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【弁護士監修】「預貯金などの現金は遺産分割によって自由に分配を決める」過去の判例を変更。最高裁判決

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弁護士 日向 一仁 東京渋谷法律事務所

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更新日:2024年03月29日
「預貯金などの現金は遺産分割によって自由に分配を決める」過去の判例を変更。最高裁判決のアイキャッチ

実際に起こった裁判を例にして預貯金の遺産分割や現金での遺産相続について記載していきます。

「亡くなった人の預貯金を親族などの相続人がどう分け合って相続するか」かどうかが争点となった裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2016/12/19、「預貯金は法で定められた割合(法定相続分)で分配されず、話し合いなどで取り分を決められる『遺産分割』の対象となる」との判断を示した。

過去には、「預貯金は法定相続の割合で分けられる」とする判例があったが、今回の判例で変更された。

この判例について、遺産相続問題に詳しい「東京渋谷法律事務所 日向 一仁(ひゅうが かずひと)弁護士」に、お話をお伺いしました。

■遺産分割をする際の法定相続分とは

法定相続分というのは、法律で各相続人の立場に応じて決められた相続人の取り分のことです。例えば、亡くなった方に、配偶者と子どもがいれば、亡くなった方の財産は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1で分けることになります。
遺産分割協議というのは、相続人全員で合意して、相続財産の分け方を決めることです。
遺産分割協議は必ずしも法定相続分で分ける必要はなく、話し合いの結果、法定相続分と異なる割合で財産を分けても構いません。遺産分割協議では、話し合いの結果を遺産分割協議書という書面にすることがほとんどです。

■預貯金や現金の遺産分割で注意すべき点は

現金は遺産分割協議の対象ですので、遺産分割協議でどのような割合で分けるのかということを話し合う必要があります。
他方、預貯金は、これまでの裁判所の考え方では、原則として遺産分割協議の対象ではなく、相続開始時、つまり被相続人が亡くなった際に、法定相続分に応じて、各相続人に当然に帰属するという扱いがされていました。相続人間で合意すれば遺産分割の対象にするという扱いでした。

今回の最高裁の判例変更で、預貯金も現金と同様に遺産分割協議の対象となるということになりましたので、今後の遺産分割協議では注意が必要です。
なお、遺産分割協議書には、相続開始後の預貯金の利息等についても、どの相続人に帰属するのか明確にしておいた方がよいでしょう。

■遺産分割がまとまらず、放置していた場合はどうなるのか?

相続財産の分け方が決まりませんので、相続財産を動かすことができません。
預貯金の場合、法律的には銀行に対する預金債権をもっていることになります。
しかし、債権には消滅時効というものがあります。法律上は、預金債権については5年または10年行使されなければ消滅時効になります。しかし、金融機関が消滅時効を援用(消滅時効を主張すること)することは、ほとんどないようです。
とはいっても、長期間放置すれば、過去の取引履歴などを取り寄せることも難しくなってしまいますので、遺産分割協議は早めにおこなった方が良いでしょう。
一部の相続人が、不動産を自分のものとして占有し続けると、取得時効が成立して、占有している相続人の所有物になってしまうこともあります。

■過去の判例が変更されたことでの影響は?

今回の最高裁の判例変更の重要な点は、
①預金債権(普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権)について、相続開始時、つまり被相続人が亡くなった特に法定相続分に応じて当然に分割されるという判例が変更され、当然には分割されなくなったということ
②そのために、遺産分割協議で預金債権の帰属について話し合いをする必要があるということ
の2点です。

これまでの預金債権については、相続人間で合意をすれば、遺産分割協議の対象になっていますが、今後は、合意がなくても、遺産分割協議で預金債権の分割方法を協議しなければなりません。
従来は、金融機関に対する裁判等で、各相続人が法定相続分に応じて預金の払い戻しを請求することができましたが、今後、このような請求はできなくなるものと考えられます。この方法は、相続人が多数いて遺産分割協議が困難な場合等に、とりあえず法定相続分の預金のみを確保する手段として利用されていましたが、それができなくなってしまうと考えられます。一部の相続人が葬儀費用を相続財産からねん出したいと考える場合には、不都合が生じるかもしれません。

今回の判例変更がおこなわれたのは、以前の判例で生じてしまう不公平をなくすことが理由です。
例えば、Aさんが亡くなる前に、相続人の一人であるBさんに対して、5000万円を生前贈与していたとします。そして、Aさんが亡くなったときに4000万円の銀行預金が存在して、法定相続人がBさんとCさんの2名(法定相続分2分の1ずつ)だとすると、いままでの判例では、銀行預金については、生前に贈与という特別な利益(特別受益といいます)を得ていたBさんも、そうでないCさんも法定相続分に応じて2000万円ずつ銀行預金を当然に相続することになります。つまり、Bさんが受けていた特別受益が考慮されませんので、Cさんにとっては不公平な結果となってしまいます。
今回の最高裁の判例変更によって、銀行預金が遺産分割協議の対象になりますので、Bさんが受けていた特別受益も考慮されることになり、Cさんに対する不公平な結果はなくなります。

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日向 一仁 (弁護士)東京渋谷法律事務所

2006年弁護士登録、2012年5月に東京渋谷法律事務所を設立。所属弁護士4名の事務所の代表を務める。相続に関する相談を無料で実施し、遺言書作成・遺産分割請求・遺留分減殺請求などの相続遺産問題について取り組んでいる。東京だけでなく他県からも相続案件を中心...

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