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テレビ局勤務から弁護士の道へ、著作権に知見のある銀座の日吉由美子弁護士にインタビュー。

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更新日:2019年07月26日
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今回は、大洋綜合法律事務所の日吉由美子弁護士にインタビューをさせて頂きました。
アナウンサー、テレビ局での勤務経験の後に、弁護士になった先生です。

異色の経歴をもつ日吉先生の人柄を中心に、弁護士を目指した理由、弁護士としての考え方をお聞きしてきました。

 

■大洋綜合法律事務所に関して

---大洋綜合法律事務所の特色、強みから教えてください。

所長は知的財産権問題に明るく、法科大学院でも知的財産権を中心に教えておられる弁護士です。
その他のパートナー弁護士が私以外に2人おられますが、各先生方が、それぞれ異なる得意分野を持って、互いに切磋琢磨しているという感じです。

---事務所全体ですと、企業の割合が多いんですか?

私個人で言えば、全仕事量の6~7割が企業、残りが個人という割合です。

---こちらの大洋綜合法律事務所に入所したキッカケ、エピソードを教えてください。

司法修習の時から約10年間お世話になっていた法律事務所から、2017年12月に大洋綜合法律事務所に移籍したばかりです。
現在、文部科学省の中央教育審議会法科大学院特別委員会というところで専門委員をやっている関係で、日弁連の法科大学院センターというところで、法科大学院教育の改善や、法科大学院生のキャリアルートを支援する活動等に携わる中で、今の所長と親しくお話しするようになりました。

所長から大洋綜合法律事務所にお誘いいただいて、私としては、これまで約10年育てていただいた大ベテランの先生の法律事務所を離れ、より若い弁護士同士で、互いに切磋琢磨しながら頑張るのも悪くないと思ったんです。
また、私も、著作権や知的財産権の仕事が比較的多いことから、所長が同様の分野を中心に業務をされているということも大きかったですね。

大洋綜合法律事務所 日吉由美子 弁護士

 

■日吉由美子弁護士について

---今度は日吉先生について。元々、テレビ朝日に入社してサラリーマンをされていたんですね?

そうです、私は、1979年に新入社員としてテレビ朝日に入社して、最初の3年半くらいはアナウンサーをやっていました。
その後、報道記者に転向して、6年くらい報道記者として活動した後、スポーツ局に異動したんです。

そこでは、一応英語に不自由がないので、テレビ朝日が放送したいと考える海外の大型スポーツイベント、例えば、全英オープンゴルフだとか、世界水泳選手権だとか、サッカーの国際大会だとか、そういったスポーツイベントの独占放映権を取ってくる仕事をもっぱら担当することになりました。
結局、テレビ朝日には通算28年在籍したんですが、うち最後の約18年は専らこのスポーツイベントの独占放映権の取得業務に従事していたことになります。

---すごいですね。具体的にはどのようなお仕事だったのですか?

具体的には、放送したいとテレビ朝日が考える海外のスポーツイベントの主催団体の本部に出かけて行って、「貴団体が権利を持っている、この超一級のスポーツイベントの日本国内の独占放映権を許諾してください。是非放送したいのです」というプレゼンテーション、それに続く主催団体との条件交渉と、それから大筋で合意したあとのライセンス契約の締結業務が主要な仕事です。

肩書としては、「スポーツ局国際渉外担当」と呼ばれていましたが、要は、渉外プロデューサーですね。

実は、この仕事が、私が弁護士になるキッカケになったんですよ。
結局、大きな国際スポーツイベントと言うのは、圧倒的にヨーロッパ及びアメリカ、つまり欧米のものが多いわけです。
そして、欧米の商慣習では、そうしたスポーツイベントの主催団体の中に、相当数の弁護士を抱えていることが多く、上記のような、放映権に関する交渉、及びライセンス契約締結の段階全てについて、そうした弁護士が全面に出てくるわけです。
私は、交渉のテーブルの向かい側に座って、そのスポーツ団体を代表する弁護士さんを相手に一生懸命、プレゼンテーションをしたり、交渉したり、アピールをしたり、契約書の文言を調整したりという仕事をせざるを得ない訳ですよね。
最初の頃は、ただただ目の前の仕事に必死に取り組んでいただけでしたが、段々慣れてくると「待てよ」と。
私は、その仕事が大好きでしたので、この仕事に熟練して長く続けたい、そのためにはもっとスキルを上げたい、スキルを上げていくためには、テーブルの向こう側に座っている相手方が弁護士さんなんだったら、私も勉強して弁護士の資格を得た方がより自信をもって業務に取り組めるのではないかと思うようになったんです。
ということで、入社して25年目、私が47歳の時に、「ちょうど法科大学院制度が2004年から始まるんです。私のスキルが上がれば、もっと会社にも貢献できると思うので、勉強させて下さい」と会社と交渉しました(笑)。

---その法科大学院ができたタイミングとかも良かったんですかね?

私にとってはちょうど良かったと思います。
というのは、私が法曹資格が取れたらいいなと思い始めた頃は、それよりも10年ぐらい前、スポーツ局国際渉外の仕事を始めて5年目くらいでしたが、まだその時は旧司法試験の時代だったんです。
でも、私は法学部出身ではないですし、純粋未修(全く法律を勉強したことがない者)ですから、どこから勉強に手を付けたら良いか分からず、仕事をしながら資格をとるのは不可能だと一旦は諦めました。
ところが、一旦諦めてからかなり経って、法科大学院制度ができることを知り、「法律を勉強したことがなくても、一から学ぶことができるのであれば、これはチャレンジするしかない」と考えた次第です。

---では弁護士になってからは、テレ朝に戻ってお仕事されたのですか?

はい、戻りました。
ただし、ちょっと変則的な戻り方で、前の法律事務所に司法修習でお世話になったわけですが、そこで出会った先生(ボス弁)のお許しを得て、1日のうち半日はテレビ朝日で常勤嘱託として仕事をする、残りの半日は法律事務所でアソシエイトとして研鑽を積むという、極めて珍しい勤務形態を5年間続けたんです。
半分インハウス、半分イソ弁という訳ですね。

その後は、テレビ朝日に毎日伺うことなく、特定の仕事に対応していく形に変更していただき、現在に至ります。

---テレ朝と弁護士事務所でのお仕事が始まったわけですね?

ものすごく変則的なんです。
なかなか両方取るって難しかったと思うんですけど、それを実現させたっていうことですよね。
だから5年間、半分はインハウスをやって、半分は法律事務所のイソ弁をやったわけです。
でも5年やって、やっぱり体が相当キツくなってきたんです。

それでテレ朝とまたネゴって、「今まで抱えていた仕事は全部やりますし、今後もやりますので、1日のうち4時間はテレ朝にいなくてはいけないっていう拘束だけ外してもらえませんか?」と言って、それまで常勤顧問として契約をしてもらっていたのを、そうではなくて委任契約に変えてもらって、仕事はやるんだけども、4時間いなくてもいいというふうに6年目から外してもらって、今もそれを続けているんです。

---では現在も、テレ朝のお仕事をもやっていらっしゃるんですか?

量としては、著作権を中心にしたライセンス契約、それも英文ライセンス契約関係が多いですね。
でも、日本法上のアドバイス、例えば労働問題、会社法上の問題、取引上の問題等に対応することも結構多いですよ。

---その他、一般的な事件も受けてらっしゃるのですか?

一言で言うと、「ウォームハーツ・クールヘッド」でしょうか。

法律事務所に相談に来られる方は、自分では解決できない問題を抱え込んで、非常にストレスを感じておられる方がほとんどです。
そういう方が、法律事務所に来て相談に乗ってもらってホッとしたと言うか、気持ちが落ち着いたとか、何とか解決方法を見つけていけそうだという展望が開けて力をもらいましたとか、そういう少しでも明るい気持ちになってお帰りいただきたいので、まずは相談者に寄り添うこと、共感することが重要です。
「ウォームハーツ」ですよね。

同時に、寄り添うことは非常に重要ではあるものの、相談者と同化してしまってはいけないと思うんです。
第三者として客観的に問題を考えて、「分かるわ、あなたの気持ちも言い分も分かる。でもね、法律上はそれとは違う判断される可能性が高いので、ちょっと落ち着いて考えましょう」とか、「訴訟になったら、こういうふうに判断されるかもしれないんですよ。過去にこういう裁判があったんですよ」などと、法律的な観点からの分析もきちんと伝えて、相談者自身が少しでも客観的な判断ができるようにサポートすることが大事です。
「クールヘッド」ですね。

どちらがより重要ということはなく、弁護士の業務には、本当に両方の要素が求められていると思いますので、常にそのバランスがきちんと取れているかを気にしています。

---確かに、それは難しいですよね。

あると思います。
というのは、私は、国際渉外窓口として、社内の言い分とか、社内の事情を理解した上で、相手方にプレゼンテーションをしたり、相手方と交渉するわけです。

相手方からは難しいハードルを作られたり、難しい条件が付けられたりすることがありますが、それに対しては、できるだけ会社に不利な条件にならないように、こういう事情や背景があるんですよということを、上手に相手方に伝えながら相手方を説得しなければなりません。

他方、相手方との交渉結果については、相手方の主張内容を持って帰って、今度は社内を説得しなきゃいけないわけですよね。
「相手方にはこういう背景事情があって、ここだけは譲れないと言っているので、何か対応しないと」とか、「この点については、実際に話をしてみて、ここまでだったら説得できるような気がするんですが、それ以上は難しいと思います。
落としどころとして、このあたりでどうですか?」とか、場合によっては、「私見ですが、こういうアイデアはどうですか?」などと調整することも多々ありました。
「相手に寄り添いながら、冷静に判断をし、説得する」ということでは同じですよね。

---先生の中で、企業と個人の依頼というのは違いなどあったりしますか?

最善の解決をめざすという点では同じですが、やはり、依頼者が企業の場合と個人の場合では異なる要素があると思います。

企業の場合、担当者がご相談に見える訳ですが、まず、問題そのものはその担当者個人の人生全体を左右することは比較的少ないですよね。
社長等の経営陣を除いては、究極的には自分が最終責任を負うということも少ないですから、ご相談に見える担当者にとっても、問題はやや「局所的」と言えるかと思います。

個人となると、例えば、離婚・相続が典型的ですが、どのように問題を解決するかはまさに自分の今後の全人生に大きな影響を与える、しかもその結果を自分が全部背負わなければならないことが多いですよね。
例えば、未成年のお子さんをこれから一人前に育てなければいけないという人が離婚しようとしている場合は、離婚できるかできないかというような法律上の問題だけではなく、離婚した後の生活は成り立つのかとか、離婚しないで夫婦関係をやり直した方が子供にとって良いのではないかとか、全体的な事情を把握しなければ、良いアドバイスはできません。

---確かに、そうですね。ありがとうございます。次に、先生のご趣味、休日は何をされているんですか?

本当は「世界遺産巡り」が趣味で、4年くらい前までは、主人も共通の趣味を持っているものですから、1年に1回、ちょっと無理をして2週間休みを取って、2人で、じゃあ今年はメキシコとか、今年はエジプトとか、今年はギリシャとか言って、世界遺産巡りをしてきたんです。
それも、出来合いのツアーには乗らないで、利用する交通手段やホテルの選定も含め、ゼロからの旅程の作成を全部2人でやるんです。
そうすると、プランニングの段階から旅行が終わるまで、約半年間は楽しめますよね(笑)

---今まで、世界遺産巡りをしてきて、先生が一番良かった場所はどこでしたか?

よく聞かれるんですけど、今まで行った中では、南米ペルーのマチュピチュが印象深いです。あんな遠くに、時間とお金をかけて行ったけど、それだけの甲斐があったと思いました。

イタリアとかフランスのような文明国は結構年を取ってからも行けるから後回しにして、足腰がしっかりしていないと行けないような世界遺産から回ろうということで、チベットだとか、メキシコのジャングルの中のマヤ遺跡だとか、シルクロードのあたりだとかを意識的に先に行きました。
ペルーのマチュピチュもその一つです。
その後、少しずつ近いところに目を向けて、イスラエル、レバノン、シリア、ヨルダン、エジプト、ギリシャ、スペイン、イタリアのシチリアくらいまでは回りました。
でも、行きたい所は、まだ山ほどあるんですよ(笑)。
イースター島とか、ガラパゴス諸島にも行きたいですね。今はしばらく行っていませんが、時間に余裕が出たら、また挑戦したいです。

 

■最後に

---弁護士歴10年目に突入して、一旦振り返ってみていかがですか?

どんな仕事にもつらい局面はありますから、弁護士という分野に足を踏み入れない方が良かったのではないかとか、会社員生活を続けていた方が良かったかもしれないと考えたことが全くないとは言えません。
でも、総じて面白い人生を送らせてもらっているなと考えていますし、弁護士というやりがいのある仕事があるおかげで、充実した毎日を送ることができていることには感謝しています。

---これからの日吉先生のビジョンは?

中期的には、いろんなものを更に吸収して成長したいと思っていますが、いずれにせよ、私は、日本の高校を卒業しておらず、ニューヨークの高校を卒業して大学に入っている人間ですから、何らかの形で渉外的な要素のある仕事に携わっていきたいと思っています。
抽象的ですが、これから日本が、ますます少子高齢化時代に突入したときに、大なり小なり、日本の企業も外に出て行かなければならないし、個人レベルでも外国から日本にやって来た人を相手に様々な問題を抱えたり、逆に外国に出かけて仕事をしたり、生活したりしなければ行けなくなるでしょうから、何らかの形で、そういう方々のお手伝いをしたいと思っています。

---最後に、記事を読んでくれた方、相談に来られる方に一言メッセージだけいただければ思います。

これまでいろいろな法律相談を受けて、いつも感じることなんですけど、「できるだけ早く相談に来てください」ということです。

本当に大変な状態になってから駆け込んで来られる方が多いんですが、もっと早く相談に来ていただければ、早い段階でのアドバイスや対処ができて、もっと良い解決ができたかもしれないということが結構あるんです。
ですから、何より自分のためだと思って、早め早めに相談においで下さいと申し上げたいです。

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日吉 由美子 (東京弁護士会所属 / 大洋綜合法律事務所)

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