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【弁護士監修】内縁関係(内縁の妻・夫)での相続問題

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2020年09月23日
内縁関係(内縁の妻・夫)での相続問題のアイキャッチ

ご相談の多いお話として、婚姻関係を結んでいない「内縁の妻・夫」での相続の問題について、実際にあった相談を基に説明させて頂きます。

ご相談事例

私たちの両親は、私と妹が幼少の頃に離婚しています。
私は母に引き取られたため、父とは疎遠になっていたところ、この度、父が病気で亡くなった旨の知らせを受けました。
父は母と離婚した後、10年以上にわたり生活を共にしていた、所謂、内縁関係の女性がいたようです。事情は分かりませんが、その女性と再婚まではしていませんでした。

父は亡くなる数ヶ月前から入退院を繰り返していたようですが、その内縁の女性が看病をしながら生活していたとのこと。父の死後、葬儀については、その内縁の女性が喪主となって執り行ったと聞きました。

この度、その内縁の女性から連絡を受け、父の預金通帳等を受け取りました。通帳の内容を確認したところ、父が亡くなる直前から複数回にわたり現金が総額で1000万円ほど引き出されており、父が亡くなった時点では、殆ど残金はありませんでした。
不審に思った私は、その女性に尋ねたところ、引き出したお金は父の医療費や葬儀代などのために予め出金していたもので、治療費で150万円、葬儀費用に150万円、あとの700万円は私が貰ったものだとの主張されてしまいました。

また、父は自己所有の家にその女性と同居していたようですが、その家は出ていくので、あとは好きにしてほしい、などと勝手なことを言うばかりです。
内縁関係だけでは相続することはできないと思うのですが、このような場合、どうすれば良いのでしょうか。

弁護士からの見解とアドバイス

本件のように、両親の離婚に伴い、親の一方に引き取られた後に、他方の親と疎遠になってしまうような事例は決して少なくないようです。特に子どもが幼少の頃に両親が離婚し、その後、親が再婚して新しい父や母を迎えたようなケースでは、特にご相談を多くいただきます。

まず、本件の場合の法定相続人は、実子である相談者姉妹のみであり、法律上の婚姻関係になかったその内縁関係の女性は、法定相続人になりません。

上記の相談内容からすると、相続開始時において、被相続人が有していた財産は、自宅の不動産だけということになります。内縁の女性もその家から退去するようでしたので、その自宅については相談者姉妹2人で遺産分割するだけですので、さほど大きな問題にはならないと思われます。現物を残して、どちらかが住むこともあるでしょうし、第三者に貸して賃料収入を得ることもあるでしょう。あるいは、その不動産の売却ができれば売却代金を分割することも考えられるでしょう。

本件については、被相続人名義の口座から生前に引き出されている現金700万円が争点となりました。
使途として、内縁の女性から説明された、「治療費」「葬儀費用」「贈与」それぞれについて検討してみたいと思います。

治療費の扱いは?

まず、「治療費」については、被相続人の債務として考えられているため、通常、遺産分割を行った場合でも、一般的には相続財産から支出することが多いようです。

葬儀費用の扱いは?

次に「葬儀費用」ですが、葬儀費用について様々な見解があり、裁判所の判断も分かれています。
葬儀は被相続人の亡くなった後に執り行うため、被相続人が生前に契約していたような場合を除いて、その費用は相続開始後に生じた債務となるでしょう。また,債務が発生した時点で被相続人は生存していないので、被相続人の債務ということもできません。

そうすると、葬儀費用は誰が負担すべきであるのかということが問題となりますが、葬儀費用が相続開始後に生じた債務であること、被相続人の債務ではないことから、最近では原則として喪主、つまり実質的に葬式を主宰した者が負担するという考え方が有力になってきています。少なくとも、「葬儀費用は遺産から支払うのが当然である」とは言えない状況なのです。
したがって、この葬儀費用をどこから負担するかについては、話し合う余地があるのではないかと考えます。

贈与の扱いは?

そして「贈与」については、生前に父とその女性との間にどのような贈与契約があったか否かの問題も残りますが、仮に贈与があったとするのであれば、それに対して遺留分減殺請求ができるか否かが問題となります。

遺留分減殺請求の相談事例

本件のように、被相続人が、生前に第三者に贈与をしていたような場合、遺留分減殺請求の対象となる贈与は、
①相続開始前の1年間にした贈与(民法第1030条前段)
②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にした贈与(1030条後段)だけです。

したがって、本件については、遺留分減殺請求の対象となるのですが、そもそも不動産が相続財産としてあるため、不動産の価格によることとなります。
仮に不動産の価値が500万円であったとすると、その500万円に生前贈与の700万円を加えた1200万円がみなし相続財産となり、ご相談者の遺留分相当額は300万円となります。不動産のうち、法定相続分である250万円しか相続していなければ、50万円は遺留分として請求できることとなります。

しかしながら仮に、不動産の価値が1000万円であったとすると、1700万円がみなし相続財産となり、ご相談者の遺留分相当額は425万円となりますが、不動産を法定相続分で相続したとすると、既に500万円分は相続したこととなりますので、遺留分減殺請求をすることはできないこととなります。

以上のとおり、相続については、いろいろな要素が絡んでくることも多く、一つ一つを慎重に検討しながら進める必要があります。
そもそも、遺産分割は相続人の協議によるものであり、話し合いによって自由に財産を分けることができますが、今回のように相続人以外の第三者が加わることによって、話し合いがより複雑になることもあります。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

相続は、どなたにも身近で起きる出来事です、しかし、感情で揉めてしまったり話し合いで解決出来ないことも少なくありません。 相続時には色々なトラブル・悩みが発生するものです、私の40年間という弁護士経験のを元に事例や状況に沿って対処法を電話でも解説可能...

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