。いくらかの手続きや証人が必要になるのでやや手間はかかりますが、専門家が作成してくれるので確実に有効な遺言書ができます。
 秘密証書遺言は上記2つの中間といえます。自筆の遺言書を、内容は秘密のまま、本人の書いたものであることを証明することができます。

自筆証書遺言とは

 自分で文字が書けて、押印ができればいつでも作成できます。また、決まった書式というものもないため、内容も自由に書くことができます。
 正しい書き方というものはありませんので、無効にならない書き方をすることが大事です。
 注意点としては、以下の様になります。

1. 全文直筆であること

 パソコンで作成したものは無効です。また、他者による代筆、映像や音声記録といったものも無効になります。鉛筆以外で書くことが望ましいとされています。

2. 作成した日付を明記すること

 遺言書に有効期限はありませんが、いつ作成されたのかわからないものは無効になります。日付の違う複数の遺言書が発見された場合、日付の新しいもので内容の変更や取り消しがなく、矛盾しない場合は古い日付の遺言書も有効となります。また、民法により遺言書を作成できるのは15歳以上と定められていますので、15歳未満の日付のものは無効となります。

3. 署名、押印をすること

 署名は同一性を示す、つまり間違いなく本人のことであるとわかるのであれば芸名やペンネームでもかまいません。押印に関しても、遺言書の書面そのものにはなくても、書面を封入した封筒の封じ目にあれば大丈夫です。また、実印以外の認印や母印でも問題ありません。

4. 個人名義であること

 遺言書は1通につき一人だけです。たとえ夫婦で同じ意思だったとしても、共同名義の遺言書は無効になります。

5. 相続内容が具体的であること

 漠然と「財産」を誰それに残す、では無効になってしまうかもしれません。不動産であれば登記簿、預金であれば支店名や口座番号など、できるだけ具体的に書くのが望ましいです。相続者間のトラブルを避けるためにも、誰に何を、をはっきりとさせましょう。財産の中には「負の財産」借金も含まれることをお忘れなく。

 自筆証書遺言は作成に手間やお金がかからず、いつでも好きな時に作成できるので非常に手軽です。内容も自由ですし、考えが変わったらいつでも書き直せるのも魅力です。
 その反面、内容に不備があった場合には無効となってしまいます。

 保管に困るという点もあります。普段から人目にさらすようなものではありませんが、死後に発見されなければ意味がありませんし、紛失してしまうこともありえます。

 また、あまり考えたくはありませんが、発見者が自分の都合のいいように書きかえてしまったり、丸ごと偽造されてしまったりするかもしれません。自分に都合の悪い遺言書を意図的に隠すといったケースも報告されています。

 遺言書を開封する際にも注意が必要です。自筆証書遺言の場合、開封するために家庭裁判所による検印が必要です。検印を受けずに遺言書を開封、あるいは執行した場合5万円以下の過料に処せられます。

公正証書遺言とは

 遺言者本人が公証役場の公証人に遺言内容を伝えて、協力して遺言書を作成するのが公正証書遺言です。
 その性質上、作成するためにはきちんと手順を踏んでいく必要があります。

1. 公証役場へ行き、公証人と相談する

 公証人は遺言書を書く時だけでなく、どのような内容にするかの相談にも乗ってくれます。やり方はよくわからないけど遺言書を書いておきたい、というような場合にはまずは相談してみることをお勧めします。無料の法律相談などでもかまいませんが、「あちらには伝えたけどこちらには伝えてなかった」といったミスも起こりますので窓口は一つにした方が良いかと思います。

2. 証人を2人選ぶ

 ここでいう証人は公証人ではありません。公正証書遺言を作成するためには、公証人以外に証人が2人必要なのです。証人になれるのは、「20歳以上」で「遺言者あるいは公証人の親族ではない」「遺言者から贈与を受けたことがなく、その予定もない」者です。公証役場で手配してもらうこともできますが、有料です。

3. 遺言内容を口頭で伝える

 原則として、遺言内容は遺言者から公証人へ直接口で伝えることになります。相談しながら作成する場合は特に気にはならないでしょうが、あらかじめ内容を決めていた場合など、メモを渡してこのようにしてくれ、とはいきません。公証人が意図を勘違いしてとらえてしまうかもしれませんから、本人の口から説明することが大事です。

 公正証書遺言の場合、専門家の協力が得られるので、確実に有効な遺言書を作成することができます。自筆では見落としてしまいがちな、具体的に何をどれだけ相続するのか、などといった細かな点にも手が行き届きますし、開封の際に家庭裁判所の検印も必要ありません。また、公証役場では遺言書の原本を最長20年間、もしくは本人が100歳になるまで保管してくれます。

 一方で、手続きが必要なため今日すぐに作る、というようなことはできませんし、事前に戸籍謄本などの書類を用意する手間もあります。証人がいるので内容がもれてしまう可能性は否定できません。

 また、公正証書の作成には「公証人手数料令第9条」で定められた手数料がかかるのですが、その手数料は相続者ひとりごとに別個にかかります。
 たとえば、3,000万円の遺産を一人に相続させる場合、手数料は23,000円となりますが、これを1,500万円ずつ二人に相続させる場合、2,3000×2で4,6000円の手数料がかかります。遺産の金額により手数料は変わりますが、人数が増えるたびに手数料がかかりますので注意が必要です。

秘密証書遺言とは

 この場合、まずは遺言書を用意します。それを公証役場に持ち込んで、遺言書を書いたという記録を保管してもらう、これが秘密証書遺言です。記録を保管してもらうのに手数料11,000円がかかりますが、死亡した際に「遺言書が存在する」ことが確実に遺族に伝わるようになります。自筆証書遺言に保険をかけた状態と言えるでしょう。

 また、秘密証書遺言は全文を直筆する必要はありません。パソコンで作成したり、代筆を頼むことも可能です。ただし、署名と押印は自力で行う必要があります。
 作成するには、公正証書遺言と同じく公証人と2人の証人の立ち合いが必要になりますが、内容を確認されるわけではありませんので、遺言書の内容は秘密にしておくことができます。その際、遺言者が遺言書に封をして、公証人が封紙に署名をします。この封が破られていたり、開いた形跡がある場合には無効になりますので、偽造や改変を防ぐことができます。

 逆に言えば、公証人が内容を確認できないので、内容に不備があったとしても気付かず、無効になってしまう可能性があります。その場合でも、自筆証書遺言の要件を満たしていれば自筆証書遺言として有効になりますので、念のため直筆で書いた方がよいでしょう。

 また、手続きには公正証書遺言とほぼ変わらない手間がかかりますし、手数料も安くなるとは言えかかります。
 保管に関しても、公証役場は「遺言書があるという記録」を保管してくれるだけなので、遺言書そのものは自力で保管しなければなりませんし、開封の際にはやはり家庭裁判所による検印が必要です。

遺言書に記載すべき内容

 なんといっても、まずは具体的な内容です。どこにあるどの財産を誰に相続させるのか、具体的に書く必要があります。大事なのは読んだ人が理解できることです。記載に漏れがあったり、どの財産の事かはっきりしない場合には相続者間で争いが起こることもあります。
 そのためには財産目録を作成するのがよいでしょう。財産目録はすべての財産や借金をリストアップしたものですので、円滑な財産分与には不可欠と言えます。

 その次に相続人の範囲です。配偶者と子供というのが一般的ですが、とてもお世話になった人など、感謝をしたい人がいればその方に財産を残す(これを遺贈といいます)のも遺言者の自由です。法定相続人でない限り、遺言書に記載のない人物には遺産はわたりませんから、遺言書を残す醍醐味と言えるかもしれません。

 附言事項には、今思っていることや気持ちなど、数字に表せない部分をこめて下さい。遺言者の気持ちがきっちりと伝わったなら、遺産を巡って争うようなことにはきっとならないはずです。遺言書の体を成していればいい、とは考えてほしくないです。

 遺言書では遺言執行者を設定することができます。遺言書の内容が守られるよう弁護士など信頼のおける方にお任せすることが出来るのですが、これは遺言者の自由です。専門家にお任せしておけばスムーズに進むことも多いです。

注意すべき点

 せっかく遺言書を作成しても、発見されなければ意味がありません。保管する際にはそのことを念頭に置いて下さい。また判読不明では困りますので、なるべくなら丈夫な紙に、にじみにくいペンを選ぶなどしましょう。

 遺言書の作成にはある程度法律の知識が必要になってきます。自力では難しいと判断された場合は弁護士など法律の専門家に相談することもできます。その場合、内容の複雑さで金額が変わってきますが、一般的には5~30万円くらいだと言われています。公正証書遺言であればそれにプラス手数料がかかることになります。

 法律の専門家に依頼した場合、そのまま遺言執行人や遺言書の保管を任せられるメリットもありますので、考える価値は十分にあると思います。
 分配に差をつけたい場合には、相続人の遺留分というものを考慮しましょう。遺留分というのは、簡単に言うと相続人の「最低でもこれだけは受け取れる権利」です。これは法定相続分の1/2となっています。

相続に関する困りごとは弁護士に相談を

結局どれを選んだらいいのか、それは遺言者の気持ちや周囲の環境次第となってしまいます。

表題にあるようにパソコンを使いたい場合や、身体的な問題で自筆が難しいのであれば秘密証書遺言が良いでしょうし、相続者間でトラブルが発生すると考えられるのなら公正証書遺言がいいでしょう。単純に金銭面だけを見て自筆証書遺言というのももちろんアリです。

ただ、確実性のある公正証書遺言が安心といえます。金銭的に余裕があるのなら、法律の専門家に作成から遺言執行人まで依頼するのが便利でしょう。
そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、相続で起こりやすいトラブルを未然に防いでくれます。

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相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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