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今話題の家族信託を勧めている弁護士先生にインタビュー

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更新日:2019年07月26日
今話題の家族信託を勧めている弁護士先生にインタビューのアイキャッチ


相続でも現在、遺言以外の財産の遺し方があり、法律事務所にも信託の問い合わせが多いみたいです。
信託とは、従来の民法や裁判所の考え方とは別に、財産管理・遺産承継の方法として自由なやり方としているのが「民事信託」です。
特徴は、それぞれのご家族の形に合った財産管理・遺産を承継の形が作れ、カスタマイズをし、柔軟な資産承継の形を作ることができる点です。

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

そんな、信託の中で家族信託を他の士業の方と意見交換をしながら、信託の最先端の情報を勉強している、内幸町の弁護士先生にインタビューしてみた。

あおぞらみなと法律事務所に関して

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

---あおぞらみなと法律事務所の特徴を教えてください

業務のジャンルとしては、相続とか遺言関係の事案の比重が多いです。
さらに加えて、それの新しい手法である家族信託というのを意識的に手掛けています。

私は常日頃ずっと言っているんですが、成年後見制度というものがあって、最近それの重要性が増しており、踏まえた上でそのような相続等の案件も扱っています。
後見人の活動自体もやっていますし、なかなか、そこをちゃんと繋げて考えられない処理がまだ多いんですけれども、それは必ず関わってくるので、遺言を書いても後見人が付いたら遺言の前提が崩れてしまうような事がよく注意として言われますが、その辺りをちゃんと踏まえてトータルに扱っていく、というのが一つあります。

---では、構成比率みたいな所だと。

一般民事で、その中でも一般民事というか家事ということになるんですけど、離婚なんかもやりますが、遺言、相続は力を入れてやっています。

---今、弁護士先生歴はどれぐらいでしょうか?

弁護士登録が平成7年ですから、もうちょっとで満22年で、内幸町で平成12年の3月に独立開業して今年で17年目になります。

---あおぞらみなと法律事務所の名前の由来を教えてください

これは正直に本当の話を言うと、くだらない話で、「あ」で始まるというのが前のほうだからいいなっていうのがあって、引っ越し屋とか探偵社ではないんですけど(笑)。
それで、「あ」だったら「あおぞら」がいいかと思って、でも「あおぞら法律事務所」って既にあったので、ここが港区だから、それに「みなと」って付けただけなんです。
ただ、事務所を開いた時に、事務所お披露目で来てくれた先輩の先生なんかが、いい解釈を出してくれて、「青空をみんなと仰ぐような、晴れ晴れとした気持ちになれる事務所っていう意味なの?」って言われた事があるので、格好を付けるときにはそういう説明をしています(笑)。
色々な人が身を寄せる「港」であり、「みんなと」という意味も込めております。

---事務所を設立して17年で苦労された事とか教えてください

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

メンタル的な所で言うと、全ての事を自分の責任でやっていくっていうのが、苦労であり、凄く大きな意味合いのある事だったなって思います。

印象に残っている事で言うと、その時に前の事務所で、ほぼ僕がやっていた事件のお客さんが「事務所を作ったんですね、おめでとう」って言ってくれて、お祝いを少しいただいたんですけど。
その時に、「伊東先生、顔に欲が出て来たね、それはいい事だ」って、その方は実業家の人でしたけど、自分で何かを取り組んでいくというか、やっていくっていう、そういう「表情に出てる」って言ってくれて、上手い事を言って励ましてくれただけだとは思うんですけど(笑)、それは印象に残っています。

---何か他の弁護士先生とかと共同でやられるとか、誰かと一緒にやるという事はあまり考えていなかったんですか?

現実問題として全然タイミングが急だったので、そんな準備ができる状況ではなかったですけど、別に誰かとやる事を否定している訳ではなくて、正直な話たまたまです。
それと、またどこかに雇ってもらうという事に関しては、うちはカミさんが「もう、あんた自分でやりなさい」って、私のケツを叩いてくれましたね(笑)。

今はもう全然、事務所に関わってはいないんですけど、最初の頃はカミさんが事務員をやってくれて、人を雇うようになったり犬を飼ったり等の色々な事情で、そんなに出て来なくはなったんですけど、色々な事をアドバイスしてくれるんです。
でも、法律とか全然そんなものではなく、ただ、凄く腹が据わっていて色々洞察力があって、僕自身に対しても厳しい事も言いますし、お客さんとのコミュニケーションもやっていましたね。

伊東 大祐先生に関して

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

---なぜ弁護士を目指そうと思ったのでしょうか?

へそ曲がりなのかもしれないです(笑)。
正義感と言えば綺麗事ですけど、それよりへそ曲がりって言うほうが言葉として何となく、しっくりくるかなと思います。
「何でこうなんだよ」とか「おかしいじゃん」というような事が、割とへそが曲がってしまうタイプだったんです。
ただ、やっぱり弁護士は商売をする訳ですから、商売というのが本当にできるかなと、今でもあまり向いているかどうかわからないんですけど、そこら辺の迷いというはありましたけど。

---裁判官とか検察官になる道はありましたか?

検事は考えた事はなかったですが、裁判官は色々法廷でやる事を考えると嫌いではないので、それは考えたことはありますけど、あまり肌に合わないかなと思ってました。

現在は、弁護士会の委員会というものがあり、弁護士会で「弁護士任官推進委員会」というので、弁護士から裁判官になる人を送り出すという委員会をやっているんです。
来週の月曜日に、それ民事調停官を希望する人の面接をやるんですけど。

---裁判官になりたい弁護士先生の審査官をやっているんですか?

審査というより、弁護士会全体としては、そういう弁護士出身の裁判官が増えていくのが望ましいというポリシーがありますので、適任の人を選んで送り出して支えようみたいな形です。

---それは、すばらしいですね。

それは民弁の先生がやっていて、「伊東さん、やりなさい」って言われたので引っ張り込まれただけなんですけど、逆に言ったら、「いずれ研修所の教官か何かをやらせてみてはどうか」というふうに先生は思ってはいたとは思うんですけど、私自身は全然そんな余裕もないし、成績もあまりよかったとも思えないので、何とも言えないですけどね。

---ちなみに、法学部に行ったというので、先生の中で企業に勤めるとかは一切考えていなかった感じですか?

あんまり企業に勤めるというイメージはなかったです。
別におかしい事でも何でもないんですけど、やっぱり「企業で金を稼ぐ」という、企業の立場でっていうものが今一つイメージができなかったんでしょうね。

---弁護士を目指した時の苦労された話など

私は司法試験に受からなくて2留して、それで参議院法制局という所に1回就職をしたんです。
要は司法試験崩れの巣窟みたいな所なんですけど(笑)、そこの仕事もそんなに嫌いではなくて、国会の法制局というのは大体は野党から依頼が来る訳ですけど、そこで法案を作るという事をやっていました。
それも、割と自分の性に合っていたかもしれないんですけど、段々と勉強する意欲が失せてくる訳ですよ(笑)。

---国会で審議する法律案を作るのが、しっくりこなくなってきたと?

そういうのではなく、その仕事はその仕事で、割と向いていたかなと今で思うんですけど、そうすると段々と試験の勉強に身が入らなくなってくる訳ですよ(笑)。
それが苦労というか、そこでモチベーションを保つというのが。

---仕事と勉強の両立っていう事ですかね?

まあ、そうですかね。
それで、何かカミさんの尻に敷かれているみたいですけど、カミさんが「今年で最後だからね」って言った年に何とか受かったんですけど(笑)。

仕事をしてモチベーションがどうこうという事で言った訳ですけど、仕事をしていなかったら自分は受からなかっただろうなって思う所もあるんです。
やっぱり仕事という事で、やはり色々な効率性も求められるし、段取りとか考えなければいけないじゃないですか?

僕は割と凝って色々な細かい学説とかまでも研究してしまう質だったので、仕事をやっている内に、そういう無駄な知識がバーッとなくなっていったんです。
それと、そういう個々の法律の中身の動向ではなくて、受験と合格というミッションに向けての段取り的な発想ができたり、それこそ全然知らないような問題が出てもハッタリで7割ぐらい書くとか、そういうのは、やはり仕事をして身に着いたんだろうと思うので。

やっぱり最後はきつかったんでしょうね・・・・(苦笑)
口述試験が終わったあとに目に病気が出まして、それで年内は飲酒禁止になってしまって、合格しても祝賀会に行っても酒が飲めないという状態でした(笑)。

ある日、仕事場で六法を見ていたら、六法の上に何か修正液のホワイトを撒いたみたいにパッパッパッパと字が抜けて見えない所があったんです。
「何だこれは?」と思って眼医者に行ったら、「ぶどう膜炎」とかいう炎症が起きていて視界が欠けていたという事になってしまいましたが・・・もう治りましけど(笑)

---自身の中で大切にしている事

仕事絡みで言えば、やっぱり「否定しないで聞く」というのは、ポリシーというか、そういうふうに自然としてしまうんですけど。
依頼人は法律も制度も知らないので、色々と固い事を言う事が多いです。

固い事を言うんですけど言いたい背景がある訳だし、それをどのように汲み取って形にしていくか、というのがこちらの仕事だろうと思うので、割と、つっけんどんな弁護士も多いですし、依頼人との間で主導権を取ろうとして威張り散らしたり、怒鳴り付けたりする人も現実に居ますけど、私は割と何でも聞いてしまうほうですけど。
ただ、それは欠点に出る事もあって、引きずられて大変な事になる事もありますけど、でも聞かないよりは聞いたほうがいいだろうとは思っています。

 

お仕事に関して

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

---なぜ信託に関して力を注ぐのか、これだけの本と、なぜ信託なのかという所は?

本当の話を言ってしまうと、へそ曲がりって言いましたけど、「他業種がやっていて、なぜ弁護士がやらないんだ」っていう所にムカッと来たというのが、もともとの出発点だったかもしれません。

それと、私が弁護士になって1年目の平成8年だったかに、会社法とか民事訴訟法とか色々と変わったりしたんですけど、最初就職した時は、上場企業の顧問先とかがあるような事務所ではなくて会社法の事件なんてほとんどなかったので、「それを勉強してパイオニアみたいに」というのは無理だなと思ったんです。
では、何か新しくできたジャンルで先鞭を着けるというふうにしたらどうかって考えたら、信託法が平成18年に改正になって平成19年から施行になったんですけど、「そしたら、これかな」というふうに割とスケベ心を出したのも一つです。(笑)

それと、それが始まって以降は、始まったところで凄く関心を持ってやろうと思ったので、ずっとその関係の研究部みたいなものに入っていたんですけど、弁護士が全然やる気がないというか、立ち遅れている状態だったんです。
それで、司法書士さんなんかも一生懸命に組織を作ったりして、彼らは業域を拡大していかないと生きていけないので凄い必死さがあるんですけど、弁護士は、のほほんとして何にもやらないという事で延々と来ている状態なんです。

ちょっとご縁があって、日弁連の企画でシンポジウムの司会「業務改革シンポジウム」、業革シンポというのを2年に1回、全国方々で回り持ちでやっていたんですけど、それを神戸でやった時に民事信託を扱うというので、その企画を自分でやっていた訳ではないんですけど、僕も所属している研究部の人がその企画サイドのほうに居たんです。
それで、色々「資料作りとかやってくれ」とか言われて、シンポジウムの司会は最初は別の人がやる予定だったんですけど、その人がインドに行ってしまって・・・・

その方は、パイオニア的にやっていた人なんですけど、色々興味関心が広い人でインドに行ってしまったんです。
それで、たまたま、やる人が居ないからということでお鉢が回って来て、神戸のシンポジウムの司会をやることになったんです。
その結果、その関係の色々な方とも知り合いになって、「新しい家族信託」をお書きになられた遠藤英嗣先生という、当時はまだ公証人だったんですけれども、このジャンルで日本で一番先を行っている人だったんですが、この遠藤先生ともお知り合いになりましたし、この高橋さんは当時ベルニナ信託という会社の方だったんですが、富裕層向けのプライベート信託をやっていた方で、そういうなかなか普通には知り合えない方と接点ができたというのは大きかったと思います。

それで、せっかくだからというので、その企画に関わった若い皆さんたちに声を掛けて、とにかくある程度やってみようということでインターネットのホームページを作ったという流れです。
そのグループの仲間の伊庭先生という人が、中央大学の新井誠教授という方がいらっしゃるんですけど、その新井先生の研究会なんかに参加していて、その伝で私も参加させてもらったりしています。

まとめると、「何か一つのジャンルで誰にも負けないようなものがあったほうがいいか」と思ったのが出発点でした。
それで、たまたま信託法の改正があって、非常におもしろい事が色々できるという事が言われているんだけど全然活用されていないと、特に弁護士は取り組みが遅れていたので、それで一丁やるかっていうので仲間とやってみたという事です。
実際このジャンルで言ったら、手前味噌ではないですけど、私と仲間の8人のグループがトップを行っていると思っています。

商事信託は、そういうビジネス系の優秀な先生がたくさんいらっしゃいますけど。

---商事信託とは?

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

民事信託に対して商事信託というのがあって、信託銀行が大きい案件を扱ってとか、投資の資金運用で信託を使ったりするんですけど、その辺りは、そういう専門の弁護士さんが居るんです。
それに対して、お年寄りや障害者の方の財産管理ですとか、資産の承継というのに手作りで信託を活用していこうというのが民事信託・家族信託というジャンルですけど。
その関係では弁護士でやっている人は正直ほとんど居ないので。

---ちなみに、その信託のメリット・デメリットってなんでしょうか?

信託のメリットは自由度が高いという事です。
相続に関しても財産の管理にしても、成年後見とか遺言とか既存の制度がある訳ですけど、それに比べて非常に自由度が高いという事、これがメリットです。

税金が安くなるとか、全然そういう事はないんですけど。

---それはデメリットですよね。

要は相続税対策ができないという。

いえ、相続税対策は、むしろ信託だとやる事はできます。
例えば、あるお年寄りが資産を持っていらして、普通だったらもう相続税対策をしなければならないけども、それに間に合わないで認知症が発症してしまって成年後見人が付いた場合、成年後見人は相続税対策をやってはいけないので、何にもできなくなってしまうんです。
信託の場合も、しっかりしている内に動かなければいけないんですけど、アパート3棟持っているのを信託で息子さんに移して、建替計画とかをやろうとする場合には全部息子さん名義になっているので息子さんが自分でできる訳です。
でも、収益はお父さんに返さないと贈与になってしまうので、お父さんのためにそれをやる訳ですけど、それは何も縛るものがないので自由度が非常に高いというのが信託のメリットです。

---例えば、遺言とかだと遺言の形式とか、認知症になったらもうできないっていうのがありますよね?

遺言は認知症になったらできないですよね。
今のようなものだと、資産の中身を色々組み替えたりする事があるので、元気な時に遺言を書いていたとしても、そのまま実行できるかどうかは、わからないんです。
なので、ある程度は受託者の裁量に任せたり、ここから先は最先端の議論になるんですけれども、遺産の分け方についても委ねた人に決めてもらったり、みんなの調整をしてもらう、みたいな事も今後は活用していけるんじゃないかと思っています。

---ちなみに、遺言を書いて残してあるのに信託を適用するっていう事になったら、どちらが優先されるんですか?

まずは、今の話はストレートに言うと信託です。
遺言というのはいくらでも書き換えができるんです。
あとにやった事と遺言が矛盾したら、その限りで遺言は取り消されるっていうふうに法律が決まっているので、あとにやった事が有効になります。
ただ、遺言でも信託でも、それをやるときにボケてしまっていると何もできないので、ボケるまでのギリギリの所の一番最後のものが有効という事です。

---というと信託は、、

信託をやったあとに信託と矛盾する遺言を書いたら、という場合もあるんですが、これだけはおもしろい事に、信託は財産の名義を他人に変えるので、自分の名義ではないものについて遺言を書いたとしても、ひっくり返せない訳です。

---信託のほうが強くなる場合があると

そうなんです、遺言がどんどん書き換えられて、現実に悲しい事件として多いのは、息子や娘が親御さんを両方から引っ張り合って、何回も何回も書き換えさせたりする訳です。
そのような見苦しい事を、もう一切なしにするのが信託じゃないといけないです。

信託でも誰に利益を与えるのかっていうものの変更権はあるのが基本なんですけど、それがないという信託をしてはいけない事はないんです。
受益者の変更権がないという形の信託にして、自分の頭がしっかりしている内に「もう決めたんだから、これでいく」と、それで「あっちにやり、こっちにやれ」という事で子どもに争ってもらいたくないと思ったら、そういう信託をして受託者名義に変えれば、あとでどうこう言われても「俺だって変えられないんだから」と言える訳です。

---でも、遺留分は請求できる?

遺留分は請求できます。
遺留分は請求できないという、とんでもない説を言う司法書士さんも若干ですが一部に居るんですけど(笑)、それは大間違いです。
信託と遺留分は本当に難しくて、まだどういう形になるかというのでさえ話はまとまってはいないんですけど、今はそれに配慮した信託の組み方をするっていう所までしか対応策はないですけどね。

---信託って基本的にお金が掛かるもの、財産を移したいときに手数料とか掛かるじゃないですか?

それはちょっと本当に難しい所で、我々もこれをどういうふうにお客さんにチャージしてやっていくかは、まだ全然固まってはいないんです。
その、とんでもない事を言いながら荒稼ぎしている某司法書士さんなんかは、自分の所の料金表を公開していますけども、それだと相当高いコーディネート料を取っています。
ただ、それが適正だとはこちらは思っていないので、もうちょっとその内容がスタンダード化されていったら、遺言って弁護士に頼んで作ってもらうといくらぐらいかっていうのはわかりますか?

---わかります。

15万とか20万とか、それぐらいです。あとは金額によって。

あんまり相続財産の額でスライドさせるっていう所まで見たことは、私はあんまり現実にはないですけど、それに類すると考えればその程度で出来てもいいのかもしれないですけど、でもそれはちょっと乱暴だと思うんです。
おそらく、もうちょっと色々と細かい配慮が必要ですから、「すべての財産は誰々に相続させる。以上」なんていう遺言とは全然レベルの違う作業になるので、数十万程度の費用は認めていただかないと、やっていくのは難しいと思います。
ただ、それで有効活用できるようになったら効果は大きいですから、それだけのメリットは十分あるとは思います。

一番問題は、内輪に揉め事があるかどうかなんです。
よく典型例で出て来るのは、再婚の夫と妻が居て、前妻は亡くなっていてお子さんが居て不動産を所有している場合、何もしないと、2分の1、2分の1で相続になるんです。
ただ、自宅なので、前婚が離婚でお子さんが夫のほうに引き取られたりすると、色々な微妙な気持ちの問題があったりして、「うちのお母さんを捨てやがって」、「この際だから仕返ししてやる」みたいな事だってあるかもしれません。

そうすると、ここが上手くいくかどうかはわからないですし、こっちに行ったものは、この人にお子さんが居ないと、この兄弟に行ってしまうんです。
そうすると、もともとこの不動産自体が先祖から来たようなものだったら、要は他所の家のものになってしまう訳です。
それを防止しなくてはいけないという事でやるには、1回こっちに行くけど次はこっちとか、それを信託で作る事ができるんです。

---一応、流れを作っておくという

そうです。
遺言で勝手に書こうと思ったら文言はできますけど、「後継ぎ遺贈」というんですが、奥さんに行ったものの相続先を既に死んでいる人が決めるというのは基本できないんです。
でも信託の場合は逆に発想を180度変えて、奥さんに「奥さんが生きている限りは住んでいていいよ権」をあげるんです。
死んだらその権利自体はなくなる訳なので、そうすると死んだときには、今度はこっちに「この不動産を自由にしていい権」というのが発生すると書いておけば、結局こう行って、こう行ったのと同じ事になる訳です。
厳密に言うと違うんですけど、そういう形で財産の更に先の行き先まで指定できて、これを「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」というんですが、そういうのが信託ならでき、遺言よりも効力がある場合があり、できる範囲は広いです。

---書面で捺印をするような感じという事ですか?

信託契約書というものを作ります、そんなに関係が、悪くないのであれば、「お前にいずれは全部やるんだから」と「お前を受託者にして、お前の名義にするけれども、受益者の今の奥さんは一生住まわせてくれ」と「その契約をしておこう」という事で、その段階で契約しておくんです。
それで、この奥さんが亡くなったら、それは信託終了でこの人に返って来るという事で、信託は相続において、遺言書よりもそういった先のものまで契約書として遺せるもので、信託は遺言書のように無限の書き換えができないので安定する、それと遺言ではできない行先の指定ができるという事です。

これで一番強力なケースは、お子さんが居るけれど障害者の方だとすると、財産をいずれ相続する訳ですけど、自分で管理ができないので信託を使って管理をしてあげる事ができるのが、まず一つです。
このお子さんが亡くなって、こっちも先に亡くなっていますので、このお子さんの所に行った財産は国庫帰属になってしまうので(笑)、それはちょっと流石に忍びないなというときには、大体この障害者の親御さんたちは色々な福祉団体にご縁があるので最終的にはこちらに寄付する、というような事を決める事ができるんです。

単純にお子さん名義にして財産をあげてしまうと、そのお子さんという他人の財産をこちらで勝手にはできないので、ではこの人が遺言を書けるかといったら残念ながら書けない訳です。
しかし、信託を使って「お子さんに渡す前にお子さんに一生で十分なお金を給付するけれど、亡くなったら信託は終了して福祉団体に寄付をする」と、そういう事ができるんです。

例えば、この福祉団体、実際にはそういう団体が受託者を引き受けるというのは、今はそんなに簡単な話ではないんですけど、実際に現実の例として考えると、信託銀行で6000万円まで贈与税が非課税になるという「特定贈与信託」という制度があるんですけど、それだったら信託銀行が受託者になってお金を親御さんから預かると、そこの特定贈与信託でも出口でやっぱり残ったものはどこかに寄付をするという事が書けるんです。
単純にお子さんに完全に贈与してしまってお子さんのものになってしまったら、それはお子さんしか処分できませんから、お子さんが亡くなったら国庫帰属しかないんですけど、そうではないようにする事ができるんです。

最後に

あおぞらみなと法律事務所 伊東大祐弁護士

---相談に来られる方にメッセージを

辛口の方向で仮に言うとなると、「自分がボケてしまったら何もできません」という事です。
その時に、後見制度とかあるんですけど、決してなかなか思ったようにはいきません。
だから早めに、少なくとも相談だけはしておくっていう事をお勧めします。

信託ではなくても遺言でも任意後見契約をするとか色々なバリエーションがありますけれども、やっぱり難しいので聞かなければわからないと思うんです。
それを「いずれ」、「また」、「今度」というふうに先延ばしにしていると、手遅れになってしまうので、お気軽に相談だけでも1回してみて、専門家の目から見て将来どういう事が予想されて、何をしておく必要があるかっていうぐらいの頭の整理はされるのがいいと思います。

それは別に我々みたいな所に来るのもいいですし、区役所の無料相談でもいいですし、素人さんが考えているのとは少し法律が違うという事もありますので、それは必ず早めに相談をしてみて、それで自分に問題点があるのかないのかぐらいは知っておくっていうのは、されたほうがいいかなと思います。

このインタビューを受けた後、かねてからお誘いを受けていた先輩弁護士の事務所に参画することになりました。
現在は、赤坂見附にある、村上総合法律事務所に所属しています。

信託に関しては、税理士さん向けのセミナーなども行っており、弁護士会での講演なども予定されています。
また、信託契約後に残念ながら訴訟になってしまった件などのご相談も来るようになりました。
信託ができる弁護士の養成も強力に進めていますので、今後弁護士による民事信託・家族信託のサービス提供が拡がっていくと確信しています。

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伊東 大祐 (東京弁護士会所属 / 村上総合法律事務所)

相続問題に力を入れたのは、成年後見制度がキッカケです。 常にどうにかならないか?何とかならないか?という事にこだわっております。 相続に関してはお任せ下さい、特に信託に関しては勉強を重ね、知識を深めておりますので、。是非一度ご相談下さい。お待ちしております。

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相続相談弁護士ガイド 編集部

相続問題に関することを専門家と連携しながら情報発信しております。 悩んだり、わからないことがあるときは参考にしてください。 どーしてもわからない場合は、一度弁護士に相談するのもいかがでしょうか。

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