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【弁護士監修】生命保険の死亡保険金は相続財産に入るのか?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年02月19日
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生命保険に加入した夫が亡くなった

亡くなった夫は、生命保険に加入しており、保険金の受取人には、妻である私が指定されていました。夫は再婚であり、前妻との間に子供が一人います。この保険金も他の財産同様に相続財産として分けるものなのでしょうか。

生命保険をかけていればこのようなケースは発生し得ることだと思われます。今回は、この死亡保険金に関して確認しておきたいと思います。

死亡保険金は相続財産?

まずは、この点を最初に確認しておきましょう。

死亡保険金は相続財産というイメージを持っている方も多いかと思いますが、相続財産ではないのです。

判例・学説では、死亡保険金は、保険契約の効果として指定された保険金受取人が直接取得するものなので、一般的には相続財産には含まれない(一旦、相続財産に帰属した後に、保険金受取人が相続するものではない)と解されています。

生命保険の受取人には要注意!

1で死亡保険金が相続財産にはならないということを確認しましたが、実は生命保険の契約内容や死亡保険金の受取人をどのように指定しているかで、相続財産に含まれるのかどうかが変わってきてしまいます。

それぞれのケースによっては、後々揉めてしまう原因にもなりますので、よく注意しておく必要があります。

まずは、改めて生命保険の契約内容を確認すること。これはとても重要ですので、確認しておくことをお勧めします。

例を挙げると、死亡保険金の受取人を「相続人」としていた場合、相続財産にはあたりません。また、その「相続人」の誰がいくら受取るのかが指定されていなければ、法定相続分によって配分されるのが通例のようです。

また、ケースとしてはあまりないのですが、入院給付金が支給される医療保険などに加入していて、被保険者の方がそのまま受取人になっており、保険金受取り前に死亡してしまった場合など、受取人も被保険者も保険契約者本人(故人)としていた場合は、保険金は一旦故人の物になると考えられるので、この場合は相続財産となると考えます。したがって、この場合では、保険金を誰がいくら受け取るのかについては、相続人間での遺産分割協議で決める必要があります。

先ほどもお話したとおり、生命保険契約には、必ず保険会社の契約約款が定められているので、まずはその約款に則って手続きを行うのが大前提となります。

受け取る死亡保険金が他の相続財産より著しく高額な場合

例えば、以下のようなケースの場合はどうなるでしょうか。

相続人のうちの一人が,被相続人の契約していた死亡保険金の受取人となっており,死亡保険金の全額を受領していたとします。その金額が,被相続人の相続財産と比較して,明らかに高額である場合があります。他の相続人から見れば,不公平のように感じてしまうこともあるかもしれません。

上記でお話した原則から考えると、死亡保険金の受取人が指定されていれば、その保険金は相続財産には含まれず、受取人固有の財産となってしまいます。

しかしながら、このような状況を受けて、裁判所の判断が為されたものがあります。(最高裁判所第二小法廷平成16年10月29日決定)(民集58巻7号1979頁)


【判決要旨】上記の養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。もっとも、上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどに鑑みると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事情の有無については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。


上記判決によれば、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情」がある場合には、死亡保険金は「特別受益」による持ち戻しの対象となると解されているのです。

つまり、多額の死亡保険金により、他の相続人と著しく不公平が生ずるような場合には、かかる死亡保険金も、相続財産として遺産分割において考慮される必要があるのです。

さて、少し説明が長くなりましたが、

冒頭の相談ケースを確認しますと、今回、夫の死亡保険金の受取人に指定されていたのは、ご相談者(妻)でしたね。したがって、あくまでもこの死亡保険金は、ご相談者の固有の財産となるので、他の法定相続人である、前妻のお子さんにはその金員を分配する必要はないということになります。

遺産相続に関する困りごとは弁護士へ相談を

死亡保険金については、税法上ではまた扱いが違ってきますので今回のお話とは混同しないようにしてください。
少しでも分からないことがあれば、ご自身で判断せずに弁護士にご相談下さい。

弁護士であれば、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、相続で起きやすいトラブルを未然に防いでくれるでしょう。

弁護士を選ぶ際は、トラブルの内容に精通しているかどうかや相談のしやすさ、説明の分かりやすさを意識しておくのが重要です。

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相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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