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【弁護士監修】亡くなった祖母(祖父)が孫名義の預金をしていたら

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年02月08日
亡くなった祖母(祖父)が孫名義の預金をしていたらのアイキャッチ

亡くなった父方の祖母が、生前に、孫である私の名義で預金をしてくれていたことがわかりました。祖母が亡くなっていますが、その預金を受け取る事は可能でしょうか。

このような場合、いろいろなケースが考えられます。

孫の名義で預金で考えられる2つのケース

ケース1 名義預金・借名預金の場合

名義預金」とは、故人が配偶者や子・孫などの名義で預金をしているもので、形式的には家族の名義で預金しているものの、実質的には真の所有者が故人である、つまり、親族に名義を借りているに過ぎない預金のことをいいます。

今回のご相談のケースでは、祖母の死後、「口座名義が孫の名前になっている預金があることが発覚したとのことで、孫は文字通り名義人なので、その預金は孫のものだろう」とお考えになる方もいらっしゃると思います。しかしながら、実際には預金するための現金を所有していたのは故人であり、銀行に預けたのも故人です。それでは、何のために預金をしたのでしょうか。孫にあげるつもりだったのか、自分の財産を隠すつもりだったのか、それは定かではありませんし、確かな証拠もありません。

明らかなことは、故人のお金が、故人によって、孫名義の口座に預けられていたという事実のみです。このような預金の形が、いわゆる「名義預金」とか「借名預金」などと呼ばれており、基本的にその預金は、本当の預金者である故人のものであるとみなされてしまいます。つまり、孫の名義を借りているにすぎないと解釈され、相続財産として遺産分割の対象となるべきものに含まれることになります。たとえ孫の名義になっているからといっても、真の預金者が故人であったのであれば、孫のものになるとは限らないのです。

ケース2 贈与の場合

贈与とは、当事者間の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生じます(民法第549条)。

つまり、贈与する側と、贈与される側が「あげます~もらいます」という意思表示がそろって合意をすることによって贈与契約が成立するのです。その時、口約束でもよいのですが、他の相続人が認識するのが、相続の発生時が多く、一方の主張しか他の相続人等は確認をすることができません。後の親族間でのトラブルを防ぐためにも、当事者双方の意思確認の証明として、贈与契約書等の書面に残しておかれたほうがよいかと思われます。

名義預金にならないための4つのポイント

名義預金の問題は、相続においてよくあるトラブルです。

今回の相談事例のように、祖父母が孫の名前で預金しておくことで、孫に資産を譲り渡すことができたと認識されている方も多いと思います。ところが、上記でも書いたように、贈与は、贈与する側からの一方的な意思表示では成立せず、受け取る側からも意思表示しなくして成立はしません。せっかく孫の為に預金していたとはいえ、孫がもらいますという意思表示をしないまま預金をされていても、贈与したということにはなりません。

以下に、名義預金とみなされないためのポイントを挙げてみましたので参考にしてみてください。

ポイント1. 贈与契約書の作成

贈与契約自体は口約束でも成立してしまうため、贈与契約書の作成は贈与とされるための絶対的な要件ではありません。

しかしながら、贈与の内容をきちんと書面にしておくことで、贈る側(贈与者)も受け取る側(受贈者)も、贈与の意思表示を明確にしておくことができるため、贈与があったことを証明する書類として非常に重要なものであると考えられます。ただし、贈与契約書を作成するにあたり、受贈者が孫など、未成年者である場合には、親権者等の法定代理人の同意を得る必要があるケースもあります。

また、数年にわたって贈与しようとする場合には、その都度、贈与契約書の作成をした方がいいでしょう。

ポイント2. 預金通帳や証書の管理

預金通帳などを生前に故人が管理していたり、受贈者がその口座の存在を相続が開始されるまで知らなかったりするような場合、その預金の真の所有者は贈与者であった故人であり、実質的には贈与していないとみなされ、相続財産の一部となってしまうことが考えられます。

また、贈与者と受贈者の銀行届出印が同一である場合なども注意が必要です。贈与しているのであれば、受贈者が管理していることが認められる必要があるので、銀行の届出印は、受贈者自身の印鑑で届け出る方がよいでしょう。

ポイント3. 受贈者が使用できるかどうか

贈与の場合、贈与された財産は、受贈者が自由に使用できるものであると考えるのが一般的ではないでしょうか。たとえば、祖父母が孫のために開設した口座にあるお金を、その孫が自由に引き出したりすることができる状況であればよいのですが、その孫が引き出したりできる状況でなかったり、またその口座への入出金を行っているのが明らかに祖父母であったりする等、その預金口座を贈与者が使用していると認められてしまうような場合は、贈与されていないとみなされる可能性が高まってしまうでしょう。

ポイント4. 贈与税の申告

贈与された財産について、受贈者は贈与税申告をする必要があります。

現行の税制度においては、年間の贈与財産の合計額が110万円以下であれば贈与税が課せれないので、贈与税を申告する必要はありません。

しかしながら、年間110万円を超える額の贈与をして贈与税を申告することで、贈与の事実を証明する書類として申告書を残すことも考えられます。

以上、贈与とみなされるためのポイントをいくつか挙げましたが、これらを総合的に勘案して、名義預金かどうかが判断されることになります。

せっかく、孫のために残したつもりでいた預金が、ご自身の相続の際に、思いがけずトラブルの原因になってしまうこともあり得ます。

上記のポイントに留意した上で、法定相続人以外の方へ財産を渡したい場合には、名義預金と認定されないように贈与を行ったり、遺言書を遺しておいたりするなどの対策を講じる方が宜しいかと思います。

ご自身の思いをきちんとしたかたちで現すためにも、もし、お悩みのようであれば、お気軽に専門家にご相談ください。

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今回の事例のように、遺産相続には名義預金や贈与など、さまざまな法的な複雑さが伴います。そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

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