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【弁護士監修】遺留分とは、請求できる配偶者の割合から請求事例まで!

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年02月13日
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相続人なのに相続財産がもらえない?

財産を遺そうとする方の多くは、亡くなる前に遺言書を書いておきます。故人は遺言を書き残すことで、自分の財産を誰にどれくらい受け継がせるかを自由にすることが可能なのです。

遺言の内容は、民法よりも優先されます。亡くなった方がどのように遺産を分けるかは、民法のルールに基づいた「法定相続」よりも「遺言」に書かれている内容が優先されるのです。

しかし、遺言書の内容が「全財産を愛人に相続させる」「全財産を内縁の妻へ相続させる」「全財産を赤の他人へ相続させる」などといったものであった場合、残された家族は何も相続できなくなり、最低限の生活が保障されないケースも生じてしまう可能性があります。

そのため、どんな場合でも遺言の内容通りになるかといえば、そうでもありません。

遺留分とは?わかり易く解説

 遺留分とは、民法によって保障されている“一定の法定相続人が相続できる最低限度の財産”のことです。民法第1028条によって次のように定められています。
 

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

   
 被相続人(亡くなった人)は遺言書を作成して、自身の財産を自由に分配することができます。そして、遺言書の内容は被相続人の意思として、法定相続分(民法によって定められた遺産の取り分の事)よりも遺言書の内容が優先されます。
そうなると、先ほど例に出た「全財産を愛人に相続させる」などと言った内容を遺言書に書いていた場合、それが優先されてしまうことになります。
するとどうでしょうか、遺言書が無かった場合、法定相続分を受け取れるはずだった法定相続人(法律の規定によって相続人となる人のこと)は、遺産を全く受け取れなくなってしまいます。

そのため、民法では遺留分を定めて、最低限度相続することができる財産の保障をしているというわけです。

ちなみに遺留分が保障されている法定相続人は、被相続人の配偶者・子・親です。
法定相続分は兄弟姉妹にもありますが、遺留分はありませんのでご注意ください。

代襲相続とは?⇒

遺留分は遺言に左右されるのか

 もしも被相続人が残した遺言書が、遺留分を下回る割合の遺言だった(遺留分を侵害されている)場合、その遺言は意味が無いのかと言われたら、決してそうではありません。
 遺留分を侵害されていても、遺言書の内容自体は有効のままです。遺留分を侵害されている法定相続人が遺言書の内容のとおりで良いとすれば、遺言書の内容のとおりに相続がなされます。
 ですので、遺留分自体は遺言に左右されるわけではありませんが、遺言書の内容自体は有効ですので、被相続人の意思を尊重すれば左右されてしまうということになるでしょうか。

 遺留分を侵害されている法定相続人が、その内容に納得できない場合は、「遺留分減殺請求権」を行使して、共同相続人に対して遺留分を請求します。遺留分減殺請求権は、民法1031条にて認められている権利です。
 遺留分減殺請求権については後述致します。

遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

こんな時に遺留分の請求ができます

こんな時に遺留分が問題になる

遺言書の内容が以下のようなものだった場合、法定相続人は法的措置を採ることができます。

1)特定の団体などに全財産を寄付する

→「遺留分減殺請求(遺留分を請求する権利)」ができます。

2)愛人や非摘出子に全財産を譲る

遺留分減殺請求(遺留分を請求する権利)ができます。

3)親族でない事業の承継者や、障害を負った子供に全財産を譲る

遺留分減殺請求(遺留分を請求する権利)ができます。ただし、被相続人(亡くなった方)の存命中に、家庭裁判所で遺留分放棄を申し立て、それを裁判所が認めた場合を除きます。

4)子供の素行が悪いことを理由にして、特定の子供には財産を譲らない

遺留分減殺請求(遺留分を請求する権利)ができます。相続欠格や相続廃除、相続放棄の場合を除き、遺留分を侵害することはできません。

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遺留分の割合は?

遺留分の割合は?

遺留分の割合例

遺留分は基本的には1/2

➀配偶者や子供が相続するときは、相続人全体で遺産の1/2分を相続できます。例えば、相続財産が2億円、相続人を配偶者と子供2人としたとき、遺留分は1億円となり、配偶者がその半分の5000万円、子供はそれぞれ2500万円となります

②直系尊属のみが相続するときは、兄弟姉妹に遺留分は認められていないので、兄弟姉妹の取り分は0(ゼロ)になります。

遺留分を侵害されたら請求できる。

遺留分権利者に認められた遺留分請求の権利は「遺留分減殺請求権」と呼ばれ、一方的な意思表示で発生します。

相手方には内容証明郵便などで通知をするのが確実です。

すでに財産が渡っている場合には、遺留分の返還を請求し、相手方から取り戻す権利があります。請求を受けた側が相続人に対して弁償する場合は現物での変換が原則となっており、不動産などの分割しにくいものの場合には、金銭での弁償も認められています。

返還に応じない場合は、裁判所で調停をおこない、①割合的包括贈与、②特定遺贈、③全部包括遺贈の場合には「遺留分減殺請求による物件返還請求調停」などを申し立てます。

①割合的包括贈与=全財産に対する割合を指定して遺贈すること
 例)認知していない隠し子に全財産の3/4を譲る

②特定遺贈=特定の財産を指定して遺贈すること
 例)遺産の大部分となる特定の不動産を愛人に譲る

③全部包括遺贈=相続財産の全てを遺贈すること
 例)全財産を特定団体に譲る

この場合の申立人は遺留分権利者などで、申立先は相手側の住所地の裁判所、または、当事者が合意で決定した裁判所です。

遺留分減殺請求の必要書類

  1. 遺留分減殺による物件返還請求調停の申立書
  2. 被相続人(亡くなった方)の出生時から死亡時までの全戸籍謄本
  3. 相続人全員の戸籍謄本
  4. 被相続人(亡くなった方)の子供や孫(代襲者)で死亡している者がいる場合、その子供や孫の出生時から死亡時までの全戸籍謄本
  5. 不動産登記事項証明書
  6. 遺言書写し、または、遺言書の検認調書謄本の写し

遺留分には期限がある。

たとえ、法定相続人以外に全財産を譲るという遺言があったとしても、配偶者、子供・孫、親には遺留分を相続する権利があります。けれども、遺留分が認められているからといって、何もしなくても大丈夫というわけではありません。侵害した相続人への申し出が必要です。これを「遺留分減殺請求」と言います。

遺留分減殺請求には期限があり、相続開始(被相続人の死亡日)および遺留分の侵害を知った時点から1年以内におこなわれなければいけません。さらに、遺留分侵害を知った期日にかかわらず、相続開始から10年を過ぎると時効となります。

この期限を過ぎると権利は認められなくなるので、要注意です。

遺留分は放棄もできる

遺留分がある相続人が、故人の意志を尊重したいと考えたときには、その遺留分を放棄することも可能です。しかし、相続人の1人が放棄したからといって、他の遺留分権利者の取り分が増えるわけではありません。

被相続人の死亡後であれば、遺留分の放棄は自由におこなえます。生存中に放棄については、家庭裁判所の許可が必要となります。

遺留分の計算には生前贈与が含まれる

「遺留分減殺請求」とは、遺留分が侵害されたとき、遺言によって財産を取得した人や、贈与によって財産を取得した人に対して、遺留分権利者が「遺留分を返すように」請求することで、対象は
遺贈と贈与です。

遺留分は、相続開始時における被相続人(亡くなった方)の財産に、➀~➃の贈与などを加え、債務の全額を控除した額をもとに算出します。

➀相続開始前1年以内の贈与

②相続開始の1年以上前であっても、当事者が遺留分を侵害することを承知のうえでおこなった贈与

➂相続人に対しておこなった特別受益

➃不当な対価をもってした有償行為

※通常の相続税の計算とは異なります。
「(経営承継円滑法)」

遺留分について、小規模な会社に関しては「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑法)」が適用されます。これは2008(平成20)年成立、2015(平成27)年に改正された法律で、小規模会社のスムーズな事業承継を進めることを目的に、3つの制度が導入されました。その中の一つが遺留分に関するもので、遺留分規定において2つの特例が規定されています。

➀固定特例:経営者が後継者に生前贈与した株式などについて、評価額をあらかじめ固定できる
……特例を受けるには、推定相続人全員が合意し、それを文書化して家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

②除外特例:経営者が後継者に生前贈与した自社株式について、株式の分散を防ぐため、遺留分算定の基礎財産から除外できる

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