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【弁護士監修】相続時に揉めない遺言書とは?弁護士がコツを伝授

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2022年06月29日
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母が相続の時に揉めないように遺言書を作ろうとしている

父は既に亡くなっています。母は健在で、子供は兄と私の2人です。

実は父の相続の時に、母を巻き込んで兄と私は、双方とも弁護士に依頼して裁判所で遺産分割調停を行うまで相続で揉めてしまいました。

その際は、母の仲介もあって、何とか決着をつけて父の遺産分割を終了させました。

母はその時のことを相当後悔しており、どうやら私たち子供には内密で、自分の相続の際に、子供たちが揉めないようにと公証役場で遺言書の作成の手続きを進めていたようです。相続税にも関係するため、事前に税理士にも相談していることが、あることがきっかけで、私に分かってしまいました。

本当は、内密にしたかったようですが、上記の意図で遺言書を作成しようとしていることを知ってしまったため、どんな内容かと尋ねたところ、兄には既に相当な価値のある不動産を贈与しているので、母に良くしてあげていた私に対して、多くの財産を相続させたいという旨の内容でした。

また、上記の遺言の件とは関係ないのですが、私も母から既に1500万円の現金を貰っています。もちろん、兄には内密です。

しかし、兄は1円でも多くお金が欲しいと主張する性格です。母のせっかくの気持ちですが、この様な偏った内容では、絶対に揉めてしまいます。

遺言書の内容については、私が絶対揉めないために精査をして、母に作成してもらいたいと考えています。

遺言書の主な3つの種類

遺言書は大まかに、普通方式(自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言)と特別方式(普通方式とは少し異なり、もうすぐ他界してしまう等の緊急時・船の事故や伝染病等外界と隔離されている状態などの特殊なケースに置かれた人が書く遺言書)に分類されます。一般的には遺言は普通方式によって行われます。

① 自筆証書遺言

一番簡単な方法で、遺言者が書面に、遺言書の作成年月日、遺言者の氏名・遺言の内容を、自署で記入し、自身の印鑑を押印するという、いつでも自由に作成可能なものです。

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>② 公正証書遺言

法務大臣が任命した法律の専門家が定められた手続きに従って作成する公文書で、公証人に対して遺言内容を伝え、公証人が遺言書に落としこむ形で作成した「公正証書」「認証」「確定日付」によって、権利義務関係について明確な証拠を残すものです。

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③ 秘密証書遺言

自筆証書遺言と公正証書遺言の間の子のような遺言で、「内容」を秘密にしたまま、「存在」のみを証明してもらう遺言です。

今回のケースでのお母様は、この中の『公正証書遺言』を作成しようとされてるようですね。

現金1500万を貰ったことは、内緒に出来るのか?贈与税の申告は必要?

そもそも1500万円という現金は、贈与であれば贈与税の申告が必要な金額です。相続税の計算のうえでも、故人から生前に贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものがあれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく、相続財産として加算することになります。

その他、相続時精算課税の制度を利用するとしても、やはり申告が必要になります。

贈与があったにも関わらず、申告せずにいることが判明した場合は、加算税、延滞税をとられます。悪質と判断された場合には刑事罰を課せられることにもなりかねませんから申告は必ずしましょう。

兄に対しては自ら進んで教える必要はないでしょうが、相続の時まで内密にしておくのは難しいと考えます。

変に嘘をついたり、隠し事をしたりすることは、裁判の場においてもかえって心象を悪くする可能性もありますので、調べれば分かることは隠さずに、正々堂々と話し合いに臨まれた方が良いと考えます。

遺留分を考慮しておきましょう

今回のご相談事例の公正証書遺言書の様に、法定相続の割合ではなく、分配の割合に偏りがある場合があります。

法律では、法定相続人は配偶者、子ども(またはその代襲相続人)、直系尊属には『遺留分』という、遺族の生活を保証するために、最低限の財産を相続することができる権利があります。(※兄弟姉妹は含まれません)(民法1028条)

各相続人の遺留分の具体例

配偶者のみ 配偶者が2分の1
子供のみ 子供が2分の1
配偶者と子供 配偶者が4分の1 子が4分の1
配偶者と父母 配偶者が2分の1 兄弟姉妹は遺留分なし
配偶者と兄弟姉妹 配偶者が2分の1
父母のみ 父母が3分の1
兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹には遺留分なし

※代襲相続による相続人にも遺留分の権利があります。

※遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続開始及び減殺すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始時から10年を経過したときも、同様とする。(民法1042条)ご注意下さい。

今回のケースでは、兄の『遺留分』の権利に侵害があれば、請求される可能性があることは覚えておきましょう。

揉める・揉めない

相談者は、兄と“絶対に”揉めないことを強く希望しています。

ですが、どの様な対応をしたとしても将来“絶対に”揉めない方法は存在しません。

揉める・揉めないは、今どんなに考えても結論は出ません。

しかし、相談者の話では、「兄は1円でも多くお金が欲しいと主張する性格です」とのことですから、上記で述べた遺留分の侵害があれば、遺留分の請求をしてくることは容易に想像が出来ます。

その点を考慮すれば、お母さまが元々作ろうとしていた相談者が割合多く相続する内容の遺言書は、将来有利に働くとも考えられるのではないでしょうか。

最近母に認知症の疑いがあるような気がする・・・

今回のご相談者は、遺言の内容をあれこれ考えているうちに月日が経過し、最近ではお母さまが、いわゆる、まだらボケの様な時があると言われました。

そもそも遺言書を作成するためには、『遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。』と規定しています。(民法963条)

もしお母さまが認知症を患っており、その症状や状態によっては、遺言書の作成することが不可能になってしまうかもしれません。また、遺言書を作成出来たとしても、遺言者が当時意思判断能力に問題があったと無効の訴えを起こされてしまう可能性も懸念されます。

まとめ

『遺言書』を作成するのは、遺言者の意思です。

遺言者は、いつでも自由に遺言ができますし、変更や撤回、取り消しなどは自由です。

ですから、相談者が「遺言書の内容については、私が絶対揉めないために精査をして、母に作成してもらいたいと考えています」と言うのは、遺言者であるお母さまの意思ではなく、相談者の意思になっていないでしょうか。

最終的に、お母さまが納得されて遺言をされるのであれば問題はありませんが、あまり内容や将来の問題に囚われすぎて、遺言書自体を作成出来なくなってしまっては本末転倒です。

お母さまが遺言書を作りたいのですから、その意思を尊重することが何よりも大切なのではないでしょうか。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

相続は、どなたにも身近で起きる出来事です、しかし、感情で揉めてしまったり話し合いで解決出来ないことも少なくありません。 相続時には色々なトラブル・悩みが発生するものです、私の40年間という弁護士経験のを元に事例や状況に沿って対処法を電話でも解説可能...

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