齋藤 毅 弁護士
川崎パシフィック法律事務所
遺産相続専門の弁護士検索・法律相談ポータルサイト
遺産を相続する、相続を放棄するかについては、相続人にも選択の幅が与えられています。
司法統計年報によると、バブル崩壊から現在まで、下記を見ても分かるように、相続放棄は年々増加傾向にあります。
2008(平成20)年14万8526件
2009(平成21)年15万6419件
2010(平成22)年16万293件
2011(平成23)年16万6463件
2012(平成24)年16万9300件
2013(平成25)年17万3166件
この遺産放棄の増加傾向は、相続というものが、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産だけを引き継ぐのではなく、マイナスの財産も引き継がなければならないという一面を持っているからでしょう。
仮に、相続した不動産などに借金があった場合、その借金も引き継ぐことになり、返済の義務が生じます。親が作った借金を相続人が支払うことになるのは辛いものもあります。
このようなケースを想定して、財産を相続するにあたって
相続人には財産を引き継がないという選択肢も含めた3つの相続方法、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」が用意されているのです。この中で、単純承認以外は裁判所の手続きが必要です。
全財産を相続する方法で、不動産・預金などのプラス財産も、ローンや借金などのマイナス財産も、全てを受け継ぎます。ローンや借金などの債務は、自身が作った債務ではないにしても、単純承認を選択したら、返済しなければなりません。
プラス財産の範囲内において、マイナスの財産を引き継ぐという条件付きで承認する方法です。つまり、相続で得た資産の範囲内で借金を返済するということなので、財産よりも負債のほうが多かったという場合、相続人自身の財産から残った借金を支払う義務はありません。
ただし、相続人全員がそろって限定承認をおこなう必要があり、裁判所の届け出も相続人全員でおこなわなければなりません。
単純承認とは逆に、プラスの財産もマイナスの財産も全て放棄し、財産の一切を相続しない方法です。
相続放棄をした場合、初めから相続人ではなかったと見なされるため、代襲相続もできません。財産は、相続放棄した人を除いた相続人で分けることになります。
「限定承認」「相続放棄」を選んだ場合、相続があったことを知った日から3カ月(熟慮期間)以内に、裁判所へ届けなければなりません。
裁判所に申し出れば、この熟慮期間を伸長してもらうこともできますが、何もせずにこの3カ月が過ぎてしまうと、「単純承認」として扱われることになります。
また、限定承認の場合、1人でも反対者がいれば承認が下りないことにも注意が必要です。
相続人を探し出す間、家庭裁判所により相続財産管理人が選任され、財産を管理することになります。
被相続人(亡くなった方)の残した債務の支払いなどを精算した後で、まだ財産が残っていれば、裁判所は特別縁故者に対して財産の一部を与えることができます。それでも残った財産は、国庫に帰属します。
つまでも忘れないようにと、亡くなった方の身に付けていたものを記念に分配することを「形見分け」と言います。
しかし、高価な宝石や毛皮のコートといった、ある程度の資産価値があるものを、相続人が形見分けと称して勝手に処分すると、相続を単純承認したと見なされます。
形見分けをするときは、相続放棄や限定承認をするかどうかを見極めてからでも決して遅くはありません。
そのため、法律では以下のケースでは、自動的に単純承認したものと見なしており、これを「法定単純承認」と言います。
➀相続財産の全てまたは一部を処分・消費したとき(保存行為・短期賃貸借を除く)
②熟慮期間が過ぎた場合
➂相続放棄や限定承認後であっても、相続財産の隠匿や消費をしたり、財産の存在を知っていたにもかかわらず、財産目録へ記載しなかったとき
※※相続放棄をしたことにより、新たに相続人となった者が相続を承認した後は、相続放棄者を保護する観点から、法定単純承認は生じません。
相続放棄をすると、遺産はどうなるのでしょうか?
冒頭で説明したとおり、相続放棄をした者は初めから相続人でなかったとされます。血族の1人が相続を放棄すれば、相続人が減るため他の同順位の血族相続人が増え、同順位の者がいなければ、後順位の血族相続人が、新たな相続人となります。相続放棄をするならば、それによって誰に財産がいくかのということも考えたほうがよいでしょう。
例えば、自身の相続分を別のある特定の相続人に譲る意図があって相続放棄したのだとしても、必ずしも目当ての相続人に、うまく自分の相続分が回るとは限りません。血族の中に、それまで知られていなかった者がいるかもしれませんし、次順位の相続人になるのは誰かということは不安な場合もあるのです。
自分の親に隠し子などはいない」と、理由なく確信している方は多いことでしょう。しかし、それでも自身の相続分を別の特定の相続人に譲るつもりで相続放棄をするのであれば、よくよく調査をすべきです。
兄弟姉妹が相続人となる場合は、代襲で甥・姪までが相続人となります。そのため、調べる際は、隠れた異母・異父兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)や、その子供である甥・姪までを調査対象にします。それには、故人の親たちの幼時期にまでさかのぼり、前婚や非嫡出子の関係を調査しなければなりません。
自分が相続放棄をしたら、誰に相続の権利が移るかを徹底滴に調べてから、放棄の手続きをしたほうがよいでしょう。
相続放棄をしても、退職金や遺族年金などがもらえるかどうかは、相続財産であるか否かで違ってきます。
本来は亡くなった本人のものになるお金ですから、相続財産のように見えますが、会社の規則によっては、死亡者の退職金としてではなく、遺族に直接支払われる「弔慰金」として支払われる例があります。
この場合の「遺族」も、法的な相続人に限らず、死亡者と生計を共にしていた者などとする規定もあり、その場合は内縁でも可とされることがあります。規定は勤めていた会社によっても異なるため、問い合わせをするとよいでしょう。
弔慰金や遺族年金が相続財産であり、亡くなった方自身に支払われるべきものであれば、相続放棄によって、放棄者は相続できなくなります。しかし、それが相続財産ではなく、遺族固有の権利であれば、相続放棄に関係なく自身の権利として請求が可能です。
したがって、亡くなったことによって発生する弔慰金や遺族年金がどのような種類であるか、調査が必要になります。遺産にあたるものについては、相続を放棄すれば相続人ではなくなり、取得することはできません。
死亡者本人に対する損害賠償の場合、物損被害などは相続財産になります。
例えば、死亡者本人が所有していた自動車が破損したことによる損害賠償請求権は相続財産となるため、相続人が受け継ぐことになります。相続財産ですので、相続放棄すると相続はできません。
しかし、被相続人の事故死によって発生した遺族自身の悲しみについて、慰謝料を請求しようとしても、これは遺族自身の慰謝料となるため、相続財産と見なされません。
このような慰謝料請求は、相続放棄とは関係なく、固有の権利としておこないましょう。これは、遺族自身の物的損害がある場合も同様です。
遺族年金と同様で、故人が保険金受取人となっている場合は、保険金請求権は相続財産であり、相続放棄をすると相続人は相続できません。
例えば、保険金受取人に「Aさん」と指定されていれば、保険金請求権はもとよりAさんの財産権であり、相続とは関係ないことになります。Aさん以外の相続人が相続放棄をしても、Aさんは保険金を請求できます。
では、保険金受取人が「相続人」と指定されていた場合はどうなるのでしょうか?
規定では、相続放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものと見なすと定められてます。しかし、相続人という記載は、相続人であった「特定の個人」を受取人とする趣旨の記載であるとする判例があります。これは、相続人であることよりも、特定の個人であることが優先されるといった意味で、この場合は、放棄により相続人ではなくなっても、保険金受取人としての指定は失われません。
遺産の分割方法によっては、特定の財産がある1人だけにいくことがあります。この場合の手続きでは、相続人の1人が、ある相続財産について遺産分割協議書の代わりに、「特別受益」や分割により、他の相続財産の配分を受けているから、この物件については相続分がないとして、他の相続分だけの相続取得を認める文書が作成されることがあります。
これを「相続分がないことの証明書(「相続分皆無証明書」あるいは「特別受益証明書」)と言い、印鑑証明書を添付することで効力が生じます。では、この「相続分がないことの証明書」が活用されるのは、どのような状況でしょうか?
よくあるケースで言うと、相続放棄をすることなく、自分の相続分が特定の相続人にいくように仕向けたいときに使われます。相続放棄は、初めから相続人でないとされてしまうため、また別の血族が相続人となり、相続分割も変わってしまうかもしれません。
また、「相続分がないことの証明」であれば、裁判所の手続きが必要な相続放棄よりも時間や労力をかけずに、相続分から外れることができるのです。
例えば、兄弟2人のうち、兄が自分の相続分を弟に譲りたいとします。自分は亡くなった父親から生前、他に何らかの財産分割を受けているとして「相続分がないことの証明書」を作成すれば、兄の相続分はないものとされ、その分が弟に回されます。
ただし、この証明書は同一順位者間でのみ通用するものですので、先順位を飛び越して後順位者(仮に叔母)に譲りたいとしても、この方法は利用できません。
もし、目当ての相続者(仮に弟)以外にも同一順位者(仮に異母妹)がいる状況でこの証明書を作成すると、目当ての弟ではなく、財産は異母妹のものになってしまう可能性があります。
「相続分がないことの証明書」は、くれぐれも慎重に作成することをお勧めします。
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