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ドイツの弁護士事務所と提携している女性弁護士に会いに行ってみた

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更新日:2019年07月26日
ドイツの弁護士事務所と提携している女性弁護士に会いに行ってみたのアイキャッチ


今回の先生は東大在学中に司法試験に合格し、ドイツ留学からドイツの弁護士事務所に勤務し、日本とドイツのパイプ役となった女性弁護士。そんな先生に会いに虎ノ門の事務所に行ってみた。

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

いつでもポジティブで笑顔を絶やさず38年間弁護士をやり山梨学院大学の教授も務める先生に弁護士になる生い立ちと海外が絡む相続事案に関して注意すべき点を聞いてみました。

■吉岡・辻総合法律事務所に関して

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

---吉岡・辻総合法律事務所の歴史に関して

吉岡桂輔弁護士と私の2人がパートナーとなって作っている法律事務所ですが、吉岡先生も私も、最初に登録した時は山本栄則先生の事務所でした。吉岡先生はいわば兄弟子です。
私が1979年に山本事務所に入ったときには、吉岡先生はすでに独立して、個人の事務所を構えていました。

その後、ドイツ留学やら産休やらで休みながらも、20年以上山本事務所に所属しておりましたが、山本先生が2001年に亡くなりまして、そこで独立して1人で事務所を作ってもよかったんですけど、吉岡先生の所に私が転がり込んで「吉岡・辻総合法律事務所」というのを2001年に作りました。
そこからもう15年になります。
最初は神田に事務所があって、その後、2002年に山本事務所のあった虎ノ門のほうに戻って来まして、そのあとはずっとこちらです。

---弁護士歴はどれくらいですか?

1979年の登録ですから、もうすぐ40年です(笑)。
今は2017年ですから、38年になり、大ベテランです。
長老と呼ばれています(笑)。

「山本栄則法律事務所」という、弁護士会でも有名な事務所で働いていました。
山本先生は巨人軍の顧問をされていて、「江川問題」とか「王選手メダル事件」とか、皆さん知らないかな?(笑)。

山本事務所っていうのは、結構楽しかったですよ(笑)。いろんな種類の事件の勉強ができましたし。

その兄弟子のところに転がり込んで、一緒に事務所を作ったということになります。
だから弁護士のスタイルとしては、山本先生の流儀というのか、それに似ているので、やりやすいというところがあるんですけどね。

---流儀ってどんな感じなんですか?、仕事の進め方とかですか?

どんな弁護士を目指すかっていうのとも絡むんですが、「依頼者第一」です。
都民ファーストではなく、依頼者ファーストですかね(笑)。
結局、お金を払ってくれるのは依頼者ですから、依頼者のためになること、だから自分の名誉とか裁判所に対してどんなに受けがいいかとか、そういうようなことよりは、とにかく「依頼者の満足のためにというのを第一に考える」というやり方です。

そこから先は、吉岡先生と私とでは、それぞれのスタイルの違いがあるかもしれませんが、依頼者第一と言う点では、変わらないと思います。

---全てはお客様のために

そういうことになります。
裁判官ではないので批判するのではなく、その人のために何ができるかを考えるということ、1パーセントでも可能性があればそれに賭けるっていうか、そういうような方針でやっています。
だから、「これは無理ですよ」、「それは勝ち目がありませんね」ってお断りする訳ではなくて、私が弁護士としてできることをいくつかご紹介して、その中から選んでいただくようにしています。本当に1回言ったことがあるんですけど、「もうこれ蜘蛛の糸一本分ぐらいの可能性しかありませんよ」、「それでもいいですか?」って、「でも最大の努力はします」と。

---現実の状況をちゃんと伝えて、お客様がOKであれば一緒に進めて行くと

そうです。「その代わり、着手金高いですよ」と(笑)、「成功報酬はほとんど要りません」という感じで、そういう方針でやっています。
それから、ゆっくりと、じっくりと完璧なものを出すよりは、拙速でもいいからとにかく早くやるというのを山本先生も同じですけども、スピード重視で解決していきます。

---吉岡・辻総合法律事務所は事案を分けているのですか?

別々です。
それぞれ事件を受けて、それぞれが顧問会社を持っていてという感じで、時々、大きな事件が来ると一緒にやりましょうということで、その都度契約して、これは一緒にしますということでやっています。

---辻先生の辻グループのほうの事案の構成比率っていうのは?

そんな構成比率っていうほどでもないんですけども、割とやはり多いのが家族法で、離婚とか相続とかが半分ぐらいで、残りは取引関係です。
取引関係は銀行取引とか不動産など、労働事件、著作権とか商標とかの知財事件もあります。
なんでも屋です(笑)。

---何か専門に特化しない意識をしているのですか?

特に専門を掲げている訳ではありません。
どれが得意ということもなく、他の人と比べて変わっているとしたら外国法、特にドイツ法ということになるかと思います。
だから、新しい事件が来るたびに、未経験の分野のことがあれば、判例や文献を調べたり、専門家のレクチャーを受けたりしながら、勉強して引き受けています。弁護士経験38年にもなるのに、未だに、発展途上(笑)。いつまでたっても、経験とカンだけで事件がこなせるようにはならないんです。

■辻 千晶弁護士先生に関して

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

---なぜ弁護士を目指そうと思ったのか?

本当のことを言いますと、弁護士という職業は大学に入る時は知らなかったんです(笑)。

---身近に居なかったということですか?

居なかったんです。
私の父が海外との取引の仕事をしていまして、よく海外に出張で行っていたんですけども、どうも「外交官に碌な人が居ないから、外交官をやれ」というふうに言われたんです。
それで、外交官になるには東大法学部を出て、外交官試験を受けてっていうことだったので、「じゃあ、そうしよう」って思って、外交官を目指して東大法学部に入ったんです。
そうしたら、なんか皆さん司法試験とか言っていて、司法試験ってなんだろうって知らなかったんですけど、弁護士とか裁判官とか、そういうのがあるなっていうことを知ったんです。

それと、外交官試験は英語ができなければいけないのに、私はあんまり得意ではなかったので、「じゃあ、司法試験のほうに行こう」ということで司法試験のほうに途中から、大学に入ってみんなが受けるから私も受けてみようかということで、そういうふうになったんです。
特に司法試験、弁護士を目指して東大法学部に入ったという訳ではないんです。

---親に路線が違うなどで怒られたりしなかったんですか?

それは全然言われませんでした(笑)。

---弁護士の魅力に惹かれたっていうのはあったんですか?

それはあります。
当時、まだ男女機会均等法ができていない時代で、東大法学部でも、女性には企業案内が全然も来ないんです。男子学生には、企業からの就職のパンフレットが段ボール箱一杯になるほど、たくさん来るんですけど。とにかく凄い女性差別で、名前があまり女性的ではなかったからか、私には間違って数社からは来たのですが、電話して女性だってわかるとすぐ全部お断りっていう感じだったんです。
そうなると、公務員とか司法試験しかないなと。最終的には公務員試験と司法試験と両方受かったのですが、女性が一生続けられる仕事ということで、司法試験のほうを選んだということになります。

---今は、女性はもう当たり前に働く世の中なのに

その働く世の中であることは確かだったんですけども、就職の時にその均等法の前ですから、もう全然企業のほうが相手にしていなかったという状態ですね。
まぁ、弁護士を目指したっていうより、とにかく司法試験を目指して、そこから先はどうするかっていうのはあまり考えていなかったんですけども、仕事も結婚も、出産も育児も全部やりたかったので、弁護士のほうが転勤もないし楽だなということで、最終的には弁護士になったということですね。

---弁護士を目指す時に苦労した話とかってありますか?

辛かった事はなかったですね。
割と東大の場合には仲間でグループを作って勉強をするので、その勉強自体は1年ぐらいでしたので楽しかったですよね。本当は辛かったのかもしれませんが、受かってしまえば、きれいさっぱり忘れてしまいます。

---そんなに勉強は苦ではなかったという感じなんですか?

そうです。
受験時代の話をしますと、私の場合、大学の授業が凄くよかったものですから、授業中心に、ざっと予習して、授業に全部出て完璧にノートを取って、しっかり復習して定期試験を受ければよい、その延長線上に司法試験があったみたいな感じでした。

文献購読や判例研究のゼミに参加したり、自分で図書館で借りて大部の名著を読んでみたり、試験勉強に直接関係のない寄り道もかなりやりました。

授業なんか出なくても、自分で勉強してさっさと受かってしまう要領の良い人たちも、結構東大には多かったんですけどね。私は、徹底的に授業派でした。
特に予備校とか、答案練習会とか一切行かないで大学の授業だけです。
安上りですよね(笑)。親孝行ですよね(笑)。

---先生には簡単すぎましたかね(笑)

いえいえ、一回落ちていますので(笑)。
4年生で受けた時に、5月に短答があって7月に論文を受けるんですけども、その時はまだ4年生の授業が全部終わっていない訳で、だから落ちたと思っている訳です(笑)。
5年生で受けた時は、4年の課程を修了して司法試験の科目を全部勉強して期末試験も受けたので、その延長だから受かったと、それで自分では5年生で受かったと思ってます。

---先生はネット集客とかかなり昔に取り入れていたって言ってた話をお聞かせ願えませんか?

そもそもパソコンに興味を持ったのは、1972年の大学1年のときです。
教養科目で数学というのがあって、中身はプログラミング。その基礎を大学1年生で習ったので、「ああ、そうか、こうやってコンピューターって動くんだな」っていうことがわかって、凄くおもしろかったんです。
あの時は、パンチカードに入れて、そのカードでバーッと読み込ませる、そういう時代です。プログラム言語は「FORTRAN」でした。
それでやって、「ああ、そういうものなのか」って思って、ちょっとコンピューターに興味が出てきました。

それからパソコン通信が始まった時代、山本事務所に居るときに、その山本事務所のお客さんの某プロバイダーがパソコン通信で法律相談をしましょうと、ネットで相談をするというのを立ち上げたところがありました。その会社のページ上に、「こういう弁護士がお答えします」と記載して、そこで登録したのですが、登録した段階で別の弁護士から、「非弁提携」だということで、懲戒請求がされました(笑)。弁護士以外の者と提携をし法律相談業務を行うのはけしからんという訳です。
悪徳金融業者の手先、反社会勢力の構成員みたいな 言われ方ですよね(笑)。

今では当たり前になっていますが、E-メールを使った法律相談とか、弁護士のネット検索とか、コンピューターを弁護士業務に活かしたいと考えていた若い弁護士さん達が当時もいました。なのに、山本先生みたいなベテラン弁護士に先を越されてしまったので、やっかみ半分で、非弁提携だとか言って妨害したのだと思います。非弁提携という類型で懲戒申し立てがされると、非弁提携は反社会勢力との関係というふうに皆さん思いますので、「山本先生は反社会勢力と提携している」という噂になってしまう訳です。
そういう妨害があったり、私がコンピューターに慣れていなかったりで、ネット相談があってもそれにすぐに答えることができず、結局、来てくださいということになって、事務所に来てもらって話をしました。

---最初の取っ掛かりはインターネットからというところだったんですよね。

同じ頃に今度は東京弁護士会のほうでネット検索を始めたんです。
今は日弁連が全国的に「ひまわりサーチ」をやっていますけど、その時はまだ全然そういうのはなくて、東京だけで試験的に始めたようです。名前と事務所住所、電話番号だけは全員掲載されるのですが、得意分野とか、写真とかその他の情報は、希望した人だけ。しかも,そうした情報を掲載するためには、保険にも入らなければならず、かなりハードルが高かったんです。

その時に出したのが私の写真です。
その頃は、「弁護士事務所は一見さんお断り」の時代ですから、「ネット経由で来る人なんて、ろくな人が居ない」っていうふうに先輩の弁護士とかも思っていて、「顔なんかさらすのはとんでもない」という感じで、得意分野も写真の登録も、皆さんしていないんです。だからほとんど、住所と電話番号だけ、つまり弁護士名簿と一緒なんです。
それ以外のものは一切情報を出さなかったんですけど、私は「~が得意です」、「~があります」ということで、メールアドレスも載せるし、写真館で撮った「気合いの入った」顔写真を載せて登録したんです。
そこからの反響が凄かったんです。

---先生から見る昔のネットの集客というのは、効果が良かった?

そうなんですよ。まず、お金持ちなんです(笑)。
当時パソコンは20万、30万していましたから、パソコンが買えるぐらいお金持ちなんです(笑)。
それからネットができるということは、相当の知識がないとできないということで、ネットで検索して来る人たちというのはパソコンメーカー、電機メーカーの方たちとか、大学の教授、研究者とか、ネット関係のベンチャー企業の経営者とか、そういう人たちが多かったです。

例えば、相談者ご本人の自宅不動産の問題、近所の通行問題、親御さんの農地の問題、離婚問題でも、その問題につよい弁護士をネットで探そうと思うと、東京しかないものですから、皆さんどんな地方でも東京のサイトを検索して来る訳です。なので、全国から相談が来て、北海道、山形、新潟、富山など、結構来ました。

それに、当時コンピューターのできる人は、ある程度のスキルもあって、資料もきちっと揃えて、メールで大体の要点を全部書いて送ってくれるという感じなので、凄くやりやすかったです。

---先生自身の中で大切にしていることとか、気を付けていること、大切にしていることってあったりしますか?

「100パーセント依頼者を信じる」ということです。

---でも、難しくないですか?

難しいですよね(笑)。そんなことホントにあるのかしら、と思うこともたまにありますよ。
でも、絶対に「そんなこと ウソでしょう」とか「信じられない」とか言いません。
「私は信じますけど、裁判官は信じないかもしれませんね」とか「証拠が少ないので、証明が難しいですね」とかいうようにしています。

もう一つは先ほど言った「スピード」です。先日も「当社にとって、非常に有害な情報がネットに出ている。一刻も早く削除させて欲しい」という依頼があり、事情の聞き取りをして、削除請求の法律的な根拠やどこにどのような内容証明を出せば効果的かなど大急ぎで検討して、最初の相談から48時間後に削除させた、という経験があります。

多少雑でも、確実なところを押さえて、迅速な対応をするようにしています。この件も、初めての分野で、ちょうど法科大学院にいたこともあり、図書館で調べまくり、いろんな先生に聞きまくって、2時間で一応の意見書をまとめあげ、いくつかの解決策の提示ができました。体力的には、「火事場の馬鹿力」みたいな馬力はありますよ(笑)

---仕事を考えない時ってあります?

スポーツをやっているときには、仕事のことは頭の中から「強制排除」です。テニスで、ボールを追っている間って絶対に他のことは考えられないですよね。エアロビクスで、あたらしい振り付けを覚えるときとかも。ランニングマシーンとかでは 他のことを考えてしまうので、ダメですけどね。

それから、お料理なんかもいいですね。段取りとか考えていると,他のことを考えてるひまはありません。特に包丁を持っているときなんて、うっかり考えごとなんかをすると手を切りますので、絶対その時は集中、強制排除ですよね。

---先生の目指すべき目標とかビジョンとかってあったりしますか?

私が目指しているのは、「楽して儲かる弁護士」です。最小の努力で最大の効果を上げたいと思っているんです(笑)。
それで、「且つ、かっこいいっていうのが私の目指す弁護士です」って言ったら他の人みんなに笑われましたけども(笑)。

---法科大学院のお仕事が、終わりになると聞いたのですが、今後何か考えていらっしゃるのですか?

一昨年、山梨学院法科大学院の募集停止が決まったときには、確かにショックでした。
月火金が東京で弁護士業務、水木は山梨で講義、土日は自宅で講義準備・・・というような生活を10年続けてきましたので、ああ、仕事がなくなる、どうしようって。

勤務弁護士にも辞めてもらい、しばらく落ち込んでいましたけど、ちょうどその頃、東京弁護士会の男女共同参画推進本部の方で、「女性社外役員の起用を検討する上場企業を支援するため、女性社外役員候補者名簿を作成し、希望する上場企業に個別に提供する」という事業を始めていたので、さっそく、会社法の勉強をしなおし、コーポレートガバナンスの研修を受けて、名簿登載の申込みをしました。

名簿に登載されても、去年は一件もオファーがなかったのですが、今年に入って、ポツポツと社外役員の話がくるようになりました。またまた、未経験の分野ですが、新しい世界が広がると思うと、とっても楽しみです。

企業にとっては、女性活用の場にもなりますし、女性弁護士をどんどん社外役員に起用されたら よろしいかと思いますよ・・・と、自分のためにも、ここで大いに宣伝しておきます(笑)。

■お仕事に関して、考え方

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

---もともとドイツの弁護士事務所と提携した経緯などちょっと教えてもらえればと思うんですけども。

経歴書には、西ドイツに留学、司法制度研究などと書いておりますが(笑)、本当のことを言いますと、主人が銀行に勤めていまして、88年にフランクフルトのドイツ法人に転勤になったことが、きっかけなんです。その時に、私は東京で弁護士の仕事を続けてもよかったんですけども、ドイツでも仕事ができるということだったので、「じゃあ、行ってみようか」ということで一緒に付いて行ったんです。ドイツでの生活費は全部会社持ちで、勉強できることになったのです。

---ドイツの弁護士事務所に入ったんですよね?

入りました。結構すぐ簡単に登録ができてしまって。

---国際免許みたいなものなんですか?

はい。そんな感じです。
いろいろな書類を出して、フランクフルトの裁判所に行って、裁判官と面接して、それで登録ができましたのでドイツの弁護士事務所に入って、主に日本法についてだけなんですけれども。

---ドイツの日本の人向けにということですか?

いえ、ドイツ人でも日本人でも、とにかく、日本法に関する問題です。日本で支店を作りたいとか、日本と取引をしているんだけど日本の会社がお金を払ってくれないとか、国際結婚もありました。それから、日本で事故に遭いましたとか、日本人がドイツで事故に遭いましたとか、そういうような日本法、日本人絡みの事件が結構来ました。

それでも結構、暇なので(笑)、ドイツの法制度に関して、何かにぶつかる度に、同僚に聞いて、文献しらべて、現場レポートみたいな日本語の報告を書いていました。

最初に弁護士がミスをすると弁護士事務所全体の責任になるので、「保険に入れ」って言われたんです。「え、保険に入らないと事務所に入れてくれないの?」とか思って。

---日本と海外の違いってことですか?

はい。当時はまだ、その「弁護過誤保険」っていうんですか、医師は「医療ミス保険」って入っていますよね?
あれと同じように、「弁護過誤保険というのに入れ」って言われて、保険料も高いので、びっくりしたのですが、おもしろいのでそれを研究して、ドイツではこういうものがありますって、日本の「ジュリスト」という法律雑誌に送ってみました。出版社からは、しばらく何の連絡もなかったのですが、突然、朝日新聞国際衛星版のジュリストの広告で、自分の名前を発見し、びっくりしました。ジュリストというのは、有斐閣の出している日本の法律雑誌です。
次に、日本で事故に遭ったドイツ人が相談に来て「権利保護保険が使えますか?」って言うんです。権利保護保険という弁護士費用と裁判費用を立て替えてくれる保険があるんです。今では日本でもありますけども、交通事故もセットになっていますよね。

---交通事故の保険に付帯する。

そうです。それが使えますかって言われて、その時はまだ日本にはなかったので、「こういうものがありますよ」って、また紹介する記事を出したら、またジュリストで紹介されて、なんとなくドイツ法の研究者みたいになっていたんです(笑)。

---ドイツ法からの日本にもいい風というか、第一人者でもあるんですね(笑)。

なったんです(笑)。
現場に居るので、すぐ現場の情報が取れるので。
そうすると、弁護士会からドイツの裁判費用、訴訟費用ですか、裁判所の費用について、どうなっているか報告してくださいっていう感じで原稿の依頼が来るようになったんです。研究分野も、保険だの、弁護士費用、訴訟費用だの、夫婦財産契約だの、日本のドイツ法学者が絶対に取り上げないような特殊な分野だったので、受けたようです。

実際私は結構便利だったみたいです。(笑)
大使館の人とも結構色々と繋がりができて、日本の人が調査に来る時にご案内したりとか、そういう仕事もしていました。

---それで、今でもそこの事務所と提携があるという?

そうですね。だから、そこの事務所で、例えばドイツに財産を持っている日本人が亡くなったので、その人の相続の手続をやってほしいとか、相続人を日本で探してほしいとか、国際結婚とか、そういうのがあります。

---今でも、問い合わせとか来るんですか?

はい、来ます。
この間来たのは、ドイツ人男性と結婚したドイツ在住の日本人女性が亡くなって、日本語の遺言書が出てきた、その遺言書の意味を教えてほしい、とか、配偶者としてはいつまでに、何をしなければならないかをおしえて欲しいとか。その女性の戸籍をたどり、日本語で意見書を書いて、それをドイツ語に直して、E-メールで送りました。

---海外の弁護士事務所との提携のメリットっていうのは。

海外に支店のある大企業の場合には、もうネットワークができていますから、私みたいな個人でやっている弁護士のところに来るということはほとんどありませんが、海外に支店のない中小企業や、個人の依頼は多いですね。
相続とか離婚とか、それから個人で何か事業をやっている人、芸術家の知財関係とか、それから不法行為も。こうした相談や依頼に応えるのに、E-メールですぐに問い合わせができる、資料を送ってもらえるというのは、とっても助かります。特に、弁護士同士の情報交換は、ギブアンドテイクで無料ですから。
ここにこういう文献があるとか、公官庁のここのページを見ればわかるとかいう情報でも、現地の人間が適切な情報を選んで送ってくれるのは有難いですね。また、ドイツで訴訟を起こしたいとか、起こされたとかいう場合でも、ドイツの弁護士を紹介できますし。

---個人のバックアップのほうが多いんですね。

それが多いです。それから、アメリカだったら色々な提携している他の事務所もあるんですけども、ドイツになると提携している事務所はほとんどないようでです。
例えば、ある離婚訴訟が日本の裁判所で起こされて、被告はドイツ人ではなくてドイツ語圏のスイス人だったんですけども、被告と子どもはスイスにいて、訴状の送達はされたのですが、弁護士がみつからないので、訴訟が何年も進まない状態。離婚訴訟は、もう何年も前に全部家裁に移ったのに、その事件だけ、ポツンと地裁に残っていました(笑)。

裁判所から電話が掛かって来て、「先生やってくれませんか?」っていう感じなんです。どこかネットで調べてドイツ語がちょっとできるっていうことで来たんだと思うんですけど、そのぐらいドイツ関係は居ないみたいです。

---海外に財産がある場合の相続の中での注意すべき点など

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

相続の証明が凄く難しいということです。
日本だと戸籍謄本だけ揃えればそれで登記もできてしまったりとか、銀行預金の解約ができたりとかするんですけども、海外の場合には、まず戸籍謄本を翻訳しなければいけないし、その国で通用する形の相続証明申請書にしなければいけない訳なんです。

---向こうのフォーマットに合わせなければいけないと。

そうです。
それが揃うまでには、戸籍だけではなく裁判所の書類が必要というようなこと、公証人だけでなく裁判所の書類が必要なところもあるんです。
それで、その翻訳が凄く大変で、例えば生年月日にしても昭和何年何月何日って漢数字で書いてあっても、それは向こうでは全然読めない訳で、それが生年月日かどうかもわからないんです。
そこら辺から全部凄く大変で、最終的には相続証明申請書に代わるものとして、領事の前での宣誓供述書であったりとかを向こうの裁判所に持って行くというようなことになるんじゃないかと思います。

---しっかりとした法律と海外の状況と、言語を兼ね備えている先生にお願いしないとっていうのがありますね。

英語ができる弁護士であれば大体は大丈夫だとは思います。
ドイツでも、大使館の人と領事館の人は英語は話すとは思いますけれども。
ただ、法律用語の場合には、ドイツ語は日本語と直訳でみんな1対1で対応しているんですけど、アメリカとは法律が違うものですから、英語にしてしまうと全然概念が違ってくるものがあるんです。
特に民法、民事訴訟手続関係はドイツの法律を取り入れたものであるので、英語にしないほうが楽です。

---やっぱり海外とか越えてしまうと少し弁護士費用とか、かさむんですか?

たぶん大手の渉外事務所に頼むと、もちろん全部そういうことは看板に掲げていますけども、そういう専門分野ということになりますので凄く高いと思います。だから企業でなければ払えないでしょう。

私のところでは、せいぜい国内の5割増し程度、一時間の相談料が国内2万円のところ海外案件は3万円ぐらい、その程度ですよ(笑)。

---ドイツに財産がある場合では、注意すべき点ってあったりしますか?

海外に資産がある場合でも、公正証書遺言があって、遺言執行者がきまっていれば、やりやすいです。
日本人の場合、相続については準拠法が日本法になりますので。
それで、ドイツにある財産については管轄がドイツになったりもするということになる訳です。

---預金とかは楽なんですか?

預金とかは日本に支店があるところだったら日本の手続でできました。
例えば、シティバンクの分は、すぐ戸籍謄本だけでできましたけども。
ドイツの銀行で日本に全然支店がないとなると、裁判所の相続証明申請書が必要になってくるというようなことです。別のある国の銀行の場合、日本への送金、海外送金ができないということで、・・・どうやって解決したのだったかしら・・・確か、相続人がわざわざその国の銀行まで出向いて、手続したように記憶しています。

■最後に

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

---最後に、弁護士になられて38年になって、振り返っていかがですか?

そうですね、女性ということで随分得をしてきたように思います。

同期の女性弁護士に聞くと、テレビなどで活躍している人でも、「ずっと差別を感じてきた」ということなんですけど、私はそんなに差別されたとは感じていないんです。最初の頃はそんなに女性は多くはないので、割と覚えてもらえるということや、優しくしてもらえるということもあったし(笑)。今でも、先ほどお話した社外役員の話だって、女性だからオファーがあるのですから。

それから、離婚事件でも男性からの依頼が多いんです。
「女房が何を考えているかわからない」から(笑)とかおっしゃって、女性の気持ちがわかる先生に頼みたいとか。
それで、女性からも、「女性の気持ちがわかる」、「やっぱり私の気持ちは、男の先生ではわかってくれないわ」っていうことで、なんか両方から結構沢山の依頼が来ました。全体的にいいことばっかりだったなと、やっぱりそんな感じがしますよね(笑)。

あ、女性として、ではなく、弁護士としてですよね(笑)。弁護士は、人に感謝されて、さらにお金もいただける。こんな良い仕事はないと思います。

吉岡・辻総合法律事務所 辻千晶弁護士

---相談に来られる方や依頼者の方へメッセージをお願いします。

まずは、「こんなの弁護士に相談することかしら」というところから、来ていただければいいなと思います。

相続っていうのは、やはり家族、自分の問題ですから、自分の感性に合う人を選ばれたらよろしいんじゃないかなと思います。そのためには、ネットで探してみてプロフィールを読むなり写真をみるなり、何人かの弁護士に法律相談という形で会って話してみるのが良いでしょう。

私はどちらかというと、強気でイケイケで本当に蜘蛛の糸一本でもなんとかすがろうと、なんとか突破口をみつけたいと頑張るタイプなんですけども、もう少し石橋を叩いて渡るようなタイプの弁護士もいますので、自分の好みのタイプの人をみつけてください。
以前に、ある年配の女性の依頼者から、「問題が解決したのはうれしいけど、これで先生と会えなくなるのは寂しい」なんて言われたことがあります。こんな信頼関係が築けたら、本当にいいですね。

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辻 千晶 (東京弁護士会所属 / 吉岡・辻総合法律事務所)

クライアントの案件を解決する最高のパートナーとしての知識・経験を活かして、さまざまな分野で依頼者の利益を守り、迅速かつ的確に問題を解決することを共通の目的としております。

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