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【弁護士監修】海外移住すれば相続税はゼロになるのか?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2023年06月26日
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相続税でかなりの金額をとられ、結局のところ手元に財産が残らない、もしくは相続税のために別の財産を売却して捻出するといったことが日本では行われています。

出来れば相続税を払わずに済ませたいと多くの人が考え、一つの手として海外移住すれば相続税はゼロになるのではないかと思い付く人も中にはいます。世界を見渡すと、相続税が掛からない国というのがいくつか存在します。

アジアでいえば、香港、シンガポール、マレーシア、他ではオーストラリア、カナダが相続税が掛からない国として有名です。この国などに今ある財産を全て移動させてしまえば、相続税はかからないということになりますが、もしこの方法で相続税を払わないようにする場合、どういうことが求められるのでしょうか。

日本の納税義務が無くなるには

日本以外の国籍になる

日本には納税の義務というものが存在し、憲法で規定されています。納税の義務の対象となる要件さえパスすれば、税金を払わなくて済むことになるのです。条件として、相続時に日本国籍を所有している場合には納税の義務の対象となります。つまり、相続時に日本国籍ではなく、別の国籍だった場合には納税の義務からは外れることになります。

そのため、いくら財産を香港やシンガポールなどの国に移したとしても、日本国籍であれば相続税を支払う義務が発生するため、そこが注意点となります。

5年以内は無効

次に被相続人が亡くなった日からさかのぼって5年の間、日本に暮らしていた人も相続税を支払う必要があります。体調を崩してきているから急いで財産を移し、国籍を変えたとしても、5年の間に亡くなり、相続が発生した場合には意味をなさなくなります。

相続財産が日本にあるものは納税対象

では、国籍を変え、海外で5年以上済んだらもう大丈夫かというと、まだ条件があります。それが相続財産が日本にある場合です。土地や建物など、日本に残されている場合、いくら国籍を変え、5年以上海外での生活をしていたとしても相続が発生し、相続税を払わなければなりません。以上が、条件となります。

いかにハードルが高いかがこれだけでもよく分かります。大事なことは、国籍が海外にあること、5年以上海外に住んでいること、そして、財産をすべて日本国内から出していること、これら全ての条件を満たした時に相続税のゼロが現実味を帯びてくるのです。

財産を日本国外に移すにはどうしたら良いか

しかしながら、ここで問題があります。

日本以外の国籍を取得する必要があります

どうやって財産を日本国内から国外へ移行させるかというものです。やるべきこととしては、まず日本以外の国籍を取得することです。そして、5年以上住むと思われる土地において銀行口座を開設し、そこに日本にある財産を全て移し替えることで完了します。また、外国株を購入することで財産を移行させることも可能です。しかし、これはあくまで財産のほとんどが現金や株式などのケースです。

土地や不動産を持っていたら

もし、日本に多くの土地を抱えている場合、これらをすべて処分し、現金にし、それを海外の口座に移動させるというのは極めて手間がかかるだけでなく、売却益などの税金、所得税などがかかるだけでなく、税務署から狙われることになります。ですので、土地を急いで処分するというのはあまり得策ではありません。

手間に対して結果どうなるのか事前に調べておきたいところ

もちろんそれをして、やるべきことを全てやって、それでいて財産を移せば相続税はかかりません。しかし、それで手元に残るお金、それをしないことで失うお金、そして、手元に残るお金のコスト、代償としてそれがふさわしいかどうか、こういったことを事前に考えておく必要があると言えます。

きちんとした手続き・手順を踏まないと追徴課税を払うことに

中には国籍の変更など全てを吹っ飛ばして、財産だけを移して払わずにおこうとする人もいますが、税務署はこうした動きを見逃すことはありません。確実に追徴課税などを支払うことになり、泣きを見ることになるので絶対にやめましょう。

以前からこうした節税の動きが見られ、その結果、規制の強化が行われ、今に至ります。そして、国籍を変えるなどのことをしない限り、税金から逃れることができなくなっています。

仮に失敗してしまうとどうなるのか?

こうしたことを画策し、仮に失敗してしまうとその代償はあまりに大きいものになります。まず、永住権や長期滞在用のビザの申請が断られる可能性が一気に高まります。節税による移住はおろか、不法行為が疑われ、入国を拒否され、結果としてビザが下りないということも出てきます。

また、事前にビザを取得していたとしても、それで安全ということはなく、入国検査官がビザの取り消しを判断すればその時点でビザは無効となってしまいます。つまり、怪しまれることなく、移動を重ね、そして国籍を変え、財産を現金化し、海外で口座を作り、それを移して5年以上暮らすことが求められます。

相続税は最近になり増税となり、払うべき税金が増え、こうしたことで節税を図ろうとする人が増えています。しかし、その分、別のルートで相続税を減らすこと、そして、子や孫などに非課税の枠で贈与し、結果として節税に成功している人もいます。こうしたケースを照らし合わせた上で、検討してみるようにしましょう。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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