岩永 和大 弁護士
川崎パシフィック法律事務所
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相続税の申告書の提出期限は、相続開始日の翌日から10カ月目の日です。
提出期限が土日祝日に当たる場合は、その翌日が期限となります。
ここでは、相続税の計算方法や申告の進め方、税金の控除などを説明していきます。
控除など特例を受け、相続税を納める必要がなくなった場合でも、申告はしなければなりません。不備なく手続きを進められるよう、しっかり準備していきましょう。
また、延納や物納が可能なケースもありますので、スケジュールを立てて進めましょう。
相続が課税対象となる要因には、以下の3つです。
➀相続による財産の取得
➁遺贈による財産の取得
➂死因贈与による財産の取得
※相続時精算制度の適応を受けて贈与による財産を取得していた場合も、相続税が課税されます。
相続税は基礎控除額が大きく、課税価格の合計額から「3000万円+600万円×法定相続人の人数」の額が控除されます。また、以下のケースで非課税もしくは減額となります
(1)配偶者には特別の軽減措置があり、法定相続分または1億6000万円以下は非課税
(2)生命保険や死亡退職金は「500万円×法定相続人の人数」の額まで非課税
(3)一定規模以下の居住用や事業用の土地は、「小規模宅地等の特例」により相続税評価額が80%減または50%減となる
相続では財産を取得した者、全員が必ず相続税を納めるわけではありません。相続税には全ての納税者に無条件で適応される基礎控除が設けられています。
基礎控除の額は「3000万円+600万円×法定相続人の人数」です。
仮に、法定相続人が配偶者と子供2人のケースであれば、基礎控除の額は4800万円です。
この場合、取得した財産が4800万円以下であれば、相続税が課されることはありません。
財産を取得したそれぞれの課税価格の合計額が、遺産にかかる基礎控除額を超える場合、その財産を取得した人は相続税の申告をする必要があります。
また、「小規模宅地等の特例」などを適応することにより、課税価格の合計額が遺産にかかる基礎控除以下となる場合には、納税額そのものはゼロとなりますが、相続税の申告が不要になるわけではありません。
相続は、人が亡くなった時から始まり、相続人には取得した財産に応じて相続税が課されます。
人は生前、所得に応じて所得税を納めています。しかし、亡くなった後にも税金が課されるのは、なぜでしょうか?
大きな理由の一つに「富の再分配」があります。日本では、特定の人物に集中した資産がそのまま次代へ受け継がれると、経済的な機会平等が損なわれてしまうため、相続税を徴収して社会に還元するという考えを採用しています。です。
国税庁によると、2015年、日本では129万444人が亡くなり、そのうち、相続税の課税対象となった被相続人(亡くなった方)は10万3000人でした。課税割合は8.0%で、課税価格は14億5554円。被相続人1人当たりの課税価格は1億4126万円で、実際の税額は1人当たり1758万円という結果になっています。
これらの数字からも分かるように、相続した全ての人が課税されるわけではありません。また、課税価格から「3000万円+600万円×法定相続人人数」で算出した金額を基礎控除として差し引くことができます。
つまり、遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税は発生しないのです。遺産の額がそれ以上であっても、配偶者の税額控除といった特例を適応することで、相続税の支払いがゼロになる場合があります。
相続税は、基本的に個人に対して課税されます。法人が相続によって取得した財産に対しては、法人税が課されます。
ただし、町内会・同好会や公益法人が遺贈などで財産を取得した場合は、課税されるケースがあります。
項目 | 詳細 |
---|---|
家屋 | ・家屋(建物、門、堀・庭園などの設備) ・構築物(駐車場、養魚池、広告塔) |
現金、預貯金 | ・現金、預貯金、小切手、金銭信託 |
有価証券 | ・株式、出資(上場株式で取り引きされていない同族株・出資) ・公債、社債、証券投資信託、貸付信託の受託証券 |
土地 | ・田、畑(自作農、貸農地) ・山林(普通山林、保安林) ・宅地(事業用、居住用、貸宅地、貸家建付地) ・その他(原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地) |
土地の上に存在する権利 | ・田、畑の耕作権、永作権 ・宅地の地上権、温泉権 |
事業(農業)用資産 | ・減価償却資産(農具、機械器具、器具備品、車、船、営業権) ・棚卸資産(商品、製品、半製品、原材料、農作物) ・その他(売掛、手形、貸付金) |
家庭用財産 | 家具、備品 |
その他 | ・立木、加入権、書画骨董品、宝石、事業に関係のない車 ・特許権、著作権、貸付金 ・未収の地代や配当金、ゴルフ会員権 |
実際にどれくらいの相続税がかかるのか、調べてみましょう。
相続人/遺産の価額 | 1億円 | 2億円 | 3億円 | 5億円 | |
---|---|---|---|---|---|
配偶者 子供1人 |
配偶者 子 |
0万円 175万円 |
0万円 1,250万円 |
0万円 2,900万円 |
0万円 6,900万円 |
配偶者 子供2人 |
配偶者 子 子 |
0万円 50万円 50万円 |
0万円 475万円 475万円 |
0万円 1,150万円 1,150万円 |
0万円 2,925万円 2,925万円 |
配偶者 子供3人 |
配偶者 子 子 子 |
0万円 17万円 17万円 17万円 |
0万円 271万円 271万円 271万円 |
0万円 667万円 667万円 667万円 |
0万円 1,758万円 1,758万円 1,758万円 |
配偶者 子供4人 |
配偶者 子 子 子 子 |
0万円 0万円 0万円 0万円 0万円 |
0万円 169万円 169万円 169万円 169万円 |
0万円 450万円 450万円 450万円 450万円 |
0万円 1,188万円 1,188万円 1,188万円 1,188万円 |
※遺産価額は、各人の相続税課税価格の合計額(基礎控除を差し引く前の金額)
※表は、遺産価額に対して「相続人が法定相続分に基づいて相続した」と仮定した場合の相続税です。実際の税額は、相続した財産の種類や遺産分割の状況によって変わります。
※基礎控除額は2015年1月1日から「3000万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた金額」に変更されました。
相続税の計算は、課税遺産総額に対する相続税額の総額を求めるところから開始します。
相続税は、相続や遺贈などによって財産を受け継いだ人の課税価格の合計額が相続税の基礎控除を超えた場合にかかります。
相続税は、相続や遺贈によって取得した財産の価額について課税されます。一方、債務や葬式費用は相続によって取得した財産の価額から控除されます。
実際に課税の対象となる価額が課税価格です。では、実際に相続税の算出を4段階に沿って進めてみましょう。
相続税を計算するには財産評価がもっとも重要と言っても過言ではありません。
控除を受けた遺産の総額から、課税遺産総額を計算します。
相続によって財産を取得した人の課税価格を1人ずつ求め、課税価格の合計から基礎控除分を引いて、課税遺産総額を明らかにします。
相続財産の個々の評価方法で、宅地や事業用資産、非上場株式などの評価については税理士などの専門家が必要になる場合があります。
相続財産は、一般的に高額になる傾向があるので、相続税額にも影響が出る場合があります。課税価格には、「相続時精算課税による贈与」や「亡くなった方から3年以内に受けていた贈与」も加算します。
一方、被相続人(亡くなった方)の債務、葬儀費用は課税価格から差し引き、課税価格を合計した額が、相続税計算のもととなる遺産額になります。
基礎控除額を算出しましょう。遺産額から基礎控除を差し引き、課税遺産の総額を計算します。
基礎控除とは、誰でも無条件に適応できる控除制度で、相続税の基礎控除額は相続人が1人であれば「3000万円+600万円」です。
※課税遺産総額がプラスであっても、相続人に対する各種税額控除制度の適応などで相続税がかからない場合があります。
相続税の総額を求めます。課税遺産総額は、遺産相続によって財産を取得した全ての人で負担する相続税の総額です。相続税の総額は、課税遺産総額に相続税率をそのまま適応して算出するわけではありません。
課税遺産の総額を各相続人が法定相続分を取得したと仮定し、各相続人の相続税額を求め、その合計を相続税の総額とします。
相続する人がどれくらいの遺産を取得するかに応じて相続税を決めるという算出方法は、ずいぶん回りくどいようにも思えますが、相続人の間で税負担が公平に配分されるなどのメリットがあります。
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超~ 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超~ 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超~ 1億円以下 |
30% | 700万円 |
1億円超~ 2億円以下 |
40% | 1,700万円 |
2億円超~ 3億円以下 |
45% | 2,700万円 |
3億円超~ 6億円以下 |
50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
「法定相続分に応じた各相続人の取得金額×税率-控除額」が、各相続人の相続税額です。
この控除額は、いわゆる所得控除や税額控除とは意味が異なります。
相続税は取得額が多くなるに従って税率が高くなるいわゆる「超過累進課税」です。相続財産の取得階層によって税率が変わるので、本来は取得額を各階層に分けて、それぞれの税率によって計算しなければなりませんが、控除額を利用することで取得額に応じた正しい税額を求めることが可能になります。
各人の納付税額を求める
納付する相続税額の総額に基づき、実際の財産取得状況に応じて、各相続人に振り分けます。
割合は、課税価格の合計額に対するその人の課税価格です。振り分けによって算出した税額から、一定の相続人に対しては相続税額の加算や控除を行って、実際に納付する税額を求めます。
相続税対策でよくある手法として、子ではなく孫を養子にして遺産を相続させるケースがあります。この場合、孫の相続税額は総額に2割を加算します。孫に相続させることで、一世代(1回)分の相続税を免れるというわけです。
2割加算する場合は、加算をしたうえで、最後に税額控除の適応の有無をチェックします。被相続人(亡くなった方)の配偶者については、配偶者の税額軽減が非常に大きいためで、遺産分割で配偶者の取得割合が大きい場合、相続税の納付額にも影響があります。
税額減税を受け、納税額がゼロになった場合でも、相続税の申告書は提出が必要です。税額控除は全部で7種類あります。例として、実際に相続財産を当てはめて段階を確かめてみましょう。
相続開始前3年以内の贈与財産について贈与税を支払っていた場合は、その贈与税額を控除します。
これは、同じ財産に対して贈与税と相続税を二重に支払うことがないようにするためです。暦年課税分とは、前年1年間(12月31日~1月1日)の贈与額が110万円を超えたときに課される贈与税です。
配偶者が取得した財産については、次の計算式で控除できます。
・遺産分割(遺産の一部分割を含む)で取得した財産
・相続開始前、3年以内の贈与財産で、相続税の課税価格に加算されるもの
・相続税法上、相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産
・特定遺贈によって取得した財産
・単独の相続や包括遺贈によって取得した財産
(例)
※配偶者の相続財産の価額が1億6000万円以下の場合、配偶者の取得財産が配偶者の法定相続分以下である場合は、納付すべき相続税が発生しません。ただし、相続税の申告です。
満20歳未満の相続人は以下の計算式で控除できます。
障害のある相続人で日本国内に住所を持つ者には一定の控除があります。
今回の相続が開始する前の10年以内に亡くなった方(被相続人)が、相続、遺贈、相続時精算課税に関連する贈与によって財産を取得し、相続税が課されていた場合は、一定の金額を控除できます。
外国にある財産の取得について外国で相続税に相当する税金が課された場合に、その部分に対する相続税額を限度として、控除します。
※ここまでで相続税額がマイナスになった場合、相続税額はゼロとなります。
相続時精算課税を適応して、相続時精算課税適応財産について課された贈与税がある場合は、その人の相続税額からその贈与税額(に相当する金額を控除します。
※この金額を相続税額から控除する場合において、控除しきれない金額があるときは、還付を受けられます。還付を受けるためには、相続税の申告書を提出する必要があります。
法定相続人 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3600万円 |
2人 | 4200万円 |
3人 | 4800万円 |
4人 | 5400万円 |
5人 | 6000万円 |
※相続人が1人増えるごとに基礎控除額が600万円増加する。
一定規模以下の居住用や事業用の小規模宅地には減税の特例があり、50~80%の減税適用があります。
被相続人(亡くなった人)が事業や居住に使っていた土地に高い評価が付くと、その分相続税負担も大きくなり、場合によっては土地を手放さざるを得ないという事態に陥ってしまう可能性もあります。
そこで、相続した土地のうち、居住用は330平方メートル、事業用は400平方メートルに対して、土地の評価額を80%減額することが可能です。
不動産貸付用は200平方メートルまで、土地の評価額を50%減額できますが、遺産分割を終えていることが条件です。小規模宅地の特例は、相続税の申告期限までに遺産分割を終えていることが条件です。
しかし、特例適応前の評価額で納税した場合でも、申告期限から3年以内に分割した場合は、さかのぼって請求制度が適応されます。
特定事業用宅地とは、被相続人(亡くなった人)が事業用途に使用していた宅地のこと。この特例を適用するには、親の事業を子が受け継ぐなど、被相続人が特定事業宅地の上で営んでいた事業が相続人である一定の親族が継承したうえで、申告期限(申告日から10カ月後)までその事業を継続して営んでいることが必要です。また、同時にその土地を継承した相続人自身が保有していることも条件となります。
例えば、次のようなケースには「小規模宅地の特例」が適応されます。
A)宅地の上で親が営んでいた美容室を子が受け継ぎ、申告日から10カ月間を超えて営業業し続けた。
B)農業を営んでいた夫が亡くなり、妻がその農家事業を受け継いだ。この際、農機具収蔵や作業場などの農業用施設用地が、特定事業用宅地として特例の対象となった。
A、Bの例にもあるように、「小規模宅地の特例」の適用には、申告日の直前から申告日以降の10カ月間、事業を継承して続けること(事業継続要件)、土地を保有し続けること(保有継続要件)の2つが要件となります。
なお、この特例の対象となる事業に不動産貸付事業は含まれないことに注意しましょう。アパートや駐車場は貸付事業となるため、特定事業用宅地には該当しません。
特定居住用宅地も、被相続人(亡くなった人)、配偶者、同居していた親族が継続して申告期限まで居住し保有することが特例適用の要件です。
2世帯住宅でも、2013年の税制改正以前は、屋内で往き来ができない構造であれば別居とみなされ、特例の対象外でした。しかし改正後は、階段が屋外のみに設置されているなど、建物内で完全に分かれた住居になっている2世帯住宅でも、一定条件のもと同居とみなされ、特例の対象となるケースが大幅に増えました。
ただし、上記のような2世帯で、1階部分に父親が、2階部分に息子夫婦が住んでいたとします。その場合、建物の所有が1階と2階でそれぞれ異なったり、建物全体の所有者が父親(被相続人)であっても息子夫婦から家賃をもらっていたりすれば、別居とみなされ特例の対象となりません。
そのほか、被相続人が老人ホームや障害者支援施設などに入居・入所していた場合でも、一定の条件を満たせば適応可能となります。
アパート・貸家・駐車場といった不動産貸付の土地は、相続人が申告期限まで貸付事業を継続することにより適応されます。
※特定居住宅地については、2015年1月1日以降、240平方メートルまでだった限度面積が330平方メートルまでに拡大され、事業用宅地の完全併用が認められました。
特例を受けられるのは、該当の小規模宅地を相続または遺贈により取得した被相続人の親類です。よって、内縁関係の妻・夫が遺贈で取得したといった場合は、その他の要件を満たしていても適用されませんのでご注意ください。
特定居住用宅地、特定事業用宅地、それぞれの特例適用条件をまとめると、以下のようになります。
➀被相続人(亡くなった人)の配偶者⇒無条件で80%減額となる。
➁相続開始直前において、該当の建物に被相続人と同居しており、相続税の申告期限(申告日から10カ月)まで居住かつ保有していること。
➂被相続人に配偶者や同居していた法定相続人がいない場合、借家住まいである別居の親族が取得し、相続税の申告期限まで保有すること。
※借家住まいとは、相続開始前の3年以内に自分または自身の配偶者の持ち家に住んでいない状況を指します。別居していた子でも、借家住まいであれば条件を満たすことができます。
①被相続人(亡くなった方)が事業用として使用、または、被相続人と生計を一つにしていた親族が事業用として使用していた。
➁不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業でないこと。
➂被相続人の親族(配偶者、3親等内の姻族および6親等内の血族)であること。
④該当の宅地上で被相続人が営んでいた事業を引き継ぎ、申告期限までその事業を継続、かつ、宅地を保有し続けていること。
相続税の課税対象となるのは、金銭にも見積もることができる全ての財産です。
具体的には、被相続人(亡くなった方)の相続が開始された時点で所有していた預貯金、現金、貴金属、宝石、書画骨董品、電話加入権、土地、家屋、立木、事業・農業用財産、有価証券(株券・小切手・手形など)、家庭用財産など、一切の財産を言います。
相続税法では、被相続人(亡くなった人)が所有していた財産以外のものにも相続税を課税すると規定しています。そのため、相続税のかかる財産は本来の相続財産の他に、税法が財産と判断する「みなし相続財産(以下、みなし財産)」があります。
「みなし財産」の中で代表的なものが「生命保険」と「死亡退職金」です。どちらも亡くなった方が所有していた財産ではありませんが、「被相続人の死亡が原因となり相続として取得できる財産」という意味で、相続税法上は実質的な財産とみなされるというわけです。
生命保険金、死亡退職金ともに、「500万円×法定相続人の人数」まで「非課税控除」の適応があります。例えば、法定相続人が妻と3人の子であった場合、500万円×4=2000万円までが非課税となります。
この他、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利といったものも「みなし財産」とされます。
保険料負担者(※) | 被保険者 (保障対象者) |
受取人 | かかる税金 | 課税対象 |
---|---|---|---|---|
A被相続人(夫) | A被相続人(夫) | 相続人 (B妻またはC子) |
相続税 (みなし相続財産) |
保険金-非課税枠(500万円×相続人数) |
C相続人(子) | A被相続人(夫) | C相続人(子) | 所得税(一時所得) | (保険金-支払い保険料-50万円[特別控除])×1/2 |
B相続人(妻) | A被相続人(夫) | C相続人(子) | 贈与税 | 保険金-110万円(基礎控除) |
※税務では、保険料負担者が実質の保険契約者とみなされます。
死亡退職金は、みなし財産として相続税が課税されますが、被相続人の死亡日から3年以内に支給が確定したものに限られます。
3年を経過して支給されたものについては、「一時所得」として相続人に対して所得税が課税されることになるのでご注意ください。
死亡後3年以内の支給確定には、以下2つのケースがあります。
➀死亡退職金で支給される金額が、相続後3年以内に確定したとき
➁生前に退職していて、支給される金額が相続後3年以内に確定したとき
項目 | 詳細 |
---|---|
生命保険 | ・亡くなった方(被相続人)の死亡によって支払われる生命保険、損害保険金、共済金などのうち、被相続人が保険料を負担していたもの |
死亡退職金 | ・本来は亡くなった方が受け取るべき退職手当金で、死亡後に遺族に支払われたもの |
生命保険契約の権利 | ・亡くなった方が保険料を負担し、かつ、相続時に保険事故が発生していないもの ※権利自体は契約者が相続するものなので、保険契約者が亡くなった本人(被相続人)であった場合、本来の財産(民法上の相続財産)に含まれます。 |
個人年金の権利 | ・亡くなった方が掛金を負担していた個人年金の契約で、相続時に年金給付が発生してないために支払われる死亡給付金 ※公的年金の未支給年金は受取人個人の財産で「一時所得」となるため所得税の対象です(1995年11月7日最高裁判決)。 ※公的年金の支給を受けていた方の死亡後、契約に基づいて遺族に支給される一時金や遺族年金は相続税・所得税の対象外です。 |
年金の受給権 | 亡くなった方(保険料支払者)が保険会社から支給を受けていた個人年金で、死亡後に遺族が残りの期間について受給するもの |
退職年金の継続受給権 | 亡くなった方が支給を受けていた退職年金で、死亡後に遺族に継続して支給されるもの |
①墓所、仏壇、祭具、霊びょう
※ただし、骨董的価値のあるもの(投資対象)、商品としての所有物はや非課税財産とはみなされず、相続税の対象となります。例:純金製仏像、古美術品としての祭具など
②相続人の取得した生命保険のうち、500万円×法定相続人数までの部分(=生命保険金の非課税枠)
③相続、遺贈で取得した退職金手当などのうち、500万円×法定相続人数までの部分(=退職金等の非課税枠)
④一定の要件に該当する公益事業を行う個人などがが相続や遺族で取得した財産のうち、公益目的の事業用途であることが明確なもの
⑤個人経営の幼稚園事業用途である財産のうち、一定要件を満たすもの
※相続人がその幼稚園を引き続き経営することが条件
⑥心身障害者扶養共済制度に基づく給付金を受給する権利
⑦相続や遺贈で取得した財産を、国や特定の公益法人に寄付したもの、あるいは、特定公益信託の信託財産として支出したもの
※一般的には関係ありませんが、「皇室経済法の規定により継承するもの」も課税対象から除かれる非課税財産です。
相続財産の中には相続税に加算されないものがあります。これは国民感情・社会通念などを考慮したうえで定められています。
現在では、お墓や仏具などが非課税とされている他、生命保険や死亡退職金には、一定の金額が非課税となっています。また、公益法人への寄付金も、申告手続きなどいくつかの要件を満たす必要がありますが、国の政策的な見地から非課税とされています。
一方、相続では、プラスの財産(資産)ばかりではなく、マイナスの財産(債務)も相続財産としてみなされます。しかし、故人の借金などの債務は相続財産から控除することが認められており、これを「債務控除」と言います。
この控除される債務は、亡くなった方(被相続人)が残した借金と、その方の葬式費用に分けられます。
葬式費用について言えば、葬式の内容は形式も葬儀の種類もさまざまであるため、一律に定めることができません。しかし、税務上必要として、国税庁では一定の基準を設けています。
例えば、香典返しや墓石の購入費用などは葬式控除の対象である「葬式費用」にはなりません。基本的には、葬式に必要か不要かで決められているのです。
➀埋葬、火葬、納骨その他の費用(※仮葬式と本葬式を行う場合はいずれも含まれます)
➁読経料、お布施、弔問客のお車代、戒名料、葬式の手伝い人に対する心付けなど
➂その他、葬式の前後にかかった費用で一般的に葬式に必要と認められるもの(例:お通夜、霊柩車費用など)
➃死体・遺骨の捜索・運搬費用
➀香典返礼費用
➁法会に要した費用(初七日、四十九日法要など)
➂墓地の購入費ならびに墓地の借入料
➃医学上または、裁判上の特別の処置に要した費用
申告期限は10カ月以内で、配偶者の税額控除・小規模宅地等の減額特例といった控除の特例を受けて税額がゼロになった場合でも、申告の必要があります。
申告するには、申告書とあわせて相続財産の明細書や計算書などの書類を添付し、税務署へ提出します。主な必要な書類は以下の4点です。
相続税の申告書は多岐にわたっており、記入には手間が掛かります、税理士など専門家にお願いしても良いでしょう。
➀身分に関するもの:遺言書や遺産分割協議書の写し、親族関係の証明書など
➁財産に関するもの:登記簿謄本・相続財産の明細書など
➂債務に関するもの:借入金の明細書、葬儀費用の領収書など
種類 | 書類 |
---|---|
身分関係 | ・被相続人の(亡くなった方)の出生からの戸籍謄本、除籍謄本 ・相続人全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した印鑑のもの) ・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し ・親族関係図と被相続人の経歴書(※税務署から提出を求められることがあります) |
土地・建物 | ・登記簿謄本(全部事項証明書) ・実測図、公図または地積測量図の写し、路線価図など ・固定資産税評価証明書 ・土地賃貸借契約書(賃貸・借地の場合) ・建物賃貸借契約書(貸家の場合)など |
有価証券 | ・有価証券の保護預かり証の写し ・有価証券残高証明書(相続開始の日現在) ・非上場株式(発行会社の過去3年の決算書、申告書、内訳書) ・銘柄一覧表など |
預貯金 | ・預貯金の残高証明書(相続開始の日現在) ・預貯金通帳の写し(本人名義、家族名義)など |
保険・年金 | ・生命保険の支払い通知書の写し ・年金証明書 ・継続中の生命保険証書など |
債務など | ・借用証書など ・銀行などの借入金残高証明書(相続開始の日現在) ・未払い医療費・公共料金等の請求書、領収書 ・未納租税(国税・地方税など)の課税通知書、納付書の写し ・葬儀費用の明細書・領収書など |
その他 | ・準確定申告書(被相続人の確定申告を相続人が代わって行うもの) ・医療費の領収書など |
相続税が想定外に多かったなど、一括して納税できないこともあるでしょう。その場合は、「延納」または「物納」という手続きを取ることも可能です。ただし、以下の4点の条件が求められ、延納期間に応じて利子税が課されます。
➀相続税額が10万円を超えること
➁納付期限までに金銭での納付が困難であること
➂延納税額、利子税額に相当する担保を提供できること(延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は不要)
※所有者の同意を得られれば、他人の財産でも可能です。担保にできる財産は国債・地方債・社債、土地・建物、車などです。
➃延納申告期限までに担保関係書類を添付して延納申請書を提出すること
税金は現金で納付するのが原則であり、相続税も例外ではありません。
しかし、相続財産の大半が不動産で、手持ちの現金が少ないために金銭で納付できない場合は、物納という方法を選ぶことができます。物納の条件は以下の5点です。
また、申告期限から10年以内に限り、延納した相続税の残額部分について、延納していた者がその後の資力の変化などにより延納の継続が困難となった場合にも、物納に変更可能です。
➀延納によっても金銭納付が困難なこと
②(1)不動産・国債証券・上場株式など、(2)非上場株式等、(3)動産の順位で、所在地が日本国内であること
➂物納できる財産が「管理処分不適格財産」でなく、「物納劣後財産(相続人の居住用・事業用となっている家屋や土地など)」に当たる場合は他に物納可能な財産がないこと
・「管理処分不適格財産」とは以下の財産を指します。
A.抵当権が付いている不動産
B.権利の帰属に争いがある不動産・株式
C.境界が不明確な不動産
D.他の土地に囲まれて公道に通じない土地
E.借地権があり、その借地権の持ち主が不明である土地
F.耐用年数を経過している建物
G.管理・処分費用が収納価額より大きくなる不動産
H.風俗営業用になっている不動産
J.所有者が暴力団員等、もしくは、暴力団事務所の不動産・株式
K.質権や担保権の目的となっている株式
L.共有財産である株式(共有者全員の物納申請であれば可)など
④物納申告期限までに物納手続関係書類を添付して物納申請書を提出すること
賃借権などが設定されている土地、家屋について物納の許可を受けた後に、金銭での一時納付、または延納が可能になったときは、物納の許可を受けてから1年以内に申請することで、物納を撤回できます。
ただし、物納を撤回したい財産がすでに売買されていたり、公用・公共として利用もしくは利用予定であれば、撤回は承認されません。
相続税の申告は、生涯で数度あるかどうかでしょう。申請後に、新たな財産が出てきたというケースも珍しくもありません。
しかし、申告の間違いをそのままにしていると、税務調査などの機会に指摘され、加算税や延滞税などのペナルティを課されることになりかねません。申請内容に間違いが見つかった場合は、早々に申告内容を訂正しましょう。
仮に、申告書の提出期限後に申告税額の過不足に気が付いたときは、更正の通知が来る前であれば修正申告書を提出できます。
修正申告書は税務署で手に入れられます。相続人全員について、修正前と修正後の金額、そしてその差額を記載します。
仮に、修正申告書を提出する際に、不足していたとされる納税額が多過ぎたことに気付いたならば、税務署で更正の請求をして訂正します。
相続税申告期限が過ぎてから更正請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
申告税額が多過ぎたことが認められれば、差額が還付されます。
また、申告後に発生した事項によって更正の請求をする必要が出てきた場合の期限は、その事項が生じたことを知った日の翌日から4カ月以内です。
更正請求が認められるのは次のようなケースです。
➀相続税申告期限後に遺産の分割が行われ、配偶者の税額の軽減、小規模宅地等の特例、特定計画山林の特例といった特例が適応されることになった。
➁相続財産法人にかかる財産の分与が行われた。
相続財産法人とは⇒
➂認知、相続放棄の取り消しなどの理由によって相続人に異動が生じた。
➃遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、または弁償すべき額が確定した。
➄遺言書の発見により新たな遺贈が判明、または遺贈の放棄があった。
➅相続・遺贈・贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があった。
➆相続税の申告期限までに分割が確定しなかった遺産の未分割協議について分割が行われた。
➇物納に充てた財産に土壌汚染の事実などが判明し、債務の免除を受けた。
⑨相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権(民法910条)の規定による請求があったことにより、弁済すべき額が確定した。
⑩条件付きの遺贈について、条件が望み通りとなった。
相続税は、申告をしない(無申告)、少なく申告した(過小申告)、納税が遅れた(延滞)などの場合に、ペナルティがあります。いずれも罰金的措置で、そのうち、無申告、過小申告のときに課せられるペナルティを、それぞれ「無申告加算税」「過少申告加算税」と言います。
「無申告加算税」は、相続開始から10カ月の申告期限を過ぎても申告がない場合に課せられる加算税です。国税庁や税務署によって申告が適切かどうかの調査が入り、税額が決められます。確定されると税額の15%相当額を、50万円を超えた部分は税額の20%を追加で支払わなければなりません。
ただし、税務調査の前に申告書を提出すれば、「無申告加算税」は5%で済みます。無申告とならないよう、くれぐれも注意しましょう。
「過少申告加算税」は、納税額を少なく申告してしまったのに、修正申告をしなかった場合に課せられます。税務署で「更正」が行われ、不足税額の10%相当額を、期限内申告税額と50万円で多いほうの金額を超える部分は15%相当額をペナルティとして支払わなければなりません。
加算税で一番重いのが「重加算税」です。これは、財産を故意に隠ぺいした、証拠となる書類を偽装したとみなされた場合に課せられるもので、追加本税の35~40%という高いペナルティがかかります。
5%の差は申告していたかどうかです。申告はしたものの隠ぺい・偽装があれば納付税額の35%、無申告のうえに隠ぺい・偽装があったとされれば、納付税額の40%が重加算税となるのです。
相続税を期限内に納税しなかったときに課せられるのが「延滞税」です。延滞税は、納税期限を過ぎると、翌日から自動的に課税されるペナルティで、延滞日数2カ月を境に税率が異なります。また、利率自体も毎年改訂されるため、延滞している期間を把握して利率を確認しましょう。
・翌日~2カ月=原則7.3%/2017年度中は2.7%
・2カ月超~=原則14.6% /2017年度中は9.0%
延滞税各利率の該当期間 | 翌日~2カ月 | 2カ月超~ |
---|---|---|
2017年1月1日~2017年12月31日 | 年2.7% | 年9.0% |
2015年1月1日~2016年12月31日 | 年2.8% | 年9.1% |
2014年1月1日~2014年12月31日 | 年2.9% | 年9.2% |
2010年1月1日~2013年12月31日 | 年4.3% | 年14.6% |
2009年1月1日~2009年12月31日 | 年4.5% | 年14.6% |
2008年1月1日~2008年12月31日 | 年4.7% | 年14.6% |
2007年1月1日~2007年12月31日 | 年4.4% | 年14.6% |
2002年1月1日~2006年12月31日 | 年4.1% | 年14.6% |
ただし、先にも説明したとおり、相続税は期限内に申請すれば延納が可能なのです。その場合は、延納期間の金利として「利子税」がかかりますが、税率は1.8%と各ペナルティに比べれば非常に低いといえるもの。
納付が間に合わないことが分かっているのであれば、あらかじめ延納の申請をしておきましょう。
状態 | 修正申告 | 更正の請求 |
---|---|---|
申告方法 | 税務署に備え付けの用紙で申告すると同時に、追加分を納める。 | 税務署に備え付けの用紙で請求する。 |
どんなとき | ・計算ミスや、新たに相続税が見つかった場合。 ・本来納める額より少なく申告してしまった場合。 |
・計算ミスや未分割のため、一旦税金は支払ったが、実際に遺産分割した際に配偶者控除を適用したことで相続税が減額された場合。 ・誤って多く納め過ぎてしまった場合。 |
注意点など | ・税務調査を予期せず自主的に修正申告を行ったもの以外は、「過少申告加算税」が課されます。 ・本来の納付期限を過ぎて未納の場合は「延滞税」も課せられます。 |
・請求金額は本来の申告期限から5年以内 以下の場合などは、その理由を知った翌日から24カ月以内。 ➀申告後に遺産分割を行った場合。 ➁申告期限から3年以内に遺産分割して配偶者控除が受けられるようになった結果、超過申告額が分かった場合。 |
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