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【弁護士監修】義父母がほぼ全財産を相続させようとしている、その方法は?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2020年09月29日
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相続割合を増やすためには

よくドラマやワイドショーなどで、家業などで後継ぎの必要があるご家族での御家騒動などで揉めるケースを見たことがある方も多いのではないでしょうか?婿養子などに入ったりすることで、家業や会社を相続させたりする場合によくあるケースを実際のご相談を参考にご紹介したいと思います。

今回のご相談者の男性は、長女である奥様とご結婚され婿養子されています。婿養子とは、奥様側の姓になるだけでなく、義父母共に養子縁組をしているので義父母から婿へ相続する権利があります。

義父母のお二人はご健在ですが、義父母はご夫婦共に介護施設にご入居されています。

長女である奥様の下に、次女がいらっしゃいましたが既に亡くなっており子(甥と姪)が2人います。家系図にすると下記のようになります。

義父母がほぼ全財産を相続させようとしている、その方法は?

仮にお義父様が亡くなられた際に、法定相続人(法律上相続人となる権利がある人)は、配偶者であるお義母様、長女、亡次女の代襲相続人*1である甥と姪の2人、婿養子として義父と養子縁組をしている相談者の計5人となります。

しかし、ご両親はどちらが先に亡くなっても「自分たちは相続しない」と宣言しており、次女の子2人(甥と姪)には幾らかの現金を渡しますが、残りの大部分を長女と婿養子である相談者に相続させたいと公正証書遺言*2を作成しているそうです。

ご両親が望んでいる通りの内容での相続手続きは可能なのでしょうか?

結論から申し上げると、相続手続きは可能です。

故人の意思を尊重するために、遺言書の内容は優先すべきものです。

しかし、今回のようなケースですと、遺言書の通りに相続をした場合、代襲相続人である次女の子2人の遺留分を侵害してしまう可能性が考えられます。そういった場合には、遺留分相当額との差額を請求される可能性があるのです。

遺留分とは?

ここで参考までに、遺留分についてご説明致します。

遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産を保証している権利です。

※兄弟姉妹は相続人であっても遺留分は発生しません。

前に申し上げた通り、遺言書の内容は故人の意思ですので、優先されるべきものですが「愛人などの赤の他人に全額の財産を相続させる」などの遺言書を遺した場合、遺族が生活できなくなる事態も有り得ます。あまりにも不利益な事態を避けるために相続財産の一定割合を保証する制度、それが遺留分です。

 遺留分減殺請求ができる相続人は?

配偶者・直系尊属(父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族・養父母も含む)・直系卑属(子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族・養子も含む)で、兄弟姉妹は除かれます。

それでは、各相続人の遺留分の具体例を挙げておきましょう。

法定相続人が・・・

配偶者のみ   配偶者が2分の1

子供のみ      子供が2分1

配偶者と子供    配偶者が4分の1 子が4分の1

配偶者と父母    配偶者が3分の1 父母が6分の1

配偶者と兄弟姉妹  配偶者が2分の1 兄弟姉妹は遺留分なし

父母のみ      父母が3分の1

兄弟姉妹のみ    兄弟姉妹には遺留分なし

※代襲相続による相続人にも遺留分の権利があります。

遺留分の基礎となる財産

遺留分を計算する際の相続財産は、亡くなった方の死亡時に有していた財産とは異なります。

1 遺贈

2 死因贈与

3 亡くなった方が生前に贈与した財産

4 相続人が受けた特別贈与

5 遺留分を害することを知ってなされた不相当な対価をもってした有償行為は贈与とみなされます。

上記の財産から、相続発生時の負債(公租公課などの公法上の負債も含む)を差引いたものを基準に遺留分の計算をします。

遺留分減殺請求の仕方

「遺留分減殺請求」をするという意思表示をするだけでよく、請求を証拠に残しておくために内容証明郵便(配達証明付)で行うのがよいでしょう。相手が請求に応じない場合は、家庭裁判所に遺留分減殺の調停の申立てをすることができます。

遺留分を侵害する遺言であっても無効になるわけではありません。遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由であり「遺留分減殺請求」が行使されるまで有効な遺言として効力を有します。

なお、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続開始及び減殺すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。また、相続開始時から10年を経過したときも、同様となります(民法1042条)のでご注意下さい。

 *1 代襲相続人とは・・
被相続人の子が、相続開始以前に死亡している場合や、相続欠格事由に該当している場合、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その相続人の子供が代襲して相続人になります。(民法887条2項)
 *2 公正証書遺言書とは・・
公証役場で公証人に作成してもらう遺言書であり、自筆証書遺言のように、家庭裁判所で検認手続きを行なう必要はないため、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。また、公証役場に原本は保管されています。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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