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遺産相続で「争続」に発展させないために対策すべきこと

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更新日:2024年01月29日
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相続をめぐって親族同士が争うのは決してめずらしいことではありません。「遺産争続」という言葉があるように、どんなに平和に過ごしてきた家庭でも相続争いは起こり得るものです。

とはいえ、遺産相続と聞くと、富裕層だけの問題だと思われるかもしれません。しかし、平成27年より相続税の基礎控除額が下がったことで、一般家庭でも相続税を納付するケースが増えました。

争いを起こさないためにも、相続に関する知識を深め事前対策をしておく必要があるのです。

本記事では、相続トラブルが「争続」に発展しないよう考えておくべき対策を紹介します。

相続トラブルはいつどんなタイミングで起きるのか

そもそも、相続トラブルはどのようなタイミングで起きるのか挙げていきましょう。

遺産分割協議

まず起きやすいタイミングは、「遺産分割協議」のときです。

遺産分割協議とは、相続が発生した際に相続人全員で誰がどの遺産を継ぐかを話し合い、合意する協議のこと。遺産分割協議は、原則としてすべての相続人が出席しなければなりません。

お互いの立場や被相続人との関係性が異なることから、話がまとまらず争いに発展することがあります。

これまで一度も連絡を取っていない相手と遺産の話し合いをする可能性もあるでしょう。

話し合いに対して相手が素直に応じてくれれば問題ありませんが、話すらできない状況では遺産分割調停を申立てる必要があるかもしれません。

遺言書の作成時

遺言書の作成時も、相続トラブルが起きやすいタイミングといえます。

被相続人と特定の相続人の仲が悪いケースが挙げられるでしょう。
不仲な相手には、自分の遺産を渡したくないというのは自然なことだと思います。

被相続人の希望にもよりますが、一定の要件を満たせば相続させたくない相手に対して相続の剥奪を行うことが可能です。

ただ、相続の剥奪を実行すると、法的に分配される遺留分すら効力を失います。権利を失った相続人と他の相続人でトラブルに発展する可能性があります。

相続トラブルは相続人にとって不利でしかない

相続トラブルは、相続人にとって不利でしかありません。

相続争いは、お金の分配方法や相続税に関するトラブルが大半でしょう。元の兄弟・姉妹関係、親族関係に戻ることはないかもしれません。最悪の場合、絶縁になってしまうこともあるのです。

さらに、相続争いが長期化するほど精神的に負担がかかり、遺産に手を付けないままでいると財産価値が下がる可能性もあるでしょう。財産価値によっては、税金の控除が受けられなくなるかもしれません。

控除に関していえば、遺産分割が決まらないままでいることで、相続税の配偶者控除も受けられなくなります。

基本的に、相続税の申告は、相続が開始されてから10ヶ月以内です。

相続トラブルが起きると、さまざまな手続きが遅れてしまうので、不利でしかありません。

相続トラブルに発展しないために何に気をつけたらいい?

では、相続トラブルに見舞われないために、気をつけるべきことを解説します。

法定相続分にとらわれないこと

まず、法定相続分にとらわれないようにしましょう。

法定相続分とは、民法で定められた相続の分割分です。
ここで「法律で相続分が決められているならトラブルになんてならないじゃん」と思われるかもしれません。

しかし、この法定相続分には、特定の事情がまったく反映されていないのです。

たとえば、相続人の中には、被相続人の面倒を見てきた方もいるでしょう。法定相続分には、そうした行為が一切反映されることがないため、長年世話をしてきた相続人にとっては納得できないのは当然です。

ほかにも「被相続人と同居してきた」「扶養して負担をしてきた」など、考慮すべき事情はいくつかあるでしょう。

まずは一旦、民法の法定相続分にとらわれずに、個人の状況を考慮することが重要です。
法定相続分で決めることで、不平等になることがあると理解しておくといいでしょう。

分配できない遺産はどうすればいいの?

相続する遺産が土地や建物の場合、「単純に真っ二つ!」という分け方はできません。

もっとも揉めるのはこのタイプで、残された遺産が自宅と現金という場合は注意が必要です。

こうした場合は「換価分割」「現物分割」「代償分割」を考えてみましょう。

換価分割(かんかぶんかつ)とは、不動産や建物を売却し、得られたお金を相続人の間で分配する方法のこと。現金化するには、相続人全員の合意を取ったうえで、売却金を分割しましょう。

代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、相続人のうち1人もしくは複数人で財産を現物で取得し、その価値分を相続人自らがお金に換算して残りの相続人に支払う方法のこと。

代償分割は、不動産だけでなく株式などでも利用できます。

ただし、現物を受け継いだ人は残りの相続人に現金で支払わなければならないため、一定のお金がなければこの方法は適用できません。

共有分割(きょうゆうぶんかつ)とは、遺産を複数の相続人で共有で相続する方法のこと。
不動産を現金化するわけでも、誰か一人が代表になって相続するわけでもありません。シンプルに、相続人全員で共有するという方法です。

共有分割をすれば、大体がスムーズにまとまるものです。
しかし、その遺産に手を加えようとする際は、相続人全員の同意がなければなりません。

たとえば、リフォームや売却をしたいという場合は、誰か一人が「No」と言えば進められないということです。

相続人が知っておきたい寄与分と特別受益

相続人になる方は、寄与分と特別受益と呼ばれる制度を理解しておきましょう。

寄与分とは、被相続人に対して無償で家業をサポートしてたり、献身的な療養介護をしていたりした場合に、貢献度に応じて多くの財産を受け取れる制度のこと。

たとえば、親と同居し介護に努めてきたり親が経営する仕事を手伝ったりした場合に発生します。

上乗せされる金額は法律上決まっていないので、相続人同士の話し合いで算出する必要があります。揉めるタイミングといえば、このときでしょう。

寄与分の算出方法としては、どれくらい貢献してきたのかを客観的に証明しなければなりません。具体的な金額や領収書、そのほか細かな証拠が必要です。

続いて、特別受益とは、特定の相続人だけが特別に得ていた利益のこと。たとえば、生前贈与や遺贈が含まれます。

相続人が特別受益を受け取っていた場合、相続が発生した際に一旦相続財産に戻す必要があります。

特別受益分が含まれた相続財産は、相続人全員で分配することになるでしょう。

寄与分は、法定相続分にプラスされる形となりますが、特別受益分に関しては差し引かれてしまうことを覚えておいてください。

ただ、特別受益については、被相続人の意思が含まれていることが多いもの。もし、遺言書によって特定の相続人に特別に資産を譲りたいとの意思が記載されていれば、差し戻されることはありません。

誰か一人が資産を独り占めしないよう対策が必要!

相続人の中には、財産を独り占めしようと考えている人もいるでしょう。

こうした行為は、相続における不平等をもたらし、相続トラブルに発展する可能性があります。
財産を使い込んでしまうとさすがに違法になってしまいますが、具体的な罰則規定がないので、相続人同士でチェックしなければなりません。

刑法は、親族間で起きた問題に関しては深く立ち入れないことがあります。それを示すのが「親族相盗例」です。親族間で起きた窃盗行為は免除の対象になると定めたものです。

では、財産の独り占めをどう調査するのかというと、代表的な例でいえば銀行口座の照会や市区町村にある名寄せ帳の閲覧です。

もし、特定の相続人が財産を引き出して使っているようなことがあれば、その証拠を持って民事上責任を問うことが可能です。

争いのきっかけを作らないために被相続人が注意すべきこと

争いのきっかけを作らないために被相続人が注意すべきことを紹介します。

生前に財産の分配方法を説明しておく

被相続人ができることは、生前に財産の分配方法をはっきり説明しておくことです。

財産の分け方や、その方法を選んだ理由についても意思表示しておきましょう。

被相続人が事前の配慮を行っておくことで、後の争いが起こる可能性は低くなるはずです。

遺言書を作成しておこう

被相続人は、自らの意思を記載した「遺言書」を作っておきましょう。

遺言書を残すことで、自身の死後に希望どおりに財産を処理できます。たとえ、多くの財産がなかったとしても、トラブルが起きないとは限りません。

また、遺言書は被相続人自ら作成してください。ご自身の意思を文章として残さないと、これもまたトラブルの原因になる可能性があります。

遺言書の作成時に必ず理解しておきたい遺留分

遺言書を書く際は、遺留分を考慮しておきましょう。

遺留分とは、相続人(兄弟姉妹は対象外)が必ず受け取れる財産のことです。通常、遺留分は法定相続分の半分と決められています。

遺留分が規定される理由は、被相続人が赤の他人に財産を譲ると遺言書に残してしまった場合、本来財産を譲り受けるはずだった相続人が不利になってしまうことを避けるためです。

遺留分は、遺言書によって侵害されることはありません。

もし、何らかの事情で遺留分が受け取れない場合、相続人は「遺留分減殺請求」を申し出ることが可能です。

認知症のリスクに備えて成年後見制度を理解しておく

被相続人が認知症になってしまった場合は、財産分与について正確な意思表示が難しくなるかもしれません。

こうしたリスクに備えて「成年後見制度」を利用しておくといいでしょう。

成年後見制度とは、正確な意思表示が難しくなってしまった方に代わって預貯金の管理や財産の処分を行ってもらえる制度のこと。

誰を代理人にするかは、法律上の制限はありません。身近な存在である配偶者や子どもを選ぶことがほとんどでしょう。ほかにも、弁護士や司法書士を選ぶこともできます。

ただ、遺言書に関しては先ほどお伝えしたように、本人が書く必要があります。
被相続人が意思表示できるうちに、遺言書を作成することをおすすめします。

まとめ:相続に関して心配ごとがあれば弁護士へ相談しよう

相続争いを避けるには、被相続人が正確な意思表示ができるうちに対策する必要があります。

もっとも有効なのは、遺言書の作成でしょう。
ただ、遺言書に関しては何をどう書けばいいのか、どこに保管すればいいのか分からないことがたくさんあるかと思います。

不安であれば、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、遺言書の作成や相続の手続きに関するアドバイスもくれるでしょう。

弁護士に相談する前に、弁護士費用が不安な方はベンナビ弁護士保険の利用を視野に入れてみましょう。

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