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【弁護士監修】相続税対策、タンス預金も税務署にはバレる?二次相続を考慮した相続税節税の考え方

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年04月22日
相続税対策、タンス預金も税務署にはバレる?二次相続を考慮した相続税節税の考え方のアイキャッチ

2015年からの相続税法改正により課税対象が広がり、相続税のセミナー等が増えてきていますが、相続税を逃れるために現金化しタンス預金しようと考える方もいるようです。

税務署が現金だと見つけられないので、隠しておこうとし税務署に見つかり、後から追徴税を取られるケースもよくあります。例えば、

2015年3月大阪で、くず鉄卸業を営んでいた夫から相続した相続財産約15億円のうち現金や預貯金約4億8千万円をタンスや押し入れに隠し、相続税約2億3千万円を脱税したとして、大阪国税局が相続税法違反罪で、大阪市西淀川区の会社役員、嶋袋君枝相続人(73)を大阪地検に告発していた。重加算税を含む追徴税額は約3億2千万円で、すでに納付したとみられる。

このように現金で隠していても税務署に発見されることもあります。

相続税は、資産が全て把握されやすくすぐにバレてしまいます。税金を払いたくないがために行ったことが返って追徴課税で約9000万円ほど多く税金を納めることになってしまっているのです。

生半可な知識で脱税のようなズルをするのではなく、故人が遺した財産をより幸せに使えるようにしたいものですね。そこで、相続に詳しい専門家にどういったことを考慮して相続対策をしたら良いかアドバイスを頂きました。

まず、2015年1月の相続税改正での変更点

平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以降の相続に関する相続税制が次の4つの項目が改正されました。

① 基礎控除(基礎控除額の引下げ)

② 税率構造(最高税率の引上げなど)

③ 税額控除(未成年者控除、障碍者控除の控除額の引上げ)

④ 小規模宅地等の特例(限度面積の拡大)

なかでも基礎控除額の引下げは、これによって相続税の申告が必要となる方が大幅に増加するなど、大きな影響があるものです。

遺産相続における税制改正後の6つの変更点
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相続税の...

相続税の基礎控除について

この改正により、基礎控除が次のように大幅に引き下げられました。

※基礎控除とは、全ての納税者が納税を免除される決められた金額のことです。

改正前の基礎控除:5000万円+1000万円×法定相続人の数

改正後の基礎控除:3000万円+   600万円×法定相続人の数

被相続人(亡くなった方)に妻と子が2人いた場合を例にすると、改正前の基礎控除は8000万円(遺産が8000万円以下であれば相続税はかからない)であったのに対し、改正後の基礎控除は4800万円になりました。

これにより、今まで相続税が掛からなかったご家庭も、改正後は相続税が掛かるようになったご家庭も増え、決して他人事ではありません。

相続税の配偶者控除を利用する場合の注意点

相続人のうち配偶者には、配偶者の税額軽減という特別な税の軽減があります。

具体的には、配偶者の取得する財産が

① 1億6000万円

② 配偶者の法定相続分

どちらか多い金額までは、控除により相続税がかかりません。

この制度は、配偶者の生活保障のための制度として考慮されており、一見すると大きなメリットであるように思えますが、近い将来に二次相続(次の相続)が予想される場合には注意が必要です。このことは後で詳しく説明します。

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故人(被相続人)が社長の場合の注意点

被相続人が中小企業の経営者(いわゆるオーナー社長)であった場合、遺産の中に会社の株式・出資等が含まれることになります。

相続税の計算には当然、株式も相続財産に含める必要があるのですが、相続人が事業を継続する場合、株式を売却して相続税の支払いにあてるわけにもいかず、納税資金をどうやって工面するかが問題になっていました。

このような納税資金の問題や事業の円滑な承継を図るため、事業承継税制(株式についての相続税・贈与税の納税猶予・免除の制度)が作られましたが、手続が複雑で要件も厳しく、使いにくいといわれていました。

この改正により、適用要件が緩和され、手続が簡素化され、従前より活用しやすくなりました。

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配偶者1人、子2人で相続が発生する際の注意点

先に配偶者控除は大きなメリットがあると説明しましたが、だからといって控除の上限いっぱいまで受ければいいとは必ずしも言い切れません。配偶者控除によって一次相続の相続税を低く抑えたことで二次相続の相続税が高くなり、一次相続と二次相続の相続税を合計するとかえって税金が高くなってしまう、ということがありえます。

文章ではなかなか理解しにくいと思われますので、具体例をあげて説明します。

改正後の相続税の税率、控除額は以下の表のとおりですので、表を確認しながら読み進めてください。

法定相続分に応じる取得額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(事例)妻・子2人の相続税の計算方法

被相続人が亡くなり、妻と子2人が相続することになった。夫は1億6000万円の財産を持っていたが、専業主婦として夫を支えてきた妻には固有の財産はない。

(パターンA) 法定相続分で相続した場合

① 基礎控除を引いて課税遺産総額を算定

「課税価格」(1億6000万円)

※課税価格は、相続財産評価額 – (債務 + 葬式費用)

-「基礎控除」 (3000万円+600万円×3人)

=「課税遺産総額」 1億1200万円

② 相続税総額の算定

相続税の総額は、遺産分割等の結果による実際の取得額ではなく、法定相続分をもとに計算します。

ⅰ.配偶者
<法定相続分> 1億1200万円×1/2(配偶者の法定相続分)=5600万円
<相続税> 5600万円×0.3-700万=980万円
ⅱ.子
<法定相続分> 1億1200万円×1/4(子の法定相続分)=2800万円
<相続税> 2800万円×0.15-50万円=370万円
ⅲ.合計

980万円(ⅰ)+370万円(ⅱ)×2人=1720万円

1720万円が計算上の相続税の総額になります。この総額に、各自の相続分の割合をかけた額が、各自が負担する相続税の額になります。

③ 相続税納付税額
ⅰ.配偶者

1720万円×1/2=860万円

ただし、配偶者控除により納付額は0円

ⅱ.子

1720万円×1/4=430万円

子は2人なので430万円×2=860万円

実際のご家族3人での納付税額は、配偶者は、配偶者の税額軽減により0円となりますので、子2人分の合計860万円となります。

(パターンB)配偶者がすべての財産を相続

上の事例で、配偶者が遺産のすべてを相続したとすると、本来は(パターンA)の①②で計算した相続税の総額までは同じ計算になります。

③ 相続税納付税額
ⅰ.配偶者

1720万円×1/1(100%)=1720万円

ただし、配偶者控除により納付額は0円

ⅱ.子

1720万円×0=0万円

子は2人とも、相続分がありませんので0円

上記のように、相続税の税額軽減(配偶者控除)により1億6000万円までは相続税がかかりません。したがって、配偶者がすべての遺産を相続した場合、相続税を納める必要はないということになります。

(パターンC)法定相続分とは違う配分(妻が4000万円、子が6000万円ずつ)相続した場合

相続分は、妻が4000万なので1億6000万円の1/4、子が6000万円ずつなので1億6000万の3/8ずつとなります。

パターンB同様、(パターンA)の①②で計算した相続税の総額までは同じ計算になります。

③ 相続税納付税額
ⅰ.配偶者

1720万円×1/4=430万円

ただし、配偶者控除により納める額は0円

ⅱ.子

1720万円×3/8×2人=1290万円

パターンAB同様、相続税の税額軽減(配偶者控除)により1億6000万円までは相続税がかかりません。子の相続分が多いので納税額の総額は、1290万円となります。

(事例)その後、すぐに妻が亡くなった場合の2次相続

これだけならいいのですが、問題は二次相続です。高齢の夫婦の場合など、一次相続からそれほど時間がたたないうちに二次相続が開始することは珍しくありません。

上の事例で、夫の死亡後それほど時間がたたないうちに(財産状態がかわらないうちに)妻も亡くなってしまったとします。子2人が相続人となりますが、パターンAとBでどのように相続税が変わってくるのでしょうか?

(パターンA-2) 夫の相続時に法定相続分で相続した場合の2次相続

① 基礎控除

1次相続で、妻が相続した8000万円の財産を子2人でわけることになります。

「課税価格」8000万円

-「基礎控除」 (3000万円+600万円×2)

=「課税遺産総額」3800万円

② 相続税総額の算定=相続税の納税額
<法定相続分> 3800万円×1/2(法定相続分)=1900万円
<相続税> 1900万円×0.15-50万円=235万円
<総額> 235万円×2=470万円

これが計算上の相続税の総額なので納付税額は、子が親を相続する場合、配偶者控除のような特例はありませんので、子2人があわせて470万円を納めることになります。

(パターンB-2) 夫の相続時に妻がすべて相続した場合の2次相続

① 基礎控除

1次相続で、妻が相続した全ての財産(1億6000万円)を子2人でわけることになります。

「課税価格」(1億6000万円)

-「基礎控除」 (3000万円+600万円×2人)

=「課税遺産総額」 1億1800万円

② 相続税総額の算定=相続税の納税額
<法定相続分> 1億1800万円×1/2(法定相続分)=5900万円
<相続税> 5900万円×0.3-700万円=1070万円
<総額> 1070万円×2=2140万円

子2人で2140万円を納めることになります。

(パターンC-2) 夫の相続時に法定相続分以外(妻1/4、子3/8ずつ)の2次相続

① 基礎控除

1次相続で、妻が相続した4000万円を子2人でわけることになります。

「課税価格」(4000万円)

-「基礎控除」 (3000万円+600万円×2人)

=「課税遺産総額」 0円

② 相続税総額の算定=相続税の納税額

基礎控除が遺産を上回るため、相続税はかかりません。

まとめ

2次相続を考慮した相続というのは、計算が非常に複雑になります。前に述べたA・B・Cの3パターンの合計を見てみましょう!

1次相続の納税額 2次相続の納税額 納税総額
パターンA

(1次相続で法定相続分で分配)
860万円 470万円 1330万円
パターンB

(1次相続で妻が全てを相続)
0円 2140万円 2140万円
パターンC

(1次相続で妻1/4・子3/8ずつ相続)
1290万円 0円 1290万円

最も支払う納税額が少ないのは、パターンCとなりました。

1次相続で税金を0にしたパターンBでは結果850万ほどの多くの税金を支払うことになります。

二次相続は、法定相続人の数が減り、基礎控除が下がったり、法定相続分に応じた取得額が大きくなるため、相続税の総額を高い税率で計算されたりすることから、一次相続の処理次第で納める税額が大きく変わってしまうことがあります。

近い将来に二次相続が予想されるようなケースでは、二次相続を見据えて遺産分割協議をすることが必要になります。

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