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「空き家対策特別措置法」が施工!相続後に空き家売却すると減税になる?

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更新日:2018年12月29日
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2015年5月26日より、「空き家対策特別措置法」が施行されました。

近年、空き家数が過去最高の819万6,400戸となり、空き家率も過去最高13.5%(7戸に1戸空き家)となりました。社会的な問題となっている「空き家問題」ですが、相続後に空き家に情があるため売却していないケースなどもあるそうです。

HOME’S PRESSの調べでは、「親族から家を相続したことがある方」480人を対象に行ったアンケートによると、16.7%が「空き家状態」にあると回答。

HOME'S PRESS「相続した家はその後どうしたか」アンケート

相続した家はその後どうしたか
http://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00064/

それでは、空き家が増える傾向を、「相続と税金」の点から考えてみましょう。

二次相続と実家・居住地の問題

二次相続というのは、厳密な意味での法律用語ではありませんが、一般的には、夫が死亡した際に妻が相続し(一時相続)、その後、妻が死亡したときに子世代が相続することをいいます。

核家族化が進んだ現代社会では、子世代は実家を出てそれぞれ家庭を持っており、父母が亡くなった後も実家に住む予定はないというケースが多いでしょう。

しかし、人の住まない建物はいたみが早いと言われており、定期的に換気や通水などをしなければなりません。庭がある場合には庭木の手入れや雑草の駆除なども必要になるでしょう。

このように、実家から遠く離れた場所に住んでいる場合には、建物の維持・管理は大きな負担になります。

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更地にすると使えない「固定資産税等の軽減税率」

管理が大変なので、いっそ建物を取り壊せばいいのではないかと考える人もいるでしょう。

しかし、建物を取り壊して更地にしてしまうと、税金面で大きな不利益があります。

土地の所有者に対しては、固定資産税・都市計画税という税金が課されるのですが、土地の上に建物が立っている場合には、税金が軽減されます。具体的には、

・固定資産税

①小規模住宅用地(200㎡以下の部分)   課税標準×1/6

②一般住宅用地(200㎡を超える部分)   課税標準×1/3

・都市計画税

①小規模住宅用地(200㎡以下の部分)   課税標準×1/3

②一般住宅用地(200㎡を超える部分)   課税標準×2/3

になります。

建物を取り壊して更地にすると、この税金軽減の特例が受けられなくなってしまうのです。

また、建物の取り壊しには、高額の解体費用(廃材の処理費用も含む)がかかってしまいます。

そのため、すぐに土地を更地にする理由がない場合には、費用をかけて建物を取り壊して税金の負担が大きくなるぐらいなら、誰も住む予定はないけど建物はそのまま置いておこうと考える人が多く、結果として空き家が年々増加していきました。

空き家増加による問題

以上のような理由で空き家が増加したのですが、空き家には次のような問題があります。

建物のいたみが早い

人が住んでいない建物は老朽化が早いと言われています。

また、老朽化が進んだにもかかわらず、誰も住んでいないため適切な修繕等が行われていないことも多く、地震、台風等の災害時に倒壊するおそれがあります。

近隣への影響

庭木や雑草の手入れがされないことで、景観を損なうことがあります。また、雑草が生い茂ることで害虫が繁殖しやすく、近隣の居住者にも迷惑をかけることが考えられます。

犯罪の温床

空き家として放置されていると周囲に知られると、不法投棄の場所として利用されたり、不審者に侵入されたり、放火の対象となるリスクがあります。

このような空き家問題への対策のために、空き家等対策の推進に関する「特別措置法(空き家対策特別措置法)」が施行されました。

空き家問題対策「空き家対策特別措置法」とは

  1. 著しく保安上の危険となるおそれがある
  2. 衛生上有害となるおそれがある
  3. 著しく景観を損なっている

などの空き家を「特定空き家等」として、

市町村などの自治体が空き家の所有者に対して、以下のような措置を講じることをを定めています。

  1. 除却、修繕、立木竹の伐採等の助言又は指導
  2. 助言又は指導をしても改善しないときは、猶予期限をもうけて改善するよう勧告
  3. 勧告を受けても、正当な理由がないのに勧告された措置を取らないときは、猶予期限を付けて改善命令
  4. 改善命令にもしたがわない場合には、強制対処

今までは強制的な効力は無かったのですが、この法律では行政が強制的に撤去し、かかった費用を持ち主に請求できる「代執行」も可能としています。

これらの対策は、空き家が問題になった場合に行政が所有者の意思に反して強制的に措置を講じることを認めたものですが、問題が発生してから対応するだけではなく、そもそも空き家問題を発生させない努力が並行して必要と言えます。

そこで、この法律は、空き家増加の原因の一つが「固定資産税・都市計画税の軽減である」と指摘されていたことへの対策として、特定空き家等にあたり、市町村から改善勧告を受けると、固定資産税・都市計画税の軽減の特例から除外することとしました。

空き家の売買を促進「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」とは

空き家の売買を促進することで空き家を減らすため、平成28年の税制改正大綱に「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が含まれました。

これは、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、次の要件にあてはまる売買をした場合に「3000万円の特別控除を適用する」というものです。

要件というのは、

① 建物に関するもの

・相続の開始直前まで自宅として使用されていた建物であること

・昭和56年5月31日以前に建築された建物であること(マンションなど区分所有建物を除く)

・相続の開始直前まで被相続人以外の者が住んでいなかったこと

② その他の要件

・相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡するものであること

・売却価格が1億円以下であること

・相続開始から譲渡のときまでに、貸したり、事業や住宅として使用していないこと

・地震に対する安全性に係る規定に適合すること

です。

期限が限られていますので、該当する不動産を所有している方は、売却を検討されてはいかがでしょうか。

この記事の著者

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相続相談弁護士ガイド 編集部

相続問題に関することを専門家と連携しながら情報発信しております。 悩んだり、わからないことがあるときは参考にしてください。 どーしてもわからない場合は、一度弁護士に相談するのもいかがでしょうか。

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