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【弁護士監修】相続税対策と遺産分割のバランスを考えましょう

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2021年12月08日
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Q:相続対策にはどのようなものがありますか?
A:遺産分割対策、納税資金対策、相続節税対策の3つがありますが、相続税対策ばかりを優先すると遺産分割が不公平になるなど弊害が生じる恐れがあります。

節税を優先すると遺産分割が不公平になりがち

一口に相続対策といっても3つの種類があります。遺産をもめずに分けるための遺産分割対策、相続税がかかる場合に納税資金をどう確保するかという対策、そして相続税がかかる場合に相続税を減らすための対策です。

いずれも大切ですが、順番を間違えたり、特定の対策を優先したりすると、他の対策がうまくいかなくなる場合があります。中でも目立つのが、相続節税を優先するあまり遺産分割が不公平になったり、親の手元資金が不足したりするといった弊害が生じる場合です。

これでは節税はできても遺産分割が不公平になる

東京都の会社員のAさんは弟から反発され頭を抱えています。Aさんは母親と同居中です。母親はまだ元気ですが、2015年から始まった相続税の増税が気になるらしく、兄弟の間で相続対策を相談するように頼んでいます。なお、弟には持ち家があります。

母親が所有する自宅(敷地)の課税上の評価額は4000万円、金融資産は2000万円で計6000万円。これに対して基礎控除は4200万円(3000万円+600万円×法定相続人2人)。相続財産が1800万円上回るので、相続税がかかることになります。

ただ、Aさんは親と同居しており、Aさんが自宅を相続すれば、評価額は小規模宅地の評価減の特例を使って80パーセント減の800万円にできます。金融資産と合わせても2800万円と基礎控除を下回り、税金はかからないことになります。

そこでAさんは、「自分が自宅を相続し金融資産を半分ずつ分けよう」と提案しました。「自分の相続分は自宅800万円に金融資産1000万円を加えた1800万円。母と同居し世話をするのだから、やや多いのは勘弁してくれ」と弟を説得しています。

ところが、弟は、「兄さんは実際は5000万円分(自宅4000万円と金融資産1000万円)を相続するのに、自分は1000万円で不公平だ」と怒っています。Aさんは「自分が自宅を相続するからこそ税金も支払わずにすむのだ」と反論しましたが、弟は聞き入れません。

相続対策に精通する税理士は、Aさんのケースのように「節税はできても遺産分割が不公平になる対策が多い」と警鐘を鳴らしています。

遺産分割を公平にする方法

Aさん兄弟が、財産を実際の価値で均等に相続するとどうなるでしょうか。親の自宅を半分ずつ相続すると、小規模宅地の評価減の特例を使えるのは、Aさんが相続する分(2000万円分)に限定されます。弟は持ち家があるため、特例を使えません。相続財産は400万円(兄の相続した自宅の特例使用後の評価額)+2000万円(弟の相続した自宅の評価額)+2000万円(金融資産)=4400万円となります。

基礎控除を上回り税金がかかる上、実際に兄の住む家が兄弟の共有になります。兄は土地を売る場合などに弟の承諾が必要で、トラブルの種を抱え込む最もまずい対策になります。

相続対策を上手に進めるには「節税だけでなく遺産分割も含めたバランスのとれた対策が必要」と専門家の多くは強調します。具体的にはまず、親にどんな財産がどれくらいあるのかを把握した上で、相続人の状況も踏まえ公平になるように考えます。

その際に注意したいのは、親の自宅の土地について小規模宅地の評価減の特例が使える場合でも、土地の評価額は特例適用前のもので考えるということです。そうしないと、前述のAさんのケースのように不公平な分け方になる場合があります。確かにAさんのケースでは母親と同居するAさんが自宅を相続するから特例が使えて節税になるのですが、だからといって遺産分割上の土地の評価を特例適用後の評価にするのはおかしいのです。

Aさんの場合は、親の自宅をAさんが相続し節税する一方弟に金融資産をすべて相続させ、不満を解消するしか手がないでしょう。弟は、金融資産を全部相続しても相続分はAさんの半分ですが、Aさんが母親と同居して面倒を見るので、弟も納得してくれるでしょう。

いずれにしても、Aさんの失敗は節税だけを考えた遺産分割にしてしまったことです。節税対策は、遺産分割の大まかなイメージができたところで着手すれば十分です。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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