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配偶者の貢献が配慮される?民法改正で相続ルールが変わる?

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更新日:2022年07月27日
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現在、民法上の相続ルールの見直し作業が法務省により進められています。

改正が検討されている主な項目として、下記の7点が挙げられます。

配偶者の居住権の保護

配偶者の一方(被相続人)が亡くなったとき、被相続人と長年同居したもう一方の配偶者は、住みなれた家にそのまま住み続けることを希望する場合が多いでしょう。

しかしながら、その家が被相続人名義であった場合には遺産分割の対象となるため、他の相続人がいるときは残された配偶者が当然に無償で住み続ける権利を有することにはなりません。

他の相続人から家も含めた遺産分割を求められた場合、これまでは残された配偶者が家を取得したり、家を取得した他の相続人との間で賃貸借契約を結ぶなどの処理をしてきましたが、必ずしも他方の配偶者が家を取得できるとは限りませんし、家を取得した他の相続人との間で賃貸借契約が成立するとも限りませんので、他方の配偶者の居住権は十分に確保されているとは言えません。

そこで、残された配偶者の生活保障の観点から、

  1. 遺産分割が終了するまでの短期的な居住権を保護するための方策
  2. 配偶者の居住権を長期的に保護するための方策

が検討されています。

配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現

現在の法律では、配偶者の相続分は一定の割合で定められています。

ですから、結婚後間もなく配偶者を亡くした場合でも、高齢になってから結婚した場合でも、結婚後長期にわたり夫婦として支え合ってきてその結果財産を築いた場合でも、婚姻期間は長くとも長期にわたり別居しており、夫婦としての実体がないような場合でも、配偶者である以上、同じ割合となります。

このような画一的な処理は公平に反するのではないかということで、配偶者の貢献に応じた遺産分割を実現する方策が議論されています。

具体的には、

  1. 遺産分割に先立ち、離婚の財産分与に準じて実質的な夫婦の共有財産を清算する
  2. 遺産を実質的な夫婦の共有財産と、被相続人の固有の財産に分け、配偶者の相続分を変動させる(例えば、実質的な共有財産は2分の1、残りの遺産については現行法の法定相続分より減少した一定の割合を法定相続分とする)

などが議論されています。

寄与分制度の見直し

寄与分とは

遺産分割の際に相続人の貢献を考慮する制度として、寄与分があります。

寄与分は、「被相続人の財産の維持又は増加」に「特別の寄与」があった場合に認められるもので、「特別の寄与」とは、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される限度を超える貢献を言います。

介護・療養看護とは

被相続人の介護(療養看護といいます)も、通常期待される限度を超える貢献と言える場合には、寄与分が認めらます。

しかしながら、療養看護については、「子が年をとった親の世話をある程度するのは当然である」ということで、通常期待される限度を超えないとされることも少なくありません。また、療養介護の場合、一部の者が専ら行っており、相続人間で貢献に偏りがある場合も多いのですが、現行法は「被相続人の財産の維持又は増加」を要件としているため、介護の貢献を十分に反映できません。

そこで、現行の寄与分の制度のほかに、相続人間で療養看護についての貢献に著しい差異がある場合にも、寄与分を認めることができる方策が議論されています。

遺留分制度の見直し

遺留分とは、一定の相続人(兄弟姉妹以外)が最低限相続できる財産の割合です。

例えば、特定の相続人に全ての遺産を相続させるという遺言をしても、他の相続人は最低限遺留分に相当する財産を確保することができます。

しかし、遺留分には、

  1. 相続人の貢献が反映されない

    遺留分は一定の割合で定められているので、例えば配偶者が長年にわたり被相続人を支え、遺産の維持・増加に貢献したというような場合でも、配偶者の貢献は反映されません。

  2. 相続による法律関係を柔軟かつ一度に解決できない。

    特定の相続人に全ての財産を相続させるという遺言をした場合、遺留分を侵害された他の相続人は、遺留分を確保するために必要な限度で、遺贈されたものの返還を求めることができます(遺留分減殺請求権の行使といいます)。

    遺留分減殺請求権が行使されると、遺留分の確保に必要な限度で遺贈の効力が失われ、遺贈されたものは相続人間の共有となるのですが、この共有状態を解消するには別途共有物分割等の手続が必要になります。

    また、遺産分割には家庭裁判所の調停・審判手続が用意されていますが、遺留分減殺請求訴訟通常の民事訴訟と扱われ、家庭裁判所ではなく地方裁判所の管轄とされており、両者を扱う裁判所、手続が異なることも柔軟かつ一度で紛争を解決する障害となっています。

  3. 事業承継の障害になっている

    被相続人が事業を営んでいる場合、自分のあとは特定の相続人に事業を継いでほしいと考えることはよくあることでしょう。その場合に、会社の株式や店舗等事業用の財産をその相続人に相続させるという遺言を作成したとしても、他の相続人に遺留分があるために全ての事業用財産を承継することができなかったり、②で指摘したように他の相続人の遺留分減殺請求により事業用財産が共有となり、別途共有物分割手続きが必要になる等スムーズな事業承継ができない可能性があります。

という問題があります。

相続人以外の者の貢献の考慮

(3)で寄与分について触れましたが、寄与分が認められるのは、相続人の貢献です。ですから、例えば、ある人が農業を営んでおり、息子の妻が農業を手伝っていたとしても、息子の妻は相続人にはあたらないため、その貢献は相続において考慮されません。

遺産の維持・増加に貢献した者(上の例でいえば息子の妻)が何らの権利も認められず、貢献していない相続人が遺産を取得するのは不公平ではないかとの議論があります。

預貯金等の可分債権の取扱い

預貯金等の可分債権(性質上分割が可能な債権)は、相続開始によって、法定相続分に従い当然に相続人に分割され、遺産分割の対象にはならないとされています。

たとえば、遺産として自宅の土地・建物と預貯金の身がある場合、預貯金は法定相続分にしたがって当然に分割されたことになり、土地・建物のみが遺産分割の対象となる、ということです。

しかし、相続人の一部が被相続人と同居していた場合のように、特定の相続人のみが土地・建物を取得することを希望することも多く、そのような場合には各自の取得分が法定相続分に釣り合うよう調整する手段として預貯金等可分債権が役に立ちます。

そこで、預貯金等可分債権も遺産分割の対象となる財産とすることが検討されています。

遺言

遺言にはいくつかの方式がありますが、費用がかからず簡易な方法として、自筆証書遺言があります。

現行法では、自筆証書遺言は全文、日付、氏名を自分で手書きすること、内容を変更するには、変更場所を示し、変更した旨を付記し、押印することが要求されています。

自筆証書遺言は、公正証書遺言のように第三者が関与することがないので、偽造・変造のおそれがないように厳格な要件が定められたのですが、このような要件をみたさない場合には遺言が無効とされてしまいます。

また、全文の自書を要求することは、高齢者や障害を持つ方にはそれ自体が大きな負担となります。

そこで、自書を要求する範囲を限定したり、押印を不要とする等の方策により自筆証書遺言の要件を緩和することが検討されています。

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