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【弁護士監修】遺言書を勝手に捨てた・破った・燃やされた時の対処法

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年03月19日
遺言書を勝手に捨てた・破った・燃やされた時の対処法のアイキャッチ

兄が勝手に父の遺言書を焼き捨てた

私は3人兄弟の次男で、母は既に亡くなっています。先月父が亡くなり、父の部屋から自筆の遺言書が見つかりました。しかし、中身を確認する前に、兄が我々の目の前で遺言書を燃やしてしまいました。あっという間の出来事で誰も止めることが出来ませんでした。

父は兄夫婦と同居していましたが、兄は職を転々とし、父の年金を充てにする生活でした。また、兄嫁も意地が悪く、父の面倒はみないで食事は出来合いの惣菜ばかり、と本当に酷い有様でした。生前父は何度も「兄夫婦と別居したい」と言っていましたが、兄夫婦は一切耳を傾けず、父の家に居座り続けました。

父は「兄には遺産をやりたくない」といつもこぼしていたので遺言書にはそれなりの事が書いているはずでしたが、灰となった今、内容を知る由もありません。

兄は、遺言書が自分にとって不利益な内容であると分かって燃やしたのは、間違いありません。しかし、あまりの横暴さに私と弟の怒りは収まらず、こうなれば家も土地も売却して、遺産を3等分し、兄とは絶縁するつもりでいました。

そんな折、遺言書を燃やす行為は「相続人の欠格事由」にあたるということを知り、兄に詰め寄りましたが、兄は証拠がないと開き直り、兄嫁も加勢して収集がつきません。父の心情を思えば、兄夫婦を許すことが出来ず、兄に遺産を渡さないことができれば、父の供養にそのお金を充てたいと考えています。前のとおり、兄とは絶縁しても何の後悔もありません。何かよい方法はありませんでしょうか。

相続欠格とは?

まず、相続欠格とは、簡単に説明すると「相続する資格がなくなること」を言います。

相続する資格がない?相続欠格とは?

相続人(相続を受け取る資格のある人)は、基本的には被相続人(故人)と一定の身分関係にあれば相続人になりますが、場合によっては、相続人であ...

相続人の欠格事由5つ

事由)1 故意に被相続人あるいは相続について先順位・同順位の相続人を殺し、又は殺そうとして、刑に処せられた者

要件としては、実刑を受けたことが条件。執行猶予付きの場合は、見解が2つにわかれており、その期間を経過すれば欠格とならない、執行猶予の有無に関わらず欠格事由に該当するとする見解に分かれている。なお、過失致死や傷害致死は該当しない。

事由)2 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者

殺害した者が相続人の配偶者や直系血族だった場合は、欠格にあたらないとされている。

事由)3 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

仮に詐欺・強迫があっても、遺言者が遺言を作成・取消し・変更した場合には適用されない。

事由)4 詐欺又は脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

仮に詐欺・強迫があっても、遺言者が遺言をしなかったり、取り消さなかったり、変更

しなかった場合には適用されない。

事由)5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続欠格事由の全体において、上記5つの欠格事由に該当する故意のほかに、それによって相続人が利益を得る目的がなければ欠格者とされません。

民法によれば、長男である兄のとった行為は、(5)の相続人の欠格事由に該当すると思料致します。該当すると認められれば当然、法律上、相続権を失うことになります。

相続欠格者にも代襲相続は適応される

仮に、相談者の兄が相続人欠格となっても、兄に子供がいる場合には、その子供が相続人となります。

相談内容では、子供の有無は分かりませんが、兄に子供がいた場合、その子供は相談者とその弟さんと同じだけの遺産を相続することになります。子供が複数いる場合は、法定相続の3分の1を、子供の数で更に等分することになります。

相続人が相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったとみなされ、例え子供がいても代襲相続にはなりませんが、相続欠格の場合は代襲相続が発生することは注意が必要です。

また、相続人欠格によって相続権を失うのは、特定の被相続人に対する関係だけに限定されます。今回のご相談事例の場合は、お父様の遺言書を燃やしてしまった兄は、お父様の相続については相続人となることができなくなる可能性がありますが、将来、別の親族や二男・三男に相続が発生した場合、それぞれに子どもがいなければ、相続人となり得る可能性があります。

相続欠格の手続き方法・進め方

欠格事由については、特別な手続きはありません。

欠格事由とされた人が認めれば、相続欠格に該当することを証明する書類(特に規定はありません)を作成し、捺印をしてその印鑑証明書と一緒に提出すれば、預貯金の解約や、不動産名義の変更も可能です。

しかし、残念ながら、相談者の兄のように遺言書を燃やしてしまうような人が、欠格事由を認め、簡単に書類の提出に応じるとは考えられず、その上、燃やした証拠を求めるような状況にある場合、利害関係人間での話し合いで解決することは難しいと思います。

このような場合には、兄に対し「相続欠格事由に該当することを確認する」ことを求める訴訟を起こし、勝訴した判決文を添付して各々の手続きを進めていくことが賢明と考えます。

相続に関する困りごとは弁護士に相談を

拗れた案件を、利害関係人間で解決することは難しく、さらに問題が大きくなるだけではなくお互いの感情がぶつかり精神的なダメージも避けられません。

もし不安なことがあれば、弁護士へ相談してみましょう。

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