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【弁護士監修】相続人が疎遠で行方不明。余命少ない寝たきりの叔父の口座から入院費等を勝手に払うと問題なのか?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2021年03月10日
相続人が疎遠で行方不明。余命少ない寝たきりの叔父の口座から入院費等を勝手に払うと問題なのか?のアイキャッチ

叔父が癌を患い、余命幾ばくもありません。叔父は妻とは離別し、子供が2人いますが、疎遠でどこに住んでいるのか分かりません。

現在、身近な親類は甥である私しかいなく、出来るだけの面倒は見ていますが、私には経済的な余裕はなく、病院の入院費用は叔父から預かったお金を充てています。しかしそのお金もそろそろ底を着きそうで、葬式代の用意もありません。勝手に叔父の口座からお金を引き出したら今後問題になりますか?

また、亡くなったら口座が凍結されて、相続人でないと引き出せなくなるようですが、それはすぐでしょうか。叔父は遺言も準備しないまま、ほぼ寝たきり状態で、意思の疎通も図れません。医者などの証人がいれば引き出しても大丈夫ですか?とても困っています。

こういったご相談が寄せられました。どのように対処したら良いのでしょうか?

口座凍結について

銀行や郵便局などの金融機関は、口座名義人が亡くなったことを知れば口座凍結の手続きをし、その口座からの引き出しが出来なくなります。しかし、その亡くなったことを金融機関が直ちに知るとは限りません。例えば、非常に著名な人物が亡くなれば新聞やニュースで知ることは可能でしょうが、一市民の死亡となれば事情は違ってくるでしょう。

地方によっては、地元新聞などに、町民などの死亡記事を載せる風習があったり、また狭い地域では地元密着型の金融機関なども多く、殆どの住民の動向を把握していることも少なくありません。そしてもちろん守秘義務はありますが、小さな町役場などであれば、誰かしら繋がりがあるとも限らず、そのような経緯で金融機関が死亡を知ることになる可能性もあるのです。

これらはこれまで実際にあったケースでありますが、いずれもおいても、死亡以降、故人の口座から金銭を引き出すことは、後の相続争いの種にもなりかねない事から、極力避けるべき行為であることに違いはありません。

しかし、ご相談者の方のような事情の場合、引き出した金額とその使途について明確な領収書やレシートなどがあり、確実に証明ができるのであれば、以降の諍いを招くことはないかと思料します。なおその上での注意点ですが、あまりに高額な葬儀や戒名などで多くの金銭を費消したと、後に相続人から賠償を求められるケースもありますので、その故人の遺産に合わせて何事も進めていかれることをお勧めします。

相続人調査

現時点で、相続人である子供たちの行方が不明とのことですが、叔父様の戸籍を取得し、相続人予定者の現時点の所在を調べることが可能です。

しかし、昨今、個人情報保護に関する法律が整備されている中で「誰でも戸籍謄本等の交付請求ができる」という従来の戸籍の公開原則は改められ、第三者が戸籍謄本等の交付請求ができることは制限されています。そして、戸籍を閲覧・請求する場合は本人確認などが法律上のルールになりました。

なお、代理人や使いのものが変わりに請求することは可能ですが、その際には本人からの委任状が必要となるため、現在意思の疎通を図ることが困難な状況にある叔父様からの委任状の取得は難しいと思料します。

他人の戸籍の証明書を取得するには、自分の権利を行使したり、自分の義務を履行したりするために戸籍の証明書が必要な場合や、国、都道府県、市区町村での手続に戸籍の証明書が必要な場合など、正当な理由がある場合に限ります。そして、そのような正当な理由があること0を、請求書に詳しく記載する必要があり、その判断は各地方自治体に委ねられます。そのため、現時点で相談者の方がこれらの申請を行っても確実に叔父様の戸籍の閲覧や取得が出来るとは限りません。

成年後見制度

成年後見制度とは

認知症などにより、判断能力が不十分になった当事者に代わり、成年後見人が財産の管理や介護サービスの契約等を行うことができる制度です。

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。

任意後見制度

元気なうちに本人が後見人を選び、財産の管理の意向をあらかじめ決めることができる制度

法定後見制度

判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所に申し立てをし、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度

叔父様の場合は現在の症状から「法定後見制度」を進めることになりますが、先に記したとおり親族等が家庭裁判所に後見人等の選任を申立て、家庭裁判所が後見人等を選任することから、多少の費用やまた選任までの期間も数ヶ月を要すことになるので、現時点ではご相談者の希望には添えない制度と思料します。

まとめ

相談者は現時点では将来の相続人ではありません(仮に、子供たちが相続放棄をした場合、甥にあたる相談者が法定相続人(代襲)となる場合がある)。

なんとか叔父様の力になりたいとお考えの気持ちは十分に考慮しますが、費用などが相談者の生活を脅かす状況であるならば、無理をせず、まずは管轄の役所やまたは病院の庶務課などに相談し、ケースワーカーを紹介してもらうなどの方法を検討して下さい。

よりよい結果が得られることを願っています。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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