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【弁護士監修】立て続けに起きた親の相続(相次相続)

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2021年08月11日
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父の相続が終わらないまま、母が亡くなりました

昨年父が他界しました。そして、父の遺産ついてどうするかの話し合いも終わらないまま母も他界しました。
相続人は、兄(長男)と私(長女)と妹(二女)の3人の子供たちです。
父は遺言書などのこさなかったのですが、母は公正証書遺言をのこしており、「全ての財産は、長男に相続させる。」という内容でした。

この遺言自体にも不公平を感じており到底納得出来ませんが、そもそも父の遺産分割も完了していません。
父は母と違って偏った遺言などはありませんでしたから、これ幸いに父の遺産については残った子供で平等に分けてくれればと思いました。

しかし、話し合いになると兄から「母さんが、父さんの遺産の半分を相続しているんだから、父の遺産が3分の1になる訳ないだろ。馬鹿野郎!」と、怒鳴られてしまいました。悔しいです。
私と妹は泣き寝入りするしかないのでしょうか?

弁護士からの回答

長男の言動に腹ただしい気持ちは分かりますが、まずは法律的にどう考えるのか、いくつかのポイントに絞ってお話しますので整理していきましょう。

①相続

相続とは、死亡した瞬間に開始します(民法第882条)。

法定相続分(民法900条)

相続人が配偶者のみの場合、配偶者が100%。
相続人が配偶者と子供の場合、配偶者が2分の1、子供が2分の1(子が複数いる場合は、均等に分割)
相続人が配偶者と父母の場合、配偶者が3分の2、父母が3分の1(両親とも健在の場合は、均等に分割)
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(複数の場合は、均等に分割)

まずここまでの内容で、一旦整理しましょう。
父が死亡した瞬間に父の相続は発生しています。その後、父の遺産をどうするか話し合いがつかないまま父の配偶者である母が死亡してしまいました。

ついては、法律どおりで考えれば父の相続分のうち2分の1は母が相続していることになります。

③遺言

遺言とは、自分が死んだ後、「こうして欲しい」という要望を伝えることであり、その要望を相続人に伝えるための文書を「遺言書」といいます。遺言書は、お亡くなりになった方の最期の意思表示になるものです。

一般的に遺言書は、自分で書いて作成する「自筆証書遺言」と、公証人に作成をしてもらう「公正証書遺言」があります。母は、この遺言のうち公正証書遺言をのこされていました。

効力のある遺言書があれば、相続は遺言が最優先で適用されます。但し、相続人(受遺者)全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うこともできます(民法第907条)。

また、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者の同意が必要です。遺言執行者がいる場合には、相続人といえども、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできないからです(民法第1013条)。
※遺言についてのその他詳細は割愛させて頂きますが、興味のある方は遺言書について書いた以前のコラムを是非読んでください。
遺言書の効力・種類は?遺言書を書く前に知っておこう!
遺言書があったほうが良いケースと注意点
遺言書の検認後、家族が遺言書の内容に反対した場合どうなる?
遺言を使えば、どのように遺産を分けても問題にならない?

本件の遺言書は法的に効力のある遺言書でした。そして、相続人の1人であり遺言執行者に指定されていた兄は遺言どおりの相続を希望していますので、相続人(受遺者)全員の同意がとれないため、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うことが出来ません。
ついては、遺言が優先されますので母の遺産については長男が全て相続することになります。

④遺留分

さて、ここまでのお話だと長女と二女は母の遺産の相続について泣き寝入りするしかないように思えますが違います。
本件の遺言書の様に、法定相続の割合ではなく、分配の割合に偏りがある場合があります。

法律では、法定相続人は配偶者、子ども(またはその代襲相続人)、直系尊属には『遺留分』という、遺族の生活を保証するために、最低限の財産を相続することができる権利があります(民法1028条)。

遺留分の割合

配偶者のみ   配偶者が2分の1
子供のみ      子供が2分1
配偶者と子供    配偶者が4分の1 子が4分の1
配偶者と父母    配偶者が3分の1 父母が6分の1
配偶者と兄弟姉妹  配偶者が2分の1 兄弟姉妹は遺留分なし
父母のみ      父母が3分の1
兄弟姉妹のみ    兄弟姉妹には遺留分なし
代襲相続による相続人にも遺留分の権利があります。

ついては、長女と二女は遺留分減殺請求権に基づいて遺留分を請求できます。但し、遺留分の請求には期限がありますので注意をして下さい。
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続開始及び減殺すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始時から10年を経過したときも、同様とする。(民法1042条)。

まとめ

以上を踏まえて、もう一度本件の相続について考えてみましょう。

父が死亡した時点での相続人は、母と長男、長女、二女の4人です。法定相続の割合であれば、配偶者である母が2分の1、子どもたちは3人ですから各6分の1ずつ相続しています。

次に母が死亡しました。相続人は子どもたち3人のみです。法定相続であれば(父の遺産2分の1含む)母の遺産を各3分の1ずつ相続することになりますが、遺言書がありますので全て長男が相続します。

しかし長女と二女は、納得が出来ないのであれば兄に対して、母から相続した遺産のうち、各6分の1の遺留分を請求することが出来ます。

(具体的相続分の例)

①父の相続(遺産9000万円)

  母 4500万円(9000×2分の1)
長男、長女、二女 各1500万円(9000×6分の1)

②母の相続(遺産6000万円※父からの相続分4500万円を含む)

  長男6000万円
  長女、二女 各0円
  ※長女と二女は、長男に対して各1000万円を遺留分減殺請求出来る。

最後に

遺産分割は、本来相続人間で自由に話し合いをして決めて問題はありませんが、本件の様に揉めてしまった場合、法律に則り分割することになるでしょう。

その他に、生前の贈与や寄与分など複雑になることもあり、相続人間での協議は、感情的な問題も発生し、何時までも決着が着かないケースは珍しくありません。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

相続は、どなたにも身近で起きる出来事です、しかし、感情で揉めてしまったり話し合いで解決出来ないことも少なくありません。 相続時には色々なトラブル・悩みが発生するものです、私の40年間という弁護士経験のを元に事例や状況に沿って対処法を電話でも解説可能...

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