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賃貸用不動産の相続税は、入居率が下がると高くなる?

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更新日:2021年03月10日
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【賃貸物件の評価】

貸家、賃貸アパート、賃貸マンションなどの賃貸物件の土地については、「貸家建付地」として下記の算式により計算することになります。

<貸家建付地 評価の計算式>

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)

※借地権割合の調べ方
借地権割合は路線価図や評価倍率表で確認することができます。
路線価図の場合には路線価にAからGのアルファベットが記載されています。
A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%です。
倍率表の場合には、何%か具体的な数値が記載されています。

例えば、土地(自用地)を1億円とした場合
①借地権割合60%の地域で満室(賃貸割合100%)の場合
②借地権割合60%の地域で賃貸割合50%の場合
③借地権割合70%の地域で満室(賃貸割合100%)の場合
の3つを比較してみましょう。

賃貸割合 評価額 自用地との評価差額
①借地権割合60% 100% 8,200万円
自用地評価額の82%
1,800万円
②借地権割合60% 50% 9,100万円
自用地評価額の91%
900万円
③借地権割合70% 100% 7,900万円
自用地評価額の79%
2,100万円

※相続税は、相続財産の総額や控除などで変動します。
 相続税の税率区分は、10%から55%のため、自用地との評価差額に対して10%から55%だけ相続税の税負担が変わります。
 例えば①のケースですと10%で180万円、55%で990万円の差がでてきます。

借地権割合によって評価額が異なりますが、満室の賃貸物件はおおむね20%前後評価が下がっていることがわかると思います。

しかし、空室部分がある場合には、賃貸割合が下がってしまうため、貸家建付地としての評価額が上がってしまいます。
つまり空室が多ければそれだけ評価額が上がってしまい、相続税が高くなるのです。
ただし、空室の場合でも、それが一時的なものであれば賃貸割合に含めても良いという取扱いがあります。

【一時的な空室の判断基準】

一時的な空室の判断基準は下記の事実関係から総合的に判断するという曖昧なものとなっています。

①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
③空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
④空室の期間が課税時期の前後の例えば1ケ月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
⑤課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか

【大阪高裁の判決】

一時的な空室の判断基準のうち、特に厳しい要件は④の「例えば1ケ月程度」になると思いますが、実務では概ね1年前後であれば、他の要件を満たすことで「一時的な空室」と認められる傾向にありました。

しかしながら、平成29年5月11日に大阪高裁の判決で5カ月以上の空室は長期間(一時的ではない)と判断しています。
そのため、今後の実務では「5カ月」が1つの判断ポイントになりそうです。
ただし、空室期間が重要と示されたものの、総合的に判断するという点は変わりませんので、その他の事実関係から空室期間が5カ月以上でも「一時的な空室」と認められる可能性がゼロではないと思われます。

【一時的な空室を賃貸割合に含めていなかった場合】

すでに相続税の申告をしている方のうち、空室期間が5ケ月未満であるにもかかわらず、「例えば1ケ月程度」で判断してしまい、一時的な空室部分を賃貸割合に含めずに過大評価しているケースも考えられます。
そのような場合であっても亡くなってから5年10カ月以内であれば、税務署に対して還付請求を行うことができます。
もしも、該当するようでしたら、相続税専門の税理士に見直しを依頼してみてはいかがでしょうか?

相続に強い弁護士

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佐藤和基 (税理士)佐藤和基税理士事務所

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