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検事から弁護士の道へ秋葉原の弁護士先生に検事の経験を聞いてみた

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更新日:2019年10月30日
検事から弁護士の道へ秋葉原の弁護士先生に検事の経験を聞いてみたのアイキャッチ

司法試験に受かると3つの道が選択できる、それは弁護士・裁判官・検事です。
昔は、裁判官や検事は志望したらなれる時代でしたが、現在は成績が良くないといけないみたいだ、今回の弁護士先生は、検事を7年経験し、弁護士を25年経験した先生にお時間をいただき、検事時代の話中心にお話を伺いました。

なぜ?検事を辞めて弁護士になったのか?をインタビュー

 

牛江法律事務所に関して

牛江法律事務所 牛江史彦弁護士

---事務所の特徴を教えてください

一人でやっているので、この事務所の特徴というのは、まさに私の個性っていうことでしょう。

---ずっと先生はお一人でやられている?

そうです。
たまに他の弁護士と組んで仕事をやることはありますけども、基本的には1人です。
なぜかというと、結局弁護士というのは一人一人個性があって、その弁護士の価値観とか手法がいろいろありますので、結局たくさん弁護士がいる事務所であっても、じゃあどの弁護士が担当するかっていうことがやっぱり影響が大きいわけです。
そうすると弁護士を選ぶっていうことについてだって、事務所で選ぶっていうよりはその弁護士個人で選ぶっていうことに基本的になりますので、そういう意味では日本に個人の事務所がいっぱいあるっていうのは、私はある意味では当たり前の姿かなと思っているわけです。

だから、そういう意味では、この事務所の特徴っていったら、まさに私の個性がどういうものであるかっていうことに尽きるわけです(笑)。

---そうすると、ここの事務所って何年目なんですか?

13年ぐらいです。
前は勤務弁護士で勤めていました。
検事を辞めてから司法研修所の同期・同クラスの人が勤めていた事務所に引っ張られて、そこに入って14年くらいいたんです。

---色は「検事経験がある個人事務所です」といったところもありますね。

一般的に言えば、そんな解説になっちゃいますよね。でも、現在は民事事件が大部分で少し刑事事件を丹とするというくらいです。
特に、それで特徴があるのかって言われるとアレですけどね。
自身は、一匹狼です、家内がそう言ってました。(笑)

---独立して事務所を設立しようと思ったキッカケを教えてください

やっぱりそれは、勤務弁護士いわゆるイソ弁って言いますけど、イソ弁をやっていて長くなり過ぎ、独立を意識しました。

---独立される時の苦労って何かあったりしますか?

結局、一番不安に思っていたのは仕事がないんじゃないかなっていうことでしたね。
今までは勤務弁護士で給料が半分、自分の個人の仕事が半分、大雑把に言えばですよ。
トータルでそれだけの収入があったとして、実際に独立しちゃえば給料部分なんて一切ないわけだから、仕事が果たしてどんどん来るのかなとか(笑)。

それは不安でしたけど、ただ実際上、仕事がなくて困ったっていうことはなかったですけどね。
結果として。
そこら辺はやっぱり弁護士じゃなくても一般的な自営業者っていうのは、誰でも仕事があるかないかとか考えますよね。
むしろ、あり過ぎるっていうことはないんだけど、ただ忙しいですね。(笑)

結局、需要はあるんです。
ただ、それに対してわれわれがどういうふうに対応できるかっていうのが問題です。
結構、若い先生の中でも、厳密なことを言って「これは弁護士がやるべきじゃない」みたいな線を引いちゃっている人もいますけどね。

要するに世の中の人がどういうふうに困っているのか、それをどうやって解決したらいいのかっていうレベルでものを考えればやることは結構あるから、今の時点で仕事がないっていうことはもちろんあり得ないわけですけど、最初は不安でした。

---秋葉原に事務所を置いた訳を教えてください

牛江法律事務所 牛江史彦弁護士

岩本町にも近いのですが、この事務所の場所は神田と秋葉原の中間で、自宅から通いやすい所と、裁判所から通いやすい所の両方の条件を満たせばいいということで決めました。
いろんな地方に行くのでも秋葉原は交通の要衝なので、さっき言ったように神田に出たら東京方面とか、新幹線に乗るのだって行けますし、それから刑事事件は最近はあまりやらないんですけど拘置所が小菅にありますよね?
小菅っていうのは北千住から1駅東武で行くということになりますので、北千住に出やすい場所っていうことになると、今はつくばエクスプレスができたから秋葉原から北千住ってすぐ出ますけど、私の自宅からも柏経由で来ていたので北千住は途中だったりします。

それと、別に趣味の問題では決めていないけど(笑)、そういう電気関係の工作が子どもの頃から趣味だったので。
それで子どもの頃から秋葉原に出入りしていましたから、そういう意味では秋葉原っていうのは土地勘のある所なんです。

---なるほど、趣味も両立していていいですね。

いやいや別に
もうそういう趣味をやる時間もありませんし、元気もだんだんなくなってきましたけどね。(笑)

 

牛江史彦弁護士先生に関して

牛江法律事務所 牛江史彦弁護士

---なぜ検事の道をまずは目指したのか教えてください

それは修習生の時に検察修習っていうのがあって、そこでは取り調べもやらせてくれるんですよね。
普通、裁判所での修習でも、別に法廷の真ん中に座って裁判官と同じことをやらせてくれるっていうことはあり得ないわけですよね。
でも検察修習っていうのは取り調べをやらせてくれますから、もちろん指導の検事は立ち会っていますけどね。

その時に、調書を読み聞かせて最後に被疑者の署名・指印をもらったりして、最後の締めで取り調べの検察官の名前はその指導する検事がちゃんと書いてハンコを押しているわけだから、形式的には検事が作った調書というかたちになっているけど、実際の取り調べを修習生がやっていたというのはあります。

そういう捜査によって真実を解明するっていうところに興味があり、体験して、これは本当にやりがいのある重要な仕事だなと思ったわけです。

---検事歴っていうのは先生はどれぐらいだったんですか?

7年です。
それ以上、どんどん10年、15年やっちゃったらもう潰しが利かなくなっちゃうというか(笑)、あんまり弁護士への切り替えが難しくなるでしょ?
辞め時というか、そういう意味ではね。

---もともと検事の辞め時を区切っていたんですか?

いや、辞める可能性はあるかなと思っていたけども、最初から7年で辞めるとか思って任官したわけではないですけどね。
だけど結果的にそうなっちゃったし、辞めようかなと思った頃には、やっぱり辞め時はどうなのかなっていうことは考えましたからね。

---検事を辞めて弁護士の道に変更した理由、ヤメ検っていわれるものは何でなのかなっていう。

一つは、当時はあんまりそこまで意識していたかどうか問題なんですけど、後から考えてみれば一番問題なのはやっぱり転勤なんですよ。
検事の場合は2~3年に1回ですから。
最初から予想はされていたんだけど、ちょっと転勤の負担が重過ぎるというか、それはありますよね。

---転勤というと7年だと2回はあったっていうことですよね?

そうです。実際は3回です。
新任が横浜だったし、東京か横浜かって関東地方をどこか希望して、「東京は希望者が多過ぎるから、じゃあ横浜だっていいでしょ」っていうことで。
それから岡山に行って、千葉に行って、秋田に行って、それで辞めちゃったんです。
東京には入ってはいないんだけど、ただ別に東京自体にそんなに興味があったわけではないし、時間が経てばどこかで東京に入れてもらうっていうことは当然あったでしょうけど。

公務員の規定ですから、検事の場合は調整手当っていうのがあって、やっぱり都会に行けば給料は高いんです(笑)。
調整手当っていうのが付いて、物価が高いっていうことで。
今でもそうだろうとは思いますけどね。

そういう細かい話で東京にいたいとかそういう話じゃないですけど、結局われわれが若い頃はやっぱり仕事のやりがいとかそういうことは一番考えているわけですし、そんな多少いる場所によって給料が細かくは違うけど(笑)大きくは違わないわけだから。

私は7年で辞めちゃったから子どもが転校になったことはないけど、上の子どもは幼稚園を3カ所行ってるんです(笑)。
そこがちょっとかわいそうだなっていう感じはありましたね。
負担を家族に掛けるでしょ。

裁判官だって、例えばこの4月にも異動があったんですけど、2月とか3月の時期になって、まだ裁判が続いている途中で裁判官が代わることがあるでしょ?
そうすると「異動があるんですか?」みたいな話は(笑)2月か3月にはしていますよね。
というのは手続きが切り替わって、いつ尋問やるとかそういうことについての進行のさせ方で審理に影響するから。
そういう話題が出て、そうすると2月の頃になったら、あるかないか裁判官はやっぱり言いますよ。
やっぱり知ってるんだなって思います。

---今、検事と弁護士だとどっちのほうが良かったとかあったりします?

良かったかっていうのは、弁護士になって後悔は全然してませんよねっていう。
それはそれでこの道に進んで良かったなというか、それは肯定的にも当然捉えているわけですよ。
だから辞めて失敗したとか、そんなふうに思っているはずがないんですけど(笑)。
自分で選んだ道だしね。

検事として経験したことは良かったなっていうふうに、またそれはそれとして思っているわけですよ。
ただ一生続けていたほうが良かったとは思わないわけです。

---どの辺りが経験になったっていうのってあったりしますか?

やっぱり、その取り調べを通じた犯罪捜査、そういった事実認定、どういう証拠によってどういう事実を認定するのかっていうところのセンスが養われたっていうことは言えると思います。

つまり裁判実務で一番難しいっていうのはやっぱり事実認定じゃないですか?
もちろん法律論っていうのは背後にあるんですけど、法律論は理屈だから、文献を調べても分からないところは判例を調べても判例は分かれていたりするので、それは理屈でいろいろ考えていけばいいわけで、その理屈に一番強いのは裁判官だから最終的には裁判所が判断することにはなるわけだけど。
ただ事実認定っていうのは一番勝敗を分けますよね?
事実が違ったら法律構成が違って結論が正反対になるわけだから。
どういう証拠でどういう事実を認定できるかっていうことについての能力をある程度高めるためのトレーニングを、実際上OJTでやらせてもらったっていうようなことでしょ。
結局、検事としての経験っていうのはね。

それともう一つは組織とは何かっていうか、そういう意味では、いわゆる会社のようなピラミッド組織とは違う、あるいは普通の官僚の組織とはちょっと違うんだけど、でも役所という組織がどういうものであるかっていう経験はさせてもらったということはあります。
それに役人というのはどういうセンスで生きているのかということも経験させてもらったっていうわけです(笑)。

検察官はやっぱり独任官庁といわれているので、一般的な公務員のガチガチにピラミッドで固まったものとはちょっとは違うんですね。法律上は独立して仕事ができるけれど、そうはいっても組織ですからね。
つまり起訴して起訴自体に通常は上司の決裁をもらうわけですよ。
ハンコをもらって、「これ起訴していいですね」って決裁印をもらって起訴するけど、法的形式としてはそんな決裁印なんかなくたって有効なんです。
そういう意味では独任官庁という意味で独立した権限は持っているけど、実際上組織の一員として上司の決済を受ける立場です。

ただ、単に上司の指示を受けて動くと言うことと微妙に違うというのは、主任検事が事件のことを一番よく知っていて、決裁は受けるけども「自分がこの事件をこう捜査して、こういう状況になって、こういう証拠になっているからこういうふうに処理しますよ」っていうことについてただ了解を取るだけで、一番よく知っている主任検事の意見が通って当たり前の話っていうシステムになっていることです。
だから決裁制度っていうのは、やっぱりそういう上司の次席検事やら検事正が先輩として一種のアドバイスをするっていうレベルだろうと、決して「この起訴は駄目よ」っていうふうに抑え込むことができるかできないかっていうと、まず難しいだろうなと、そういうレベルの話なんです。

だから私が検察官として経験した時だって、「じゃあこの事件こう起訴します!」と言って、例えば次席検事にまず持って行って一応了解を取ったと、そしたら検事正が「なんでこれ起訴するの? そんなのおかしいじゃないの」って言ったときに「違いますよ。これはこういう事件でこういう証拠とこういう証拠があって、この実態から考えたらこれ起訴しないとおかしいでしょ?」と主任検事として意見を言って実際に通しているわけです。
そのケースでは私と次席検事の意見が一致していて、検事正だけがちょこっと何か文句を言ったから、「いや、それは違いますよ」って言って(笑)最終的には了解してもらって起訴したというものでした。
3人共犯の輪姦の事件ですけど、1人だけ実行行為、つまり姦淫行為をしなかった人がいて、それを起訴すべきかどうかっていうことで意見がちょっと検事正と割れたのですが、次席検事も私と同じ意見で、結局主任である私の意見が通りましたよ。
一番事件をよく知っているから、それは当たり前ですよね。
それで実際上、姦淫行為をしてなかった人は執行猶予になったけど、全員間違いなく有罪になりましたからね。
だから起訴の間違いということはたぶんないです。

そういう組織として動いているところもあるけれども、検察庁という所はやっぱりそういう主任検事の力が本来は強いんだというところですけどね。

 

お仕事に関して

牛江法律事務所 牛江史彦弁護士

---検事からというと、刑事事件とか多かったりするのですか?

辞めた頃は多少は余計に今よりはあったと思うんですけど、今は刑事事件は本当に時々っていうぐらいです。
損害賠償請求がありますね。

会社関係もあるし、個人もあるし、私の場合は会社が極端に多いとも言えないですよね。
結構個人も多いですよねっていう。
比率から言うと、今は半々ぐらいで、もちろん家事事件もあったりします。
今、家事事件であるのは相続事件もついこの間1件終わったけれども、子どもの認知とか相談を受けているのはあるし、さっきやっていたのは(笑)離婚のアレだし離婚の訴訟も1件やっていて、家事事件はありますよ。
ただ家事事件はポツポツありますよっていうぐらいですよね。

相続・離婚っていうのは一般的な事件でよくある話なので、そういうふうに括れるというよりも、やっぱり損害賠償請求的な紛争はいろんな雑多な種類がありますので、そういうふうに一括りにできないような事件は幾つも抱えています。

---先生のお仕事の中で大切にしていることお聞かせいただければ

それはやっぱり依頼者とのコミュニケーションです。

一体どういう希望で何をどうしたいのかっていうこととか、あるいは逆にこちらが説明しなくちゃいけないこと、「この裁判っていうのは今こういったような問題で争いになっているから、ここをこういうふうに立証できれば勝つけど、これが立証できなければ負けてしまいますよ」とか、そういう裁判をやっているとしたら基本的なことを理解してもらわないと困るわけですよ。
その理解力が足りなければやっぱり裁判は勝ちにくくなっちゃうよね。
何がどういうふうに問題になっているのかを理解してもらった上で、ご本人も対応してもらわないといけないと。

そういう意味で、結局われわれの仕事はお医者さんと比較されるけれども、説明するっていうか、われわれ専門家として裁判とか紛争処理の方法とか、そういうものについての説明をできるだけ多くして分かってもらうというところに注意を払っているつもりではいるんだけど、ただ結局問題なのは、こちらの説明していることをどこまで理解してもらっているかっていうことです。

---結構難しいですよね。

逆に跳ね返って来ないというか、反応がない場合に分かりづらいっていうことがあるので、むしろ分からなかったら分からないで、どんどん質問してもらいたいんですけど。何が分からないかも分からない人には、そうおしゃっていだだければ、一から説明をします。

なんか分かんないなって思いながら質問もできないというようなことでは困るので。
分からないなりに「ここはこういうふうに分からない」とか「今の説明、全然分かりませんね」とかいうことをやっぱりおっしゃっていただかないと困るなとは思います。
特に隠し立てするようなことは何もないので、聞かれたことについては私の分かる範囲ではほとんど答えるようにしています。
だから説明をきちんとしない弁護士は駄目だろうと私は思っています。

---お仕事の進め方っていうのだと、やはり質問してもらうようなコミュニケーションをどんどん取っていくかたちですか?

それはそうです。
こちらももちろん事案の中身は知らなくちゃいけないから、まず相談に来られた時に一体何があるのかなっていうのがあって、事実をよく知らないといけないからね。

逆にある程度事実が分かった段階で「法的にはこうですよ」とか「こういう証拠が足りないからどうだ」とか、そういう説明も当然しなくちゃいけないから、まさに行ったり来たりのコミュニケーションが大事になってくるわけです。
それが人によっては「弁護士が怖くて質問もできませんでした」とかいうことを言っている人がいたから(笑)、「いや、それじゃ駄目でしょ」と、だからそういうことで弁護士を取り換えたいって希望した人も過去にはありましたよ。
それはちょっとコミュニケーションが悪いんじゃないのと言いましたが。

もちろん家事の相続事件だったって何だってそれは同じことだと思います。
要するに、どういう財産がどれだけ欲しいのかということについては一番大事ですよね?
相続事件を進めていく中で、例えば調停なんかだって裁判所から見れば、相続人が何人かいたら「じゃあ、あなた方は一体何が欲しいんですか?」「どれだけ欲しいんですか?」と聞いてきますし、分け方の問題になるわけだから、それはちゃんと希望を出さなくちゃしょうがないことです。

---先生の中で印象に残る相続の事案を差し支えなければ教えてください

弁護士になりたての頃の事件でも、複雑な事件っていうのはありました。
ちょうど12月のクリスマスぐらいにギリギリ調停が成立できたというようなのが昔ありましたけど。
結局、不動産が幾つかあったりして、共有持分が建物とか土地でバラバラにあって非常に権利関係が複雑に入り組んでいて、しかも相続人の数が少なくはないというか数人いて、それぞれがまた意見がいろいろあったりして非常に複雑なケースがありました。
それが年末になんとかまとまったっていうのが印象に残っています。

それがなぜ最終的にまとまったかというと、やっぱり裁判所が良かったと私は思いますよね。
普通の調停委員がやっていたんではとてもまとまらないから裁判官が出てきて整理したんですけど、その裁判官が非常に優秀な人でした。

---やっぱり、そういった整理能力っていうところも、裁判所であったりとか調停委員に整理能力のある方が付けば処理も早くなる?

はい、変わります。
家庭裁判所には調停委員は当然いますけど、調停委員の能力っていうのは結構大事なんです。
だから、弁護士が各当事者の代理人になっているときに調停委員の仕切り方が良くなければ「もう裁判官に出てきてもらったほうがいいですね」ってハッキリ私だったら言っちゃうかもしれないです。

---それはいいですね。

それぐらいのことは言っちゃうかもしれないです。
ただ、それより前の段階では、結局、弁護士ではない調停委員が付いたときは、私は弁護士ですから弁護士としての考えで「いや、これはこういう方向で、こういう話をしていくべきではありませんか?」とかいうことは私だったらストレートに結構言っちゃいますよね。

専門的な仕事をしていれば、相手に向かってぶつかって行ったときに、相手がどの程度の力量の人かっていうのは分かっちゃいますよ。

---それは分かります(笑)。

そうすると例えば調停委員と話をするときだって、相手の調停委員がある程度物が分かった人なら「じゃあ、こういう方向でお願いします」とかいろいろやりとりしますが、ちょっとこれは困ったなっていう場合だってなくはないですよ。
そしたら「いや、こちらの意見としては、こういうふうにやってもらわないと困りますよ」とか結構強く言っちゃう場合もあるわけです。

---でもユーザーからするとやっぱり分からない、弁護士先生にお願いするところでも、ユーザーってちょっとは知りたいとか「なんでこれを言ってくれないの!」ってあったりするので、インタビューを通じてこういったところの情報発信ができればなっていうのもあって聞いている感じですね。

だから、われわれが専門家の立場で「これが重要だから、これはこうしていかなきゃいけない」と思っていることと、依頼者が関心を持っていて「これはどうしても自分は言いたい」こととかにズレが生じることは当然ありますよ。
そのことについてズレがあったから全くわれわれが無視をするかっていうんじゃなくて、結局、紛争解決っていうのは本人の納得っていうことも大事なので、自分の意見も言わないで最終的な結論が出てきちゃったら、それは納得できないわけですよ。

これだけ自分の意見をぶつけてみたけども、それについてはやっぱり相手が応じなくて実際上、法律的にも無理だったから跳ね返されちゃったんですよって、それはそれでしょうがないわけで、やってもみないことについて無理やり抑え付けて引っ込めていたら、やっぱり不本意な結果が出ましたっていうんじゃ、それは駄目なんです。

結局、法律論として問題が多少あるとしても、言いたいことは多少言わなくちゃいけないことだって起こりますよ。
ただ、われわれは法律家だし、裁判所は法的な手続で舞台を設定しているものですから、その舞台にそぐわないものは、いくらたくさんぶつけてみても意味はないっていうことも事実なんですよ。

そこら辺の兼ね合いをどういうふうにするのか。
だから100パーセント排除しちゃうわけじゃないけど、かといって、これはもう無理ですっていう明白なものはきちんと説明して、それは遠慮してもらうっていうこともある程度はしなくちゃいけない。
かといって全部削除しちゃったら駄目で、「ここまでは、ちょっと言ってもらいましょうよ」とか、納得のためには「これはぶつけてみる必要はありますね」っていう、そういう、さじ加減は当然必要なわけです。
そうしないと人間は納得できないと思ってます。

---そうですね。

結局、裁判とか調停という手続は納得のための手続だっていう要素があるわけで、完全にそれを抑え込んじゃうわけにはいかないけど、かといって裁判所が聞く耳を全く持たないような内容、つまり感情論的なものをあんまりぶつけ過ぎてもうまく行かないわけです。

そこら辺をわれわれ代理人がうまく説明して「わかりました」って言って引っ込めるものは引っ込めてもらって、そうじゃないところについてはなるべく裁判所に分かりやすいかたちで伝えていくと、そういう意味ではわれわれは一種の通訳みたいな立場になります。つまり裁判所に分かる言葉で一般の人の言い分を伝える、それはある意味では法的に組み立てていけばこうなるんですよっていうふうに持っていくっていう、そういう一種の通訳者みたいな、、また間を取り持つみたいなところは出てくるわけです。

 

最後に

牛江法律事務所 牛江史彦弁護士

---先生は弁護士歴27年、振り返って見てどうですか?検事も7年ということで法曹業界に34年。

振り返ると、まず時間があっという間に経ったなっていうのは一つ言えます。
若手若手と思っていたら(笑)、あっという間に年金をもらえるような年になっちゃったねと。
目先の仕事に追われていたら時間もあっという間に経っちゃうっていうのが率直なところです。

あっという間に年を取って、そういう昔の子どもの時に聞いた浦島太郎のような話が大人になってこういうことだったなって思うのがある程度の歳になったときの感慨なんですよ。

---依頼者とか相談者の方が見られると思います、メッセージをください。

弁護士がたくさんいて、みなさんが弁護士に依頼するときにどういう弁護士を選ぶべきなのかっていうところと、実際に弁護士に頼んだときにどういうふうに弁護士と話しをするのか、付き合うのか、弁護士をどういう風に使うのかっていうか(笑)、この2点が問題なんだと思うんです。

それをうまくやってほしいなっていうのが、弁護士の立場に立った側からの希望です。
つまり弁護士の選び方が悪い人がいて、自分の性に合わない弁護士を選んでしまってうまくいかなかったりする人がいるっていうことと、もう一つは弁護士の使い方が悪くて、せっかく弁護士を頼んだのにもうちょっとうまく弁護士を使ったらどうなのと、そういう弁護士を使えないタイプの人がいるのかなと、その2点に気を付けてもらえればいいのかなっていうのが弁護士の側に立った私の意見です。

これは、結局弁護所とのコミュニケーションの問題になります。弁護士は、何ができて何ができないかを対話の中でよく確認し、依頼者として本当にやってもらいたいことをしっかりやってもらうことが重要です。それには依頼者と弁護士の緊密な協力関係が必要ですので、その二人三脚がうまくできるかどうかが問題だと思います。

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牛江 史彦 (東京弁護士会所属 / 牛江法律事務所)

気軽に相談できる弁護士として秋葉原(岩本町)の駅で弁護士事務所を構えております。 検事の経験も含めて法律関係に34年間身を置いております、街の医者になれるように日々依頼者と向き合っております。 相続は親族の紛争が中心です、まずはご自身の整理もかねて気にせずご相談ください。

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相続相談弁護士ガイド 編集部

相続問題に関することを専門家と連携しながら情報発信しております。 悩んだり、わからないことがあるときは参考にしてください。 どーしてもわからない場合は、一度弁護士に相談するのもいかがでしょうか。

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