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【弁護士監修】相続で残されたご家族を幸せにする!生前に考慮すべき3つのポイント

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2020年11月24日
相続で残されたご家族を幸せにする!生前に考慮すべき3つのポイントのアイキャッチ

私は現在75歳です。昨年、心臓を患い生死を彷徨ったことから、そろそろ身辺の整理をしようと考えています。

私の資産は、現在住んでいるマンションと貯金、それから都内にある約50坪の土地が主です。土地は、親からの相続で譲り受けたものですが、査定額は約1億円です。

私には妻と、前妻との間に設けた2人の娘がいます。この3人が私の相続人ですが、私は親の勝手で離婚し、満足な事もしてあげられなかった娘たちに少しでも多くの財産を渡したいと考えています。

そこで、遺言書を作成し、1億円の土地を娘たちに渡すことにしたいのですが、マンションと貯金を足しても到底1億円には及ばないことから、私の亡き後、妻との間で争いが起こることも予想されます。妻との間に子供はいませんし、マンションと貯金で妻の老後の生活は問題ないと思います。

妻は話せば理解してくれるはずですが、誤解を避ける為にも、法律的な根拠に基づいた説明がしたいのです。残念ながら、私にはその知識がありません。どのようにすることが一番円満に行くか、相談に乗って下さい。

今回は、残されたご家族が揉めることの無いよう「相続の生前対策」として出来ることをまとめていきます。

遺言書

遺言書は、故人の最後の意思であり、遺言書を残すことは故人なき後の無用な争いを防ぐ為にも非常に重要なものに違いありませんが、中には遺言書の内容が元で、利害関係人同氏の争いに発展する事も少なくありません。

しかし、いずれにせよ遺言書に自身の意思を明確に示す事は大切ですから躊躇なく遺言書の作成をする事をお薦めします。そして、その際は、より確実性のある公正証書遺言を作成することが賢明と考えます。

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
遺言書には4つの形式があり公正証書による遺言、自筆証書による遺言、秘密証書による遺言、特別方式による遺言があります。

公正証書遺言とは、公...

遺留分

遺言書を残し、全財産を特定の人物に与えると示しても、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分という権利があり、本来であれば当然もらえるべき遺産が遺言書によって侵害されてしまったことになります。

故人の意思を最優先にしたい所ですが、法定相続人にもそれぞれの事情があり、遺言書の存在により、本来もらえるべき遺産が手に入らなくなれば穏やかとはいきません。そこで、民法は本来の権利の半分を遺留分として認めています。

この遺留分は、自動的に得られるものではなく、権利が侵害されていると分かった時点から、1年以内であれば、請求をすることが可能です(但し、権利を侵害されていることを知らなくても、相続開始の時から10年が経過した場合は、請求の権利を失います)。

遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)
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相続開始前の遺留分放棄の可否

相続の相談の中には、死後の争いを未然に防ぐことを目的に、亡くなる前に相続を放棄するよう求めたり、また求められているという話を聞く事がありますが、民法で「相続は死亡によって開始する(第882条)」と定めているように、前もって相続放棄をすることは認められていません。

それにも関わらず中には「遺産を放棄する」などと書面を残している場合もあるようですが、残念ながら法律的根拠は乏しく、人の気持ちも移ろいやすい事から、有効なものとは言えません。結局、中途半端な意思表示が更なる争いの火種になってしまったという事も少なくありません。

しかし、遺留分については相続の開始前に放棄することが認められています。今回の相談内容から、仮に妻が事前に遺留分を放棄してくれた場合は、相談者の意思どおりの遺産分割を行う事が可能となります。

遺留分の放棄とは

遺留分を放棄する人の自由な意思に基づくものなのか、その必要性などについて家庭裁判所が判断した上で、許可をします。中には、親から強要されたり、一時の感情から安易に手続きを行ってしまい、後悔を募らせる結果となってしまうこともあります。当然、家庭裁判所も申請を熟慮しますが、一度許可されたものを覆す事は殆ど不可能です。

また逆に、許可後、事情が変化し、遺留分を放棄することが相当でないと家庭裁判所が判断した際には、家庭裁判所が職権で許可を取り消す場合もあります。

但し、遺留分の放棄が認められても、これはあくまで遺留分を放棄しただけであり、実際に相続が発生した際には、法定相続人であることに違いはありません。

まとめ

公正証書遺言を残し、妻の遺留分放棄が許可されれば、ご相談者の意に沿った遺産分割が可能であると思料します。しかしその為には、当然、妻の同意が必要であり、それは相談者の責任で行わなければなりません。

相続とは決して法的な手続をとらなければ成り立たないわけではなく、相続人間で円満な話し合いによって行われることも多々あります。示された資産によれば、2人の娘さんたちの持分が多くなることから、当然娘さんたちから異論が出ることはないと思料します。

娘に残してやりたい、という相談者の気持ちは十分に理解できますが、長年生活を共にしてきた妻の心中は察するに余りあるかも知れません。ご相談者によれば、妻は十分に理解を示してくれる、とお考えのようですし、事実そういう思慮ある方だとは思いますが、相続とは、一生の中で1度か2度あるかないかの一大事であり、妻の残りの人生にとって非常に大きな位置を占めることに間違いはありませんから、とにかく慎重に、誠意をもってご自身の考えを伝えて下さい。自ずと良い結果が得られることを願っております。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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